80『遭遇戦・1』
RE・かの世界この世界
80『遭遇戦・1』テル
ポチーーーーーーーーーーッ!!
叫んでみたが、ポチの姿はすぐに小さくなって見えなくなってしまった。
「落ち着いたら帰って来るさ」
ロキの頭をワシャワシャ撫でて慰めてやる。ケイトも「こんなこともあるさ」と、ロキに付き合って空を見上げている。
「ポチは我が使い魔でもある。必ず戻って来る」
中二病全開だけど、ヒルデも慰めている。
慰めながらも思った。ヴァィゼンハオスで初めて見た時は空飛ぶ桃くらいにしか思っていなかったのだが、だんだん反応が犬っぽく……どうかすると人間の子どものようになってきた。シリンダーというのは口もきけない原始生物なのだが、ポチは個体進化の可能性を秘めた特異体なのかもしれない。
そして、ポチの騒ぎで、みんなの車酔いはきれいさっぱり治ってしまった。
ピピピ ピピピ ピピピ
Cアラームが鳴った。
ポチポチと鳴ればポチが帰ってきたシグナルだが、ピピピはクリーチャーの接近を表している。
「……ロキは町長を護れ! 方位は東だ、四号を出て戦うぞ! タングリスは四号を頼む!」
一瞬のタメがあって、ごく自然にヒルデが凛とした声で命じる。
ラジャー! おお! 了解!
ヒルデを先頭にケイトと共に東に駆ける。
峠を越えると一気に空が曇ってきた。
いや、雲ではない……雲に擬態したシリンダーの群れと、その融合体だ!
「ケイト、矢で穴を開けろ!」
空がシリンダーで蓋をされたように見える。どこかに穴を開けなければ攻撃のとっかかりも掴めない。
「承知!」
キリリと弓を引き絞ると「カイナティックアロー!」と叫んで、炎の矢を放った。
ケイトも経験値を積んで進化しているようだ。
ズボン!
矢は雲に吸い込まれたところで、くぐもった音をたてて炸裂し、畳六畳ほどの穴が開いた。
「今だ!」
穴に向かって飛び上がる。イケる、ジャンプ力もスピードも伸びている!
ソードを腰だめに構え、ジワジワと窄まる空の綻びに突っ込む。
トアーーーーーーーーーー!
勢いをつけソードを8の字に振り回して綻びを広げる。雲はシリンダーの融合体、ムクムクと回復させつつある。剣先に触れた融合体は綿あめのように溶け、溶けた融合体は霧のようになって体にまといつく。
まずい、体がベトベトしている、ベトベトが続けば水あめが絡みつくように自由を奪われる!
オリャーーーーーーーーー!
身体を急速旋回させ、遠心力でベトベトを振りとばし、数秒後にはクリーチャーの雲の上に出た。
ヒヒヒヒヒヒヒヒ ヒヒヒヒヒヒヒヒ ヒヒヒヒヒヒヒヒ ヒヒヒヒヒヒヒヒ
妖精の笑い声のような飛翔音に目を向けると、今度はプレパラートの大群だ!
一センチ四方のガラス片に似たクリーチャー。それが雲霞のように迫ってくる!
一つ一つはしれているが、叩き落すか躱さないと体中を切り刻まれる!
オリャーーーーーーーー! トオオーーーーーーーー! トワアアーーーーーーーー!
四方八方に旋回しながら叩き落とすがキリがない、十秒とたたないうちに切られ始めた。
旋回していると、遠心力で傷口から血が噴き出してしまう。
このままでは失血死してしまう!
気が遠くなりかけた時、下方の雲が円形に盛り上がり、ズボッと穴が開いたかと思うとツインテールをヘリコプターのように振り回してヒルデが上昇してきた。
「我が命を待たずに飛び出してはならぬぞ」
不敵に笑いながらプレパラートの群れを包み込むようにせん滅してくれる。
それに応えて攻撃を強めたいが、いかんせん力が出ない。
いかん、HPが赤く点滅するところまで減っている!
ケアルラアアアアアアア~
雲の下から白魔法の詠唱が聞こえてきて、みるみるうちにHPバーがブルーに変わって満タンになった。
ケイトの白魔法もレベルが上がってきたようだ。
☆ ステータス
HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・50 マップ:5 金の針:0 所持金:800ギル(リポ払い残高35000ギル)
装備:剣士の装備レベル20(トールソード) 弓兵の装備レベル20(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士 日ごろは縮めてヒルデと呼ぶ
タングリス トール元帥の副官 ヒルデの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長




