59『仮想タブレット』
RE・かの世界この世界
59『仮想タブレット』テル
ムヘン川の南岸を東に進んでいる。
本来ならムヘン街道を北に進んでノルデンハーフェンを目指さなければならないんだけど、ひょんなことからシュタインドルフのブァイゼンハオスに寄った。のんびりしていられる旅でもないんだけど、ムヘン川の鉄橋に出るまでは単調な川辺の道だ。
インタフェイスを仮想タブレットにして、ここまでのあれこれに思いをいたしてみる。
ブリュンヒルデ
主神オーディーンの娘にしてムヘンの囚人。始まりの草原からやってきたわたしとケイトと行動を共にして脱走。そして、わたしたちを引き連れてヴァルハラを目指している。父オーディンにぶつけなければ収まらない想いがあるようだ。もし、ヴァルハラが川の向こう程の近さなら、天地を揺るがすような親子げんかになりそうな気が……おそらく、ヒルデ本人も予感している。予想される長い旅路は、ひょっとして、ヒルデ自身が必要とする、あるいは乗り越えなければならない心の距離なのかもしれない。
タングリス。
ムヘンの総督トール元帥の副官をタングニョーストと共に務め、トール元帥の意向でブリュンヒルデのお供をしている。体育会系美人のキャリア風だが、さっきのポチの件とか他の戦車兵とのやり取りを見ていると、意外にフレキシブルな対応ができるのかもしれない。
タングニョースト。
タングリスの同僚でトール元帥の副官、陰ながら我々の旅のサポートをやってくれるらしい。今回もヴァイゼンハオスのわんぱく坊主ロキを連れて行くことになって、小さな二号戦車ではどうにもならないところ、四号戦車を持ってきてくれた。それが、タングニョースト自身の意思なのかトール元帥の指示なのかは分からない。とりあえずムヘン北端の港であるノルデンハーフェンまでは同行してくれるようだ。タングリスは、常に傍にいてヒルデや我々の世話を、タングニョーストは外側からという役割分担があるのかもしれない。
わたし?
最初に言ったじゃないか、テルだよ。ケイトといっしょに始りの草原からやってきた冒険者。短い名前だから短縮にもしなかったしな。え? ああ、こんな言葉遣いをしていても女だよ。文句あるか? タングリスとキャラが被ってるって? さっきも言ったけど、タングリスは臨機応変だ。なんせトール元帥の副官を務めるほどだからな。わたしは見たまんまの男勝りさ。文句あっか?
え、なんか忘れてるっぽいって? なんだろう……ああ、そんなことはいいよ。あれこれ考えるのは苦手だ、ま、気楽にわたしらの旅に付き合ってくれ。
「なに書いてるの?」
気づくと間近にケイトの顔。
「ハハ、長旅になりそうだから、時々メモっておこうと思ってな。まずは、みんなのことをな……」
「へえ、わたしのことは?」
「ぼくとポチのことは!?」
「寄ってくんな、二号よりは広いが戦車の中だ、また今度」
「「ちぇ」」
こういうところ、ケイトとロキは近いかもしれない。
タッチして、仮想タブレットを消した。
ノルデン鉄橋は、まだもう少し先だ。
☆ ステータス
HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
ロキ ブァイゼンハオスの戦災孤児
ポチ ブァイゼンハオスの子どもたちが飼っていたシリンダーの幼生
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長




