悪役令嬢になって婚約破棄してみせます(番外編)(クライブ王子視点)
こんにちは。今回はこの小説を読もうとしてくださりありがとうございます。
この作品は「悪役令嬢になって婚約破棄してみせます」の番外編クライブ王子(男主人公)視点の話となっております。まだ本編を読んでない方は先に本編を読んでからこの作品を読んでいただけるとより楽しめると思います。
私はこの国の第2王子であるクライブ・アスターだ。第一騎士団の副団長である。私はこの国の騎士として、この国を支えていきたいと思っている。
私には愛しの婚約者がいる。侯爵令嬢であるステラ・ミラーだ。幼少期に本を読んでいる姿に一目ぼれしてから必死に父上とミラー侯爵に頼み込んでやっとのことで婚約までこぎつけたのは3年前のことである。
婚約までは本当に時間がかかった。ミラー侯爵はなかなか首を縦に振らず、ステラに見合う男になるために剣術を磨き、勉強も頑張った。努力の甲斐あって第一騎士団の副団長まで上り詰め、勉強に関しては学園で常にトップ3位以内をキープしている。トップは常にステラだ。勉強ではステラに私は勝つことができない。ステラのことは本当に尊敬している。
3年前やっとしぶしぶミラー侯爵が許可を出してくれた。それでも娘を傷つけたらいくら王子でも容赦しないと恐ろしい顔で釘を刺された。もちろんそんなことはしないし、ステラを傷つけるやつがいれば、どんな手を使ってでも排除するつもりだ。
ステラが婚約者になってからもステラへの気持ちはどんどん募っていった。それこそ二人で会うのは月に一度だけだったが、毎回愛の花言葉を持つ花を束ねた花束を私から受け取るとき嬉しそうに目を細めて笑うステラが愛おしくてたまらなかった。顔がにやけているのをステラにばれないようにするのはとても大変だった。こんな人が私の婚約者なのかと毎回幸せを噛みしめていた。
「聞いてくれ。今日もステラがとても可愛かった。こんなに幸せでいいのだろうか。」
私は兄である第一王子のアルトとその婚約者のマリア嬢によくこんな感じで惚気ている。
「クールで知的でかっこいいで有名な第二王子がこんなだと知ったらステラ嬢はどう思うのだろうな。」
「こんな姿見せられるわけないだろう。嫌われたら俺は死んでしまう。」
「クライブ殿下、ちゃんとステラに気持ち伝えていらっしゃいますか?クライブ殿下は普段は無口で不愛想で何考えているかわかりづらいのですから。」
「大丈夫だ。毎回愛の花言葉を詰め込んだ花束を渡している。口で伝えてしまったら止まらなくなってしまうからな。」
「そんな回りくどいことして大丈夫か?お前。」
「ステラは頭がいいからな。きっとわかっているだろう。」
しかし私の期待とは裏腹にステラに花言葉の知識がないということを知ったのはもっと後のことだった。
最近婚約者の様子がおかしい。そう気づいたのは、いつも通り学園内でステラを見つけ、声をかけようとしたときだった。いつもはそんなことないのに、私を見つけたステラは目を輝かせながら私のほうに駆け寄ってくる。
「殿下!」
「どうしたステラ。」
嬉しい気持ちをどうにか抑えて冷静を装って答える。しかし次の言葉で高揚した気持ちは一気に奈落の底へと落ちることになる。
「殿下、私はいつでも婚約破棄OKですからね。」
自分の体が石化するのを感じた。婚約破棄?どういうことだ。
愛しの婚約者に満面の笑みで爆弾発言されて私はもうその場から動けない。
ステラが「失礼します。」と言っているように感じたが返事もできなかった。
ステラの隣を歩いていたマリア嬢はにやにやしながら私の肩にポンと手を置き、去っていった。あのマリア嬢はすべてを知ったうえで、面白がっていると確信した。
その日からショックですべてのことに身が入らなかった。ステラはなぜ婚約破棄なんて言ったのだろうか。私のことが嫌いになったのだろうか。もしかしてほかに好きな男ができたのだろうか。いや、そんなことがあったら私はその男を殺して俺も死のう。
しかし仕事はしっかりしなければならない。今の仕事は汚職の疑いがあるテイラー男爵についての調査だった。調査のためにテイラー男爵の娘であるオリビア・テイラーに接近していた。どうやら彼女は自分に気があるらしい。1聞けば100返ってくる。こんなに簡単な仕事があるのかと思わず、にやついてしまう。
いつも通りオリビア・テイラーから話を聞いて証言をとっていると唐突に私の愛しの婚約者の名前が彼女の口から発せられた。
「ステラ?」
「そうなのです。最近、私と殿下が一緒にいることに嫉妬してか私のことをいじめてくるのですわ。いつも人にみせつけるようにして人前でいじめてくるのですよ。」
オリビア・テイラーが泣く演技をしながらなだれかかってこようとしたのをするりとかわし、彼女の発言について考える。ステラがいじめなんてどういうことなのだろうか。あの心優しいステラがそんなことしないことはわかっている。気になってすぐステラの友人に話を聞くと答えはすぐに聞き出せた。
「ステラ様はいじめているとおっしゃっているのですが、いじめているというかはオリビア様の至らぬ点を注意してはアドバイスしてあげているのですよ。今までオリビア様はだれが注意しても聞く耳持たずでみんな諦めていたのにステラ様は諦めずそれはもう根気強くオリビア様をかまっていらっしゃいますわ。」
「ステラ様が必死に怖がられるように注意しているのがもう、かわいくて。まあ、全然怖くないのですけど。」
「あ、でも婚約破棄してやるって意気込んでいらしたわ。あと殿下を幸せにする!ともおっしゃっていましたよ。殿下何かされましたか?」
どうして婚約破棄したがっているかはわからないが、どうやら私の幸せを願っているらしい。ステラがいなければ私の幸せはないというのに。
ステラのことは心配だったが、ステラに会うたびステラの発言によって固まってしまい、ちゃんと話すことができないままダンスパーティーの日を迎えてしまった。
テイラー家を断罪するために、ステラのいじめもどきを利用させてもらうことにした。
オリビア・テイラーは調子にのってステラのことをかなり侮辱した。その時点で殺してしまおうかと思ったが、必死に我慢してこの日を心待ちにしていた。
ステラのエスコートはものすごくしたかった。この素敵な人が私の婚約者なのだと自慢したかった。しかしテイラー家断罪の準備がありエスコートはできない。そのことをステラに伝えるとにっこりと嬉しそうにうなずいていたので、またショックを受けた。
テイラー家の断罪は案外簡単に終わった。オリビア・テイラーもうまく暴れてくれた。ステラだけは意味が分からないという様子でぼーっとしていた。
ステラをテラスに連れ出した。連れ出してきたときに握った手はもったいなくて離したくないというか離せない。ステラはわけがわからずおろおろしているようだ。困っている顔も可愛い。
「あの、殿下?」
ステラの可愛い声で声をかけられて高ぶる感情を抑えて一番聞かなければいけないことを聞く。
「君はどうして私と婚約破棄がしたかったのだ?」
ステラはなんて答えるのだろうか。怖い。もし嫌われているのならどうしよう。いや、嫌われているならば好きになってもらう努力をしよう。しかし好きな人がいると言われたら…。
「ほかに好きな男ができたのか?」
「違います!殿下は私と無理やり婚約させられたでしょう。殿下はお優しいからきっと私に婚約破棄を言い出せないのだと思って。私は殿下に幸せになってほしくて。」
「違う!」
私の婚約者はどうしてこんな勘違いをしているのだろうか。たまらなくなって我慢できずに、ステラを抱きしめる。腕の中で恥ずかしそうにもぞもぞと動くが離せそうにない。
「あれは私が父上とミラー侯爵に頼んで婚約してもらったのだ。私の初恋だった。君が。」
ステラは驚いた顔をして私の腕の中から見上げるようにして私をみる。ミラー侯爵のことだ。きっとわざと伝えなかったのだろう。大事な一人娘を簡単に嫁に行かせるのはやっぱり嫌だったのだろう。どうにかしてこの婚約を邪魔したかったらしい。
「君がいないと私は幸せになれない。」
ステラの耳元で情けない声をだしてしまった。ステラがいない人生なんて私には考えられない。私は抑えられなくなったステラへの思いを言葉にしてひたすらステラへの愛をステラへ語った。言えば言うほどどんどんステラの顔が赤くなっていく。その顔を隠すように私の胸に顔をうずめる。なんて愛しいのだろうか。顔がみたくてステラの頬に触る。
「殿下、あの。」
顔を真っ赤にして。なんていじらしいのだ。
「殿下じゃなくて名前で呼んでくれないか。ステラ。」
思いがあふれて止まらない。
「っ…。一回だけですよ。」
あとからわかったことだがステラは全然花言葉を知らなかった。まさか私が花言葉を知っているような人間だとは思っていなかったらしく、気にしてもいなかったらしい。つまり私からの愛は全く伝わっていなかったのだ。
最近は毎日言葉と行動で愛を伝えて、いやでも分からせている。毎回真っ赤になるステラが可愛くてしかたない。もう婚約破棄なんて言葉は言わせない。誰にも奪わせない。もう絶対に離さない。
愛しているよ、愛しのステラ。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
マリア視点の番外編もあるので読んでもらえると嬉しいです。マリアの恋愛模様も書きました。
私の好きな世界を書きました。少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
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