プロローグ:俺たちは異世界に転移してしまう
俺には親がいない。
正直、顔も覚えてない。
けど、さみしいと思ったことはない。孤児院で育った俺には、家族がいるからだ。
兄が三人、姉はふたりもいる。
但し、誰も血はつながっていない。
最初に家族を紹介しておく。
一旦、忘れてくれても構わない。
一番上の兄は、真田岳という。
俺より十二歳上の二十九歳。若くして大学教授になった天才数学者だ。呪文のような専門用語は、俺にはまったく理解できない。
俺たち家族はシンプルに「アニキ」と呼んでいる。
二番目の兄は、段田団九郎。漫画に出てくるような名前だ。
俺より七歳上の二十四歳。無口なヒトで、自衛隊で整備兵をしている。
ゴツい身体のわりに手先が器用で、屋根の雨漏りから家電の修理までなんでもできる。
家族からは「タンク」と呼ばれている。
三番目の兄は、佐々木光一郎。
俺より四歳上の警察官。
剣道が得意で、全国大会常連の強者だ。
家族だけでなく友人からも、本名の「コウイチロー」ではなく「(ササキ)コジロー」と呼ばれている。説明は不要だろう。
上の姉は、小泉葵という。
俺たち兄弟のアイドル「あおいちゃん」だ。
一番年長のアニキすら頭が上がらない。ある意味、家族の頂点だ。
俺の初恋の相手でもあるが、本人は気付いてすらいない。
せつない話だ。
俺より三つ上の二十歳なのに、いまでも中学生に間違われて補導されてしまうのが悩みらしい。
以上、俺、久保春生の家族だ。
いや……ひとり忘れていた。
二番目の姉は火浦キマリという、ふたつ年上のフリーター。
普段、何をしているのか分からない。まあ、ロクなことはしていないだろう。
俺は可能な限り関わらないようにしている。
奇行が目立つ、残念な方の姉、残姉だ。
一昨年、孤児院を出た俺は、アニキとあおいちゃんと一緒に暮らしている。
そう。いまではアニキが俺の扶養者だ。アニキが買った中古の一戸建てには俺の部屋まである。ほんと、この人には頭が上がらない。
ちなみにタンク兄は自衛隊の宿舎に、コジロー兄は警察の独身寮に住んでいる。自由人の残姉キマリは世界のどこかをさすらっている。
とまあ、これが俺と家族の現況だ。
◇◇◇◇◇◇
九月、第三土曜日。
今日は月に一度の家族会議の日。久々に家族六人が集合する予定。
なので、あおいちゃんは朝から料理を仕込んでいる。ウキウキしながらも超真剣。あまりに熱中しているので、俺とアニキの昼飯は忘れられた。
家族会議の日は仕方がないと、俺とアニキは諦めている。
そろそろ家族の誰かが到着しそうな午後二時過ぎ、俺はあおいちゃんから頼み事をされた。
『わたし』『お買いもの行ってくる』。『お留守番』『お願いね』。
あおいちゃんは耳が不自由だ。
コミュニケーション手段は手話がメイン。
ほんわか系のあおいちゃんは、手話のテンポもゆったりしている。
『俺が行こうか?』
『ありがとう』。『でも、大丈夫』。『自分で行く』。
唐揚げの香ばしさをふりまきながら、あおいちゃんがにっこりほほ笑む。
どうやら買い忘れた食材があったみたいだ。素材選びも料理の一環と考えているようで、家族会議のある日は料理だけでなく買い出しも全部自分でやりたがる。
『じゃあ』、『行ってくるね』。
『分かった、車に気をつけて』。
パタパタ足音を鳴らしながらあおいちゃんが出かける。
そんな後姿をほのぼの眺めていると、アニキの部屋から争う声が聞こえてきた。いつの間に来客があったのだろうか。
アニキは大学の教授だ。そんなアニキのもとには「単位を下さい!」と泣きつく学生さんが、たまに訪れてくる。いまいる客もその手合いに違いない。
俺の経験上、アポなしで来る学生さんは気持ち的に追い詰められている。泣く。喚く。ひたすら土下座する。そういうタイプが多かった。
対して、大学教授のアニキは一顧だにしなかった。
話し合いが長くなると、あおいちゃんがお茶やお菓子を出して、場を和ませていた。
すると、学生さんは落ち着きを取り戻し、ぺこぺこ頭を下げながら去っていく。
そんなことが何度かあった。
「よし、ここは俺が」
俺は決断する。
家族会議に影響が出るまで居座られたら、アニキは不機嫌になる。それは困る。早く、学生さんの目を覚まさせてやらねばなるまい。
俺は台所に行き、お茶とお菓子を用意する。揚げたての唐揚げが目に留まり、我慢できず、つまみ食いする。うん、うまいっ。
「アニキ、お茶とお菓子を持ってきた。学生さんも、どうぞ……え?」
アニキの部屋に入った瞬間、俺は固まる。
魔術書のような理解不能な専門書の山に囲まれ、システマティックな椅子にふんぞり返るアニキはいつものことだが、対面するふたり、いや、ふたつの物体に目を奪われた。
かわいらしいウサギとクマのぬいぐるみが、ちんまりと正座していた。
くるりと顔を俺に向け、「あ、どうも」とばかりに軽く会釈してくる。
「賢者さまの弟君ですか? どうぞお気遣いなく」「――なく」
ウサギとクマは黄色い声でハモる。
「ハルオ! こんなやつらに、お茶なんか出さなくていい!」
なぜかアニキにキレられる。
とばっちりもいいところだ。
「賢者さま、よくできた弟君ではないですか」「――ですか」
「ああ! うるせー! おまえらはさっさと帰れ!」
アニキは仁王立ちする。
二体のぬいぐるみは、あたふたする。
彼女(?)らは耳やシッポをふわふわと揺らしながらアニキにすがり付こうとする。
俺の腰くらいの背丈しかないウサギとクマは、アニキに蹴飛ばされても投げ飛ばされてもたくましく立ち上がり、満面笑みでアニキに向かっていく。
その姿に、ちょっと引く。
「賢者さま、お願いです」「――です」
「ヤダね!」
「何も危険はありません。賢者さまにかかれば、ちゃちゃっと終わります」「――ます」
「ああ!! 嘘つけ!」
双方諦めることなく繰り返される攻防。
ウサギとクマは、しだいにボロボロになる。
どうやら目の前の物体は着ぐるみではなさそうだと、俺は認めざるを得なかった。
いやだって、ねえ。
腹からはみ出した綿を自分で詰め直し、何ごともなかったかのように起き上がる。
千切れかけた腕を自ら引きちぎり、ぐいぐいと押し付けて元通りにする。
えーと、君たち、ナニ者だい?
ウサギとクマを相手に無双するアニキ。
その勇姿を目に焼き付けた俺は、そっと部屋を出ようとする。
「逃げるな、ハルオ! お前、こういうの得意だろう。何とかしろ!」
「ア、アニキ。なにを言っているのかな?」
棒読みのセリフで、俺はとぼける。
そう。これはファンタジーな展開。
なんとなく展開が読めてしまう、異世界への誘い。
但し、ネット小説やアニメではわくわくしながら楽しめても、いざ自分が当事者になると尻込みしてしまう。
よく考えてくれ。最近の流行はチートモードばかりではない。
俺は命が惜しい。ゲームだって自分でするより、実況を見る方が好きだ。
「なんですと! 弟君は我々のことをご理解して頂けるのですか?」「――ですか?」
「いや、たぶんだけど、君たちの世界が危機に瀕していて、賢者に救いを求めに来たと。で、その賢者がウチのアニキってことかな?」
「正解です!!」「――です!!」
共感が得られたと誤解したのか、ウサギとクマのぬいぐるみが飛ぶように駆け寄ってくる。
俺は思わず受けとめてしまう。が、衝突のはずみで満面笑みのクマの首がもげる。
落ちた頭が「あらやだ」なんてセリフを吐く。
できれば聞きたくなかった。
「あああ―――、コポルの首が―――」
「ポポル姉さま、わたくしを拾って下され!」
状況が状況なのか、流石にセリフはハモらない。
てか、ウサギとクマは姉妹だったのか。
身体修復にいそしむ二体から離れ、俺はアニキに近づく。
「アニキ、何でこんなことに?」
「知るか! でかい宅配便が届いて、箱を開けたら、こいつらが入っていたんだ」
「送り主は誰だよ?」
「キマリだ」
異世界への招待は残念な方の姉キマリからの贈り物だった。なぜか納得してしまう。
「アニキ、宅配便は受け取り拒否で返送だ。異世界救済はキマリに任せよう」
「そうか。ファンタジーの世界では指名をチェンジしていいんだ。さすがに詳しいな」
「いや、そんなに定石ではないと思うけど。てか、アニキはなんで俺がファンタジー好きなのを知っている? そんな話、したことないよね」
「いまさら何を言う。俺の『感想』を読んでないのか?」
俺は固まる。
ドウイウコトカナ??
「アニキ、いえ、お兄さま。感想とは?」
「感想は感想だ。おまえがネットに公開している小説を俺はすべて読んでいる。感想は欠かさず書いているぞ」
「え、え、ええええ――――!」
「当然知っているものだと思っていたが、気づいていなかったのか?」
衝撃の事実が明かされる。
俺がこっそり書いていたネット小説はアニキに読まれていたのだ。
そういえば「既視感のある展開ばかりで新鮮味に欠けます」とか「オリジナリティが皆無です」とかコメントする”Bro. G”というヒトがいた。「こんなものを書いているくらいなら、さっさと風呂に入って寝ろ」という謎の書き込みもされた。
“Bro.”が「兄弟」なのは分かるが、”G”は「岳」、つまりアニキのことだったのか。手厳しいがマメにコメントしてくれる読者と思っていたが、まさかアニキだとは思わなかった。
「はっ、いつも嬉しいコメントをくれる”Miss Blue”は、もしや?」
「気づいたか、あれはあおいだ」
「ワクワクが溢れています」とか「次作も待ち遠しい!」とか、必ず前向きなコメントをくれる“Miss Blue”。正体があおいちゃんだと言われれば納得もするが、恥ずかしいったらありゃしない。
主人公を俺、ヒロインをあおいちゃんに見立てて書いた恋愛物の短編では、「ありきたりでつまらない」というコメントだらけの中で、“Miss Blue”だけが「感動で涙が止まりません」と書いてくれた。(”Bro. G”ことアニキは、ひと言「青くさい」だったが)
「『ハルちゃんも年頃だから、面と向かってコメントされると照れると思うわ』なんて、あおいは言ってたが、ハルオがまったく気づいてなかったとは驚きだ」
アニキの率直な感想に、俺の顔は完熟トマトより赤くなっただろう。
思わずそっぽを向いてしまった俺は、ウサギやクマと目が合う。
「弟君。賢者さまを説得して頂き感謝です」「――です」
何をどう解釈したらそういう結論が導けるのか分からないが、ぬいぐるみチックな異世界からの訪問者は俺に感謝を述べる。
「では、賢者さまの気が変わらないうちに、『ゲート・オープン』」「――プン」
蛍光灯の下、何もない空間に黒い穴が空く。
アニキがふわりと浮かびあがり、頭から吸い込まれていく。
俺は慌ててアニキにしがみつく。
「弟君! 何をなさいます。危険です。離れて下さい」「――さい」
ついさっき、「異世界に何も危険はない」と言っていただろうと思ったが、文句を言っている状況ではない。
俺はアニキを必死に引き戻そうとする。が、アニキは胸、腹と徐々に穴の中に入っていく。
「誰か、助けてくれ――!」
俺は叫んだ。
俺の知る限り、異世界に転移した場合、元の世界に戻ってこられないことも多い(ネット情報参考)。
こんなことでアニキと別れたくなんかない。
「弟君、もしや賢者さまと今生の別れになると思われたか?」「――たか?」
俺の考えを読んだかのように、ぬいぐるみシスターズが問う。
「ご安心下され。賢者さまは必ず戻られます!」「――ます。たぶん」
ウサギとクマは微妙にハモらなかった。
ポポルという名のウサギは断定口調だが、コポルというクマは自信なげに「たぶん」と付け加えた。
ポポルよりもコポルの方が正直な性格なのだろう、たぶん。
「コポル、こういうときは断言するものだ! 賢者さまを送り出す者たちの気持ちも考えてやるのだ」
「ポポル姉、すまぬ。つい本音が出た」
「ふっ。素直なのがコポルの良いところだな」
見つめ合うウサギとクマ。
巻き込まれパターンの当事者たる俺は、姉妹愛の美しさに感動するわけはなく、ツッコミや罵倒をする余裕もなかった。
「弟君。もう良いではないか」「――ないか」
もふもふした感触が脇腹や首筋をくすぐる。
ウサギとクマのぬいぐるみが俺の敏感な個所を探る。
まずい。力が抜けていく。
「む。これは!」
「おいおい、どうなってるんだ?」
背後から聞きなれた声がする。
タンク兄とコジロー兄が来てくれた。
「タンク兄、コジロー兄、助けてくれ! アニキが異世界に連れ去られる!」
「む。分かった」
「いや、僕には状況が分からないが、ともかく助太刀しよう」
タンク兄とコジロー兄が突進してくる。
「そうはさせるかー」と叫びながら行く手を阻もうとするポポル&コポルのぬいぐるみシスターズは、あっさり踏みつぶされる。ふたりの兄の視界にも入らなかったかもしれない。
「む。なにか踏んだ」
「タンク兄、それらはいいから、アニキを穴から引きずり出して!」
自衛隊員のタンク兄と警察官のコジロー兄は力強かった。
異世界に転移しかけていたアニキは、少しずつ引き戻される。胸のあたりまでこちらの世界に帰ってきた。
「あと少し! ふたりとも頑張って!」
「むむむむ―――っ!」「えいや―――!」
アニキの救出をふたりに任せて、俺はウサギとクマを抑え込む。
ぽふぽふとパンチを喰らうが痛くはない、むしろくすぐったい。
するり。アニキが穴から抜け出る。すんごい目で、ぬいぐるみシスターズを睨んでいる。
助かった、と思ったのも束の間、「アチョー!」と古臭い叫び声とともに、俺は脳天に衝撃を受ける。
ポポル&コポルのぬいぐるみシスターズが俺の手からすり抜ける。
痛む頭を手で押さえながら振り返ると、木彫りのお面を被った女が槍を持って立っていた。南米アマゾンを観光してきましたっていう雰囲気の、いかにもお土産物っぽい仮装だ。
「こら! ハルオ! ちっちゃい子をいじめちゃダメでしょ!」
「その声はキマリだな?」
「あら、分かっちゃった? ちょっとアマゾンで川下りしてきたの。はい、これ、お土産!」
仮装品の産地は南米アマゾンで正解だった。予想が当たったからといって別に嬉しくもなんともない。
「キマリ。このふたり、いや、このぬいぐるみみたいな生きものは何なんだよ?」
「ウサギのポポルちゃんとクマのコポルちゃんのこと? かわいいでしょ! 旅先で知り合ったのよ。『この星で一番の知性を持つ者を探している』って聞かれたから、自慢のアニキを紹介してあげたの。ちゃんと宅配便が届いて良かった」
俺たちとしてはちっとも良くはないのだが、残念な方の姉キマリはひとりで納得していた。
「おお! キマリ殿ではありませんか。賢者さまを紹介して頂いただけでなく、囚われた我らを救い出して下さるとは。もはや、感謝の言葉もございません」「――ません」
「あらまあ、そんな大げさな」
キマリは鼻高々だ。
ぬいぐるみが動いてしゃべることなど、当然のように受け止めているところが怖い。
「キマリ殿のおかげで賢者さまを我らの世界に導くことができそうです」「――です」
「へっ?」
「さあ、賢者さま、いざ往かん! 『ゲート・オープン』!」「――プン!」
何もない空間に黒い穴が空く。
ふたたび、アニキが浮かびあがる。
タンク兄とコジロー兄がアニキに飛びつく。
残姉キマリはいまさらあわてる。
「ええい、また邪魔をするか! コポル、フル・パワーでいくぞ」
「分かった、姉上!」
ぬいぐるみシスターズが怪しげな呪文を詠唱する。
黒い穴が大きくなる。
アニキは、タンク兄とコジロー兄ともども穴に引き込まれていく。
「やめろー!」
「ハルオ! 危ない!」
俺は三人の兄に飛びつこうとする。が、キマリが俺の腰にしがみついたので、俺の手は届かなかった。
穴に完全に引き込まれる寸前、アニキはタンク兄とコジロー兄を蹴飛ばす。
反動で、ふたりの兄は床に転げ落ちる。
「「「アニキー!」」」
タンク兄、コジロー兄、そして俺の叫びに、応える声はなかった。
「あんたたち! アニキをどこへ連れて行ったの? 約束が違うじゃない?」
「……キマリ殿? わたしたちはなにか約束をしましたか? 記憶にないのですが」
「あらまあ、そういえばそうね……」
キマリの問いかけに、ウサギのポポルとクマのコポルはさらりと返答する。
どうやらキマリは、何も考えていなかったようだ
未知の生物に、ほいほいとアニキを紹介して、とんでもない状況を作ってしまっている。
やろうとしても、なかなかできることではない。
やはり、残念な何かを持っているのだろう。
「キマリ殿とその兄弟よ、案ずることはない。『アニキ殿』は歴代の賢者さまと比べても圧倒的な魔力を秘めているご様子。ちゃちゃっと魔王を退治して必ず戻られます!」「――ます。たぶん」
「こりゃ、コポル! あれほど見送る者たちの気持ちを考えろと言ったのに!」
「すまぬ、姉上」
不安を助長させるしかない掛け合いもさることながら、俺は黒い穴の吸引力が増しているのに危機感を覚えた。
「ポポルでもコポルでもどちらでもいいけど、とりあえずこの穴をどうにかしてくれないか?」
「そうだな。コポル、ゲートを閉じなさい」
ウサギのポポルが、妹のコポルに命じる。
対して、クマのコポルは、きょとんとした顔をする。
「え? ゲートは姉上が閉じられるのではないのですか?」
「なに? 普通、転移者がゲートを通過したら穴は勝手に塞がるはず。いま、ゲートが開きっぱなしなのはコポルの仕業ではないのか?」
「いえ、わたくしはポポル姉さまがコントロールされているものだとばかり……」
ごうっと大きな音が鳴る。
タンク兄の巨体が宙を舞う。
コジロー兄の細身の身体が後に続く。
「むぎゃあっ」と、ふざけた悲鳴をあげて、キマリが俺にしがみつく。
「『ゲート・クローズ』」「『ゲート・クローズ』」「『ゲート・クローズ』」とポポルとコポルの叫び声が響く。
俺とキマリも宙を舞う。
タンク兄の身体が、次いでコジロー兄の身体が暗黒の空間に飛び込んでいくのが見えた。
ふたりの名前を呼ぶ間もなく、俺とキマリはひとつになって穴の中に引きずり込まれる。
直後、光が消える。俺たちの背後で、穴が閉じられたのが分かった。
深い闇に包まれ、俺とキマリはどこまでも落ちて行く。
薄れゆく意識の中、あおいちゃんひとりだけも巻き込まれなくて良かったと、それだけを考えた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか??
プロローグ、長くなってしまいました。。。
自分でも読み返しながら、ちょこちょこ手直しします。
ちなみに、口での会話は「」で、手話は『』でくくっています。分かりましたでしょうか?
もし、誤字脱字を見つけられた場合、ご報告頂けると助かります。