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これはまだ、一周目である

gm文章力ですがよろしくお願いします。不定期更新です。

「―――――――ッ!!!」


言葉にならない悲鳴。その声の主の表情は恐怖で歪みきっていた。顔の表情さえ歪んでしまっているが、その声の主の顔はとても可憐で美しかった。何故この様な可愛らしい見た目の女の子がこの様な声を出し、この様な歪んだ表情をしているのか、僕はその全てを知っている。






「ほら、起きて。もう7時だよお兄ちゃん」

「ん。。。」

妹からの目覚ましボイスを聴いて、目を覚ます。体を一定の角度まで上げると、手慣れた手つきで目の前のパソコンの電源を入れた。少しの間のロード時間の後、デスクトップに光が灯る。インターネットを開くわけでも無く、右上にある 6;50 の文字を見るとパソコンを閉じ、上半身を下げ、目を再び閉じた。

「ちょっと待てや!」

後頭部に電流のごとき衝撃が走る。頭を押さえながら自分に攻撃してきた人物ーーー沙夜を見る。沙夜は文字の通り上から目線で此方を睨み付けていた。(上から目線と言っても今の体制からでは逆立ちをしながら見ない限りそうなってしまうのだが)しかし、睨んでる本人はとても容姿が良く、これが赤の他人同士なら、沙夜に睨まれた側の人間(特に男子)は喜ぶのかもしれないが、兄である自分には不快なだけであった。

「なんだよ、今沙夜ちゃんの大好きなお兄ちゃんは忙しいんだよ。それに何が「もう7時だよ」だ、あと10分もあるじゃないか」

「忙しいなら尚更寝たらダメでしょうが、それにさ十分なんて誤差の範囲でしょ、また遅刻するよ? 早く顔洗ってきなって」

「いやいや10分が誤差の範囲ならウルテラマンは誤差の間に三回殺られる訳でだな」

「いいからさっさと顔洗ってきて」

パシャパシャと雑に洗顔を済ませ、沙夜の待つ台所に向かった。既にテーブルにはパンと皿が用意してあり、残すは食べるだけの状態になっていた。

「パンに何か塗る?」

「んー、じゃあ沙夜の愛情をッ!!


サクッ


何かが顔の横を通過した。恐る恐るその正体を確かめるべく後ろの壁を見る。


まじかよ。


沙夜が音速で投げた物は果物用のナイフであった。軽く意識が飛びそうになった。反省しよう。

「えっと、その、あれだ。ごめんなさい」

俺の謝罪の言葉を受け取った沙夜は何も言わずにナイフを回収し、収納した。

結局冷蔵庫からバターを取り出し、お気に入りのバターナイフでパンに塗った。

「いただきます」

サクッと心地よい音がし、バターの塩分が口の中に広がる。俺はこの味が大好きで、この朝食に満足していたのだが…

(空気が重い!)



「行ってきます」

先に沙夜が家を出た。まったく、お兄ちゃんを待ってあげようとは思わないのか。そんなことを考えている間に、浩希も支度が済んだ。浩希はスマホで時間を確認する。

7:20

「...よし」

錦ヶ丘英二はスマホをバックに入れ、家を出た。



英二の高校はさほど家から離れていないため殆どの学友達は自転車やバスで登校するのだが歩いて登校する。

自転車での通学じゃないので堂々と音楽が聴きながら登校する。ほとんどの場合、曲が2曲も終わらない内に学校に着いてしまう。だから俺は前日に登下校に聴く曲をセレクトしておく。



学校に着き、クラスに入ろうとしたが珍しい光景を見たので足を止める。この学校のアイドルであり、読モでもある超絶美少女の南澤(みなみざわ)華蓮(かれん)が英二のクラスである1-5のクラスに来ていたのだ。

 俺は南澤のファンの集団こと、通称「南澤組」が集まってくるのを確認すると、1-5の教室に入った。不運なことに今の英二の席は先頭の窓側、今南澤がいる場所から最も離れた位置にある。まぁ、南澤との距離が近かったとしても特に自分から距離を置いたりするわけでもないのだが。

バックからスマホを取りだし、まとめサイトの巡回を始める。今月はまだお金に余裕がある。何か新しいゲームは出たかどうかを確認していく。俺は基本的には好きなゲームの前情報は確認しない。完全に何も分からない状態でゲームをプレイするのがこだわりだ。

ヒット。

俺が好きなゲームのシリーズの最新作が出たようだ。小さなガッツポーズをし、喜びに漬かってると妙な気配がする。不思議に思い、妙な気配を感じた方向、詳しく言えば出入り口の方向に顔を向けた。

ゴンッ

「あいたぁ!」

「痛っ!」

何故そうなってしまったのかは全くもって予想出来ないが、英二の頭と南澤の顔がぶつかり合った。英二は反動で窓に頭をぶつけ、アイドル南澤はと言うと、、、なんとも可愛らしいこけかただった。


やばい


頭が少し痛むがそんなことは重要ではない。この学校のアイドルにもしかしたらケガをさせてしまったのかもしれないのだ。今の出来事に対して「南澤組」の連中はどう反応するだろう。連中の方を見る。その表情はそれぞれで目をいっぱいに開き驚いている者、謎の笑顔を向けてくる者、怒りを隠しきれてない者。

不味い、不味すぎる。あいつら平気で俺を殺してくるような気がする。ならばすべきは謝罪、それも日本の伝統的な謝罪方法 DOGEZA

英二の判断は早かった。席からはねあがり両手、両足、顔面を床に当てる。いや、当てたかった。

「ごめん!」

「うぐっ!」

英二の顔面に当たったのは床ではなく、組長南澤の美脚だった。

俺はゆっくりと立ち上がり横目で視線を南澤から背ける。

フッ、、、、終わったな。

もう一度謝ろうとしたその時、誰が投げたのかシャープペンシルが英二の額に命中する。そして「痛い」と言う間もなくまたもや誰が投げたのかボールペンが命中した。




ハッ!?


周りを見渡す。ここは保健室のようだ。全身が痛い。どうやら、俺が気を失った後も奴等は俺の体を攻撃しまくってたようだ。頭に手を当てると包帯でぐるぐるに巻かれているのが分かった。無理やり起き上がろうとすると全身に激痛が走った。

「痛っ!」

一体何ヵ所怪我してるんだ。

「ん? あぁ、起きた?」

カーテン越しに女性の声。間も無くしてカーテンが開かれ、保険の先生の雪原先生が入ってきた。雪原先生は組長を除けば恐らく校内一の人気を誇る女性だ。童顔、低慎重、それでいて巨乳。入学式に何処かのロリコンが「合法ロリきtらあああああああああああ!!!」とか叫んでいた。因みに本人を先生扱いしないと怒られる。

「派手にやられたわね」

「本当ですよ。まったく、人の命を何だと思ってるんだか」

「今頃あなたに怪我をさせた生徒はキツく指導してあると思うわ」

「先生は連中が少しぐらいキツく叱られたからと言って反省すると思ってるんですか?」

「…ないわね」

「彼らが信仰を捨て、俺ごときに謝りに来るようになったならばそれこそ世界の末期ですよ」

謝罪などいらない。と言うよりもう、暫く近づいてほしくない。次は命が危ない。

「あ、そう言えばさっき南澤さんがあなたにこれを」

差し出されたのは手紙だった。

「いりません」

こんなのもらえるわけない。

「いけませんよ? 彼女の思いを無駄にするんですか?」

「そんな言い方はズルいですよ」

渋々と手紙を受けとる。紙を開いて中身を確認する。

『今日の放課後屋上で待ってます』

「死刑宣言!?」

「ほうほう、成る程。英二君。変えの包帯を用意しておきますから安心して行って来てください」

「いやいやいや、包帯で止まった心臓が動くと思ってるんですか!?」

「でも、行かなかったらもっとひどい事になるかもしれませんよ?」

確かそうだ

少し考える。結果、錦ヶ丘英二は戦場に行くことを決意した。

「ファイトですっ!」




放課後、屋上に行く途中に違和感を覚えた。連中がいなかったのだ。俺は両手で頬を叩き、余計なことを考えないようにした。

最後の階段を上り、屋上へのドアに手を掛ける。

「スゥッゥゥハァァァ」

深呼吸を大きく一回してドアを開けた。



いた。

組長がたった一人で立っていた。

「遅れて悪いな」

「その怪我じゃしょうがないよ」

確かに普通の人から見ればしょうがないのだろう。言っている本人は間違いなく普通じゃないのだが。

「頼みがあるんだ」

唐突に始まった。

「何でもどうぞ、死ね等一部の事以外は全て受け付けます」

「考えすぎだよ」

笑って返された。

ゴクリと唾を呑んで耳を研ぎ澄ます。それと同時に逃げ出す準備もする。

「私の」

「私の?」

嫌な予感がする。

「私と!」

「うん」

少し間が空く。南澤はとても緊張しているのがよくわかる。顔が赤いし、汗少し出ている。だが、俺それでもなお、その整った外見は崩れなかった。

「私のパソコン直してください!」

「すいま、    え?」

思ってもいなかった言葉に驚きを隠せない。「私のパソコンを直して」と聞こえたけど間違いないよな? そもそも何で俺なんだよ。確かにパソコンはすきだけど、愛してるけど! でも、そんなの誰も知らないはずだ、沙夜以外。でも沙夜が南澤と交流があるとも思えない。

いくら考えても何故自分に頼むのか分からなかった。

「えっと、なんで俺に頼むのかな? 俺はそんなにパソコンに詳しいわけでもないんだけど」

「冗談止めてよ、前に私の家でパソコン直してくれたじゃん」

南澤が笑って返す。英二は必死に記憶を探ったが、そのような事をした記憶はなかった。

「本当に俺がお前のパソコンを直したの? 人違いじゃなくて?」

「貴方が錦ヶ丘英二と言う名前なら間違いありません。それとも、忘れちゃったの?」

全く分からないな。俺がこんなに可愛い人に昔会ったことがあるなんて。

「あ、もしかして」

「思い出してくれた?」

しょんぼりとしていたが急変、パッと光が灯ったかのように表情が明るくなった。

「俺がお前のパソコン直したのって小二より前か?」

もしも、そうだとしたら俺は知っている。

「小学一年生の頃…だったっけ。うん。多分小学生一年生の時だよ」

やっぱりな。

「パソコンは直す。それは約束する」

「やった! ありがt」

「でもな、一つ聞いてくれ」

もしも、南澤が俺の友達『だった』としたら多分重要な事だ。

「え?」

「俺の」

「俺の?」

しっかりと南澤を見つめる。 

「俺の10歳までの記憶はないんだ」

その時の南澤の顔は美しくて、可愛くて、可憐で、悲しみで溢れていた。

あぁ、やっぱりこいつも、








『友達だった』のか






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