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光希と楓はフリーランスの模様です  作者: タチマチP
エピソード第1巻 -私の運命が225度変わる物語-
4/45

第4話:大手ゲーム会社に到着

 午前九時五十五分 ペンタゴン・ユニックス 受付前


 電話受付を済ませた光希は、ソファに座って待っている。

 五分ほど待ってから、内側の扉が開き――


「やぁやぁおまたせ光希くん。朝早くに呼んでしまって悪かったね」

野崎のざきさん……マジで死にそうでしたよ」

「ははは……ごめんごめん。光希くんは人混みが本当に嫌いだからね」


 野崎は笑いながら言う。


「ところで野崎さん……またすっげーイメチェンしたんですね」

「分かる? すごく変わったでしょ?」

「まあ……そりゃ見れば誰でも……」


 光希はやや顔を引きつりながら言う。

 野崎は髪型やファッションをやたら変えることが好きな趣味をしており、数カ月に一回は、ほぼ全とっかえというレベルでイメチェンをする。


 一月から三月までは、紫色の髪の毛に、ソフトモヒカンでスカジャンを着ていたが、四月に入ってからは、金髪オールバックに、グラサンとライダージャケットで決めており、もはや昭和の不良漫画に出てくるような、昔懐かしの容姿をしている。


「三歳になる娘が僕がイメチェンするのを面白がっててね。ついつい斬新な方向に持っていっちゃうんだ」

「へ、へぇ……そうなんですね」


 心の中で顔を引きつる光希。


「……っと、立ち話も何だね。他の人も集まっているし、会議室Cに来てもらっていいかな」


 野崎は会議室Cの方向を指して言う。


「あ、はい。Cってことは、七十人位集まるんですかね」

「うーん、それくらいだね。光希くん、人多いけど大丈夫?」


 野崎が光希を心配するように訊く。


「ああ……別に知っている人ばっかりなら人が多くても大丈夫ですよ。俺が苦手なのは、不特定多数の人と同じ空間に居ることなんで」

「はは、そりゃ良かった。いくら人混みが苦手と言っても、仲間を敬遠されるのは悲しいからね」


 光希の言葉を聞き、野崎は安心するように言う。


「じゃあ会議室に行きましょう」

「うん、そうだね」


 光希の言葉に合意すると、野崎は会議室Cへと光希を案内した。


★★★


午前十時五分 ペンタゴン・ユニックス二十階 会議室C


「みんなお待たせー、お疲れ様です」

「「「お疲れ様でーす!」」」


 野崎が会議室に入り挨拶をすると、中で既に待機していた他のメンバーが挨拶をする。

 光希以外の他の社員や他のフリーランスが集まっており、各々がリラックスしながら席で雑談をしていたようだ。


 そして、野崎の後ろから続くように光希も会議室に入る。


「どうも、お疲れ様です」

「「「お疲れ様でーす!」」」


 光希の挨拶に対しても、部屋のメンバーが挨拶をする。

 ディレクターをしている野崎だからというわけでもなく、挨拶をするのは当たり前という和気あいあいとした人達だからこその野崎と光希の同等の扱いと言える。


「おっ、光希じゃん。三ヶ月ぶり。ちゃんと生きてたか?」

「はは……電車からの新宿駅で、何回か死にましたけど、残基残ってたんで、なんとか来られました」


 三十代程度の茶髪の男性が、久々に再開した光希に声をかける。

 彼の名前は佐々木という。

 ペンタゴン・ユニックスでアートディレクターをしているスリーディー専門のアーティストだ。

 主な代表作は、スタークエスト、ヴァスタークラウン、ハートスピリッツなどのファンタジー系が多い。


「光希くん、相変わらず東京でよく死ぬんやなぁ。もう岐阜県とかに住んだほうがええんやないの?」

「何言ってんだよ。岐阜県は五十年前に海に沈んだ伝説の地だろ?」

「いっけない、そうやったね」

「だろ? ははは!」


 光希がタメ口で話している大阪弁の女性は、プログラマーをしている華野はなのという子だ。

 年齢は二十三歳で、光希と同級生ということもあり、ペンタゴン・ユニックスの中でも特に仲が良い仲間の一人だ。

 入社して二年目のため代表作は多くないが、異世界探偵ミクニネや、スターラックファンタジーなどのIPモノの開発サポート実績がある。


「おいコラ二人共。俺っちが生まれ育った岐阜県ディスってんじゃねえよ」

「……ん? その声は原田か」


 光希の右側から、原田がどす低い声で話しかける。

 原田は光希と同じく二十三歳で、サウンドクリエイターをしている。

 岐阜県出身で、たまに岐阜県のことについてを熱く語る一面があるが、新幹線通ってないじゃねえかという一言に押されてしまい、中々地元愛を語れずにいる。

 主な実績は華野と同じく、異世界探偵ミクニネ、スターラックファンタジーで、サウンド周りのサポートをしてきた。


「よう光希、久しぶりだぜ。この三ヶ月、仕事がなくてニートしてなかったか?」

「してねえよ! というか、差し込みが予定より多くなって苦しかった」

「景気が良いな。今度奢ってくれよ」


 原田がビールジョッキを持つ仕草をする。


「いいぜ。最高のうまい棒を食わせてやるよ」


 光希は、最高のうまい棒を両手に持つ仕草をする。


「……ったく、相変わらずケチの極みだな」

「フリーランスはケチなのが一番。税金と贅沢ぜいたくが何よりも大嫌いな光希くんです」


 光希は誇るように言う。


「はいはい、再会の喜びを謳歌しているところ申し訳ないけど――そろそろキックオフミーティングを始めさせてもらうよ」


「あっ……野崎さん、失礼しました」


 光希はハッと気づいて野崎に謝る。

 やんわりと指摘をしてくれたが、本来ならば怒られるシーン。

 丸く収まっているが、謝罪は適切に入れる光希。


「はい、よろしいです」


 グラサン越しに、野崎は光希を見て笑う。

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