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光希と楓はフリーランスの模様です  作者: タチマチP
エピソード第1巻 -私の運命が225度変わる物語-
26/45

第24話:菊池と待ち合わせ

 十時二十五分 喫茶店タスヴァ


 光希と楓は、菊池から指定された喫茶店へとタクシーでやってきた。

 約束の時間は十時三十分。

 電車遅延で道路がタクシー渋滞を起こしていたが、たまたま乗っていた運転手が裏道に詳しいドライバーだった為、想定よりも早めに到着することが出来たのだ。


「はぁ、タクシー代、スゲー高かったなぁ……」


 光希は、二千百円と書かれたタクシーの領収書を見て、ため息をつく。


「光希くん、ごめんね。私のために、高いお金を払わせちゃって……」

「いや、良いんだよ。どうせあんな状況の電車に乗ったら、俺が死ぬのは目に見えているから……」


 光希は、SNSで投稿されている口コミと画像を見ながら言う。

 そこには、現在も継続して電車が動かないという愚痴の呟きと『全線運転見合わせ』と書かれている電光掲示板の画像がずらりと表示されており、現在も数秒おきに誰かが呟きを投稿している。


「まあ、私もタクシーに乗れたおかげで、その画像に写っている地獄絵図に乗らずに済んだから、私も割り勘で払うよ」


 楓は財布を取り出して言うが――


「良いよ別に。どうせ金無いんだろ?」

「な、何を言うの光希くん! 私だって、最低限のお金くらい……」


 楓は光希の言葉に反発し、財布の中を確認するも――


「…………」


 その中には、小銭で六百三十円しか入っていなかった。


「……楓さ、金が無いのは聞いていたけど、その資金繰りで、今までどうやって生活をしていたんだ?」


 光希は呆れた表情で聞く。


「そ、その……貯金はもう少しあるんだけど、元々安月給だったせいか、あまりお金を持つ癖が身につかなくって……」


 楓はもじもじとした仕草をしながら答える。


「別に、倹約家であることは否定しないけど、土壇場でお金が必要になった時に、とりあえず何とか出来るくらいの軍資金は持ち合わせたほうがいいぞ」

「なんとかなる軍資金って、どれくらい……?」


 楓は光希に訊く。


「いくらって……、まあ、二万とかあれば、大抵の何かしらには対処できるだろ」

「に、二万円っ……! ゆ、諭吉様を、双子でっ……!」

「ああ、別に大人なら当たり前の金額だろう?」


 光希は平然というが――


「む、無理無理無理! 二万円を銀行から引き出して外に持ち出すなんて、強盗にお金を持っていってくださいってアピールしているようなものじゃない!」

「……おーい、ここは世界的に治安が良いと言われている日本だぞー。世紀末じゃないからな―」


 頭を抱えて悩みこむ楓に、言葉をかける光希。

 そんなやり取りをしていると――


「……なあ、何で店ん中で夫婦めおと漫才をしとるん? 二人共、そういう関係なん?」


 と、光希と楓のテーブルへ来た菊池が、呆れた様子で声をかけてきた。


「へっ……ああ、菊池さん。びっくりしました。来ていたんですか」

「ああ、大声で二人が話していて、周りの客の目を引いている状況だったから、声をかけるのに相当勇気が必要だったけどなぁ」


 菊池が光希と楓のテーブルの周りを指差すと、他のテーブル席に座っている人達が、二人の様子をちらりちらりと観察していた。

 その様子を光希と楓が見ると、他の客達は視線をそらし、何事もなかったかのように、ただの喫茶店の客へと戻った。


「……マジっすか、スゲー恥ずかしい」


 客達が自分たちのことを見ていたということを知ると、光希はガックリとしながら落ち込んだ。


「私も、財布の残金が六百三十円しかない女だって思われたのかな……」


 楓は、光希よりも更に数ランク低く落ち込んでおり、財布の中にある全財産の六百三十円を握りしめて苦笑いしている。


「まあ、過ぎてしまったことを悔いたところで、取り戻せるものは何もないからなぁ……ひとまず、あたしも座ってええか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ。どうぞ」


 光希は自分が座った位置から移動して、その空いた場所に菊池を座らせる。

 そして、光希は楓の隣の席へと移動して、二人は菊池と向かい合う形となった。

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