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光希と楓はフリーランスの模様です  作者: タチマチP
エピソード第1巻 -私の運命が225度変わる物語-
17/45

第16話:それから3日後の事――

 四月八日 十一時十分


 光希と楓が出会ってから三日後のこと――


 四月から無職になった楓は、平日であるにも関わらず、働く会社の契約が終了してしまったがために外出する目的を失ってしまい、自宅のベッドの上で寝っ転がりながら、光希からの連絡を待ちわびるだけの生活を送っている。


「はぁ、光希くんから全然連絡が来ないなぁ……」


 楓は身体をゴロゴロとベッドの上を転がりながら、スマートフォンから着信が来るのををぼんやりと待っている。


「あの後、私の方でもフリーランス向けの求人サイトの登録をして、色々と仕事を見てみたんだけど、どれが良いのか分からなくって、結局光希くん待ちになっちゃった」


 フリーランスの仕事は、主にITの求人がメインで出ているため、今まで事務としてしか働いていなかった楓にとって、募集欄の条件項目にITやゲーム用語で詳細を書かれても、自分がその仕事をできるのかどうかというのが判断出来るわけもなく、結局は光希からの連絡だけが頼りとなっている。


「光希くんは、いい仕事が見つかったら連絡をくれるって言ってたし、あまり催促するのも申し訳ないかな……?」


 自分のために動いてくれている光希のお尻を叩くことに罪悪感を感じる楓は、昨日から進捗を聞こうか聞くまいかという選択に迷い続けており、現在は『待ってみよう』という判断寄りのため、楓側から連絡をせず、光希を待つという判断をしたのだ。


「もしかして……光希くん、私に求人の紹介をするってこと忘れてないよね……?」


 楓の脳裏に一瞬の不安がよぎる。


「……光希くん。咲さんが忘れっぽくて面倒くさがり屋な面があるって言っていたし、最近は他の仕事をしているから忙しいとも言ってた」


 楓は咲からの言葉を思い出して言う。


「それで私のことを忘れちゃったり、覚えていても優先度が低くなっちゃっていたりするのかな……?」


 誰かが言ったわけでもないのに、楓は光希が連絡をしてこない疑惑を頭の中に浮かべてしまう。

 仕事を無くしてしまったナイーブな心は、根拠のない不安を生み出し、楓の気持ちに浸蝕をしている。


「ま、まさかそんなことはないよね……?」


 おどおどした表情でそう言うが――


「……で、でも、やっぱり今どうなっているかくらいは確認はしておきたいかな……そ、その……忘れているかじゃなくって、ちゃんと私のために頑張って――」


 プルルルルルルル!

 プルルルルルルル!


「ひゃあっ! 何ぃっ!?」


 楓が独り言をつぶやいていた途中で、両手で持っていたスマートフォンがバイブレーションとともに大音量の着信音を鳴らして通知を知らせる。

 全然連絡が来ないと怒っていたのにも関わらず、それがフラグになったかのように連絡が来てしまい、楓は思わず手を滑らせスマートフォンを床に落としてしまったのだ。


 プルルルルルルル!

 プルルルルルルル!


「もう……スマホに傷がついていなければいいけど……」


 楓は落としたスマートフォンに傷が付いていないか確認しつつ、画面に表示されている『着信 光希くん』という文字の下に表示されている応対ボタンを押す。


「はい、もしもし……」

「もしもし楓〜オレオレ。フリーランスのオレだよ」


 名を語らぬフリーランスから連絡が来た。


 最近はフリーランスのオレオレ詐欺が流行っているのだろうかという疑問を一瞬抱くが、連絡先に『光希』と表示されてしまっている以上、これは詐欺ではないことを確信しつつ、楓は切らずに会話をする。


「もう、光希くん。アプリで連絡先を交換したから、てっきりチャットの方で連絡が来るのかと思いましたよ」

「ん……? ああ、色々と伝えたい事もあって、チャットで全部書くのが面倒くさいと思ったから、つい電話しちゃった」

「ああ……」


 ここで光希の面倒くさがり屋なシーンを見ることになったのか……と、楓は思った。


「というか楓、俺より君のほうが歳上なんだから、敬語は止めようって言ったじゃん」

「えっ……ああ、そうでし……だったね」


 光希に対し、無意識に話していた丁寧語を、慣れない様子で修正する楓。

 年下とはいえ、様々な経験を持つ光希には、やはり威厳を感じて丁寧な言葉を使ってしまう癖が楓には少し残っている。


「それで……光希くん。仕事の方は……」


 楓がおどおどとした様子で充希に質問をする。


「ああ、そのことについて楓に言わなくてはいけないことがあって……」

「えっ……! な、何っ!」


 光希はどこかしんみりと落ち着いた様子で楓に言う。

 ニート生活一週間以上経過したナイーブモードな楓にとって、その声は不安要素なものでしかなかった。


「楓について、俺が世話になった企業のプロジェクトリーダーに話をしたところ……」

「えっと……はい……」

「困ったことに……」

「は、はい……」


 楓の不安が更に増える。

 やはり、仕事の未経験者がデザイナーをやることは難しかったのだろうかというのを懸念にしていた楓だったが――


「複数のプロジェクトから同時期に来てほしいというオファーが届いてしまって……どれを紹介すれば良いか迷っているんだ」

「へぇっ……?」

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