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光希と楓はフリーランスの模様です  作者: タチマチP
エピソード第1巻 -私の運命が225度変わる物語-
14/45

第14話:楓の描く世界観

十三時四十五分 喫茶店 鈴蘭の里


「ところで咲ちゃん」

「ん、何? 進ちゃん?」

「多分、咲ちゃんのお昼休憩とっくに終わっていると思うけど、会社に戻らなくてもいいの?」


 進が質問をする。


「あー、別に大丈夫よ。私、営業職だもの。席に座っていなくたって、どこか適当に回っているって思われているだろうから」


 咲は笑いながら、進の言葉に軽く返す。

 職権乱用じゃないかな……と思いつつ、それを口にしても言いくるめられてしまうだろうという背景から、進が何かを指摘することはない。


「それよりも楓ちゃんよ。絵、とても良かったわよね」

「ああ、確かに凄かったな……」


 進と咲が、楓の絵を褒めると――


「ありがとうございます。絵は昔からやっていた趣味の一つですので、とっても得意なんですよ」


 楓は二人に礼を言い、スケッチブックの中の他のページをパラパラと開き、別の作品を流すように見せる。


「へぇ……、砂漠のオアシス、雪山の結晶、火山で舞う炎……どれも幻想的なものばかり……ファンタジーが好きなのね」

「私、地球上に存在しないような不思議で素敵な絵を考えるのがとっても好きなんです。なんというか、人が感動するような、未知なる世界を構築するっていうんですかね……」


 楓が笑顔で言う。


「光希くん。楓ちゃんの絵、どう思う?」

「えっ……どう思うって、どういう意味ですか?」


 突然の咲の曖昧な質問に、思わず疑問で返す光希。


「ゲーム業界で働く一人として、未来のデザイナーさんの作品を見て、どう思うかという事よ」

「ああ、そういうことですね……」


 光希は納得したように答える。


 咲は、ゲームの企画で様々な案を見てきたであろう光希に白羽の矢を立てて、楓の作品は、今までの自分の経験から見て、どの程度のクオリティなのだろうかというのを確認するべく、光希にその返答を求めたのだ。


「そうですねぇ……あくまで僕の所感として言いますと――」

「は、はい……」


 楓が面接をしているときのように、緊張した表情で息を呑む。


「ゲームのメインビジュアルを作る才能があるんじゃないかなって、思わず感じてしまいました」

「メインビジュアル……?」

「ああ、メインビジュアル」


 楓の言葉に光希は復唱する。


「へぇ……そりゃ光希にしちゃあ、随分と高評価だな。あの絵、そんなに良かったか?」


 進が光希に問いかける。


「それはもう……流石に商業レベルまでには至ってはいないですが、それでも後押ししてあげれば、良いデザイナーになるんじゃないですかね」

「ほ、本当ですかっ……!?」


 楓が光希の目を至近距離二十センチほどまで近づいてみる。


「ちょ……近いっ! そんなに興奮すんなよっ!」

「あっ……ごめんなさい。ついびっくりしちゃいまして……」


 楓はふふっと光希の顔の近くで笑うと、後ろにぴょんとステップをして、光希から離れる。


「……ったく、たかが俺の言葉で喜ぶなんて……」


 光希は顔を少しだけ赤くしながら、楓から目をそらして言う。


「おい光希。今、楓ちゃんが急接近して喜んでなかったか?」

「よ、喜んでねえし……! ちょっとびっくりしただけだよっ!」


 進が光希に「このこの〜」と言いながら、肘を当てて弄る。


「……?」


 当の本人である楓は、二人が何をしているのか理解していない。


「はいはい。脇道にそれない!」


 咲が進の首元をつかむと、強引に光希から引き離す。


「さ、咲ちゃん……首……首ヤバイから……」


 ネクタイで締まる首元を両手で掴み苦しむ進。

 そのままカウンターの方まで進を引きずると、咲はぱっと手を離して解放した。


「はぁ……はぁ……し、死ぬかと思った……」


 進は顔を真っ赤にし、深呼吸をして不足した酸素を大きく吸い込む。


「ガヤがお邪魔してごめんなさいね。光希くん、続けてちょうだい」

「えっと……は、はい。ありがとうございます……」


 この人は怒らせちゃいけない人なんだなぁ……と、光希は改めて痛感した。

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