決意
「今の声って……」
朔はじっと俺を見ていた。純那も固まっている。だが、一番驚いていたのは自分自身だった。
「あ、あれ? 今の、誰の声だ?」
本当は分かっている。自分の声だって事。でも信じられない。今までずっと出なかったのに。どんな方法を試しても駄目だったのに。
「進、声戻ったのか?」
朔の手が俺の肩に触れる。
「みたい…だな」
不思議な感じだ。いつの間にか、声が出ないことに慣れてしまっていたのかもしれない。
「せ、先生に連絡します!」
「待って!!」
俺は純那の前に立った。
「何ですか?」
純那が俺に問う。
「どうして放送部辞めちゃうの?」
「辞めたいと言っただけです。辞めるかはまだ分かりません」
純那はそう言い、俺を見つめた。
「進さんが秋の放送コンテストに参加するなら辞めません」
「え、俺が?」
「おい、無茶言うなよ。進は声が戻ったばっかなんだぞ?」
朔が割って入った。
「戻ったならできるじゃないですか。確か応募締切は一週間後だったはずです。どうしますか? 進さん」
俺にできるだろうか。放送コンテストなんて。
いや、挑戦するべきなのではないのだろうか。純那に放送部を続けてもらうために。そして、自分に勝つめに。
「いいよ。放送コンテスト、参加する」