題目
診察が終わり待合室へ戻ると、朔が診察前と全く同じ所に座っていた。
俺は朔の方へ歩く。
朔は隣に座っている人と会話中だった。
「あ、進さん!」
隣に座っていたのは純那だった。
「診察、お疲れ様です」
『ありがとう』
いつもの様にノートを見せ、笑顔を向けた。
「あのさ、3人で色々話したいし、場所変えないか?」
朔の提案で、病院から徒歩5分にあるカフェへ行くことにした。
「そう言えば、純那ちゃん部活頑張ってる?」
「はい。頑張ってますよ」
「部長は皆の事まとめないといけねーし大変だよな」
「そうですね」
純那の表情が少し曇るのを、俺は見逃さなかった。話題を部長の事から離そう。
『そう言えば、そろそろ秋の放送コンテストの題目が発表される頃だね。今年はどんな題なの?』
「え、放送コンテストですか? 確か、大切な人へ向けてのお手紙でしたっけ?」
純那の声は明るいが、やはり表情は暗いままだ。
「へぇ~ 大切な人ね。純那ちゃんは誰にするの?」
「まだ決まってません。というか、関係ないかなーって」
「関係ない?」
「はい。私、放送部辞めたいんです」
え、どうして? 何があったんだ?
「ごめんなさい」
「辞めちゃ駄目だよ!」
純那の言葉は、俺にとって強い衝撃だった。