朗報
「次は絶対に勝つからな!」
「いや、お前は俺には勝てないよ」
「あぁ、そうだな。だって俺は……」
智樹の姿が遠くなる。必死に手を伸ばすが、伸ばせば伸ばすほど遠ざかっていく。
「待ってくれ智樹! 行くなぁぁぁ!」
叫ぶ声が何かの雑音でかき消された。
「!?」
そこで目が覚めた。周りをゆっくり見渡すと、殺風景ないつもと変わらぬ病室だった。何故俺は一人部屋になってしまったのだろう。少し寂しい。
「目、覚めたのか」
ガラリと戸が空き、朔が入って来た。朔の細い手には、濡れたタオルがのっていた。
「すごい汗だから拭いてやろうと思ってな。」
『ありがとう。でも起きたことだし、自分で拭くよ』
ノートに書き、朔からタオルを受け取った。冷たいタオルがとても気持ち良かった。
「あのさ、お前が全部背負う事ないと思うぜ?」
朔は窓を見つめたまま言った。
「俺はお前に色々感謝してんだ。だから少しは俺を頼ってくれよ」
朔の茶色い髪が静かに揺れる。一体、俺が何をしたのだろう。感謝しているのはこっち側なのに。
――トントン――
ドアをノックする音が聞こえた。
「失礼します」
純那がちょこんと顔を覗かせた。
「え、この子って」
朔が俺を見る。俺はノートに書きこの前の事を説明した。ついでに純那にいらっしゃいと伝える。
「あの、今日は報告が」
純那は、もじもじと身体を揺らした。
『どうしたの?』
俺は聞いた。
「わ、私、放送部の部長になったんです!」
純那は満面の笑みを浮かべて言った。
「おぉ! おめでとう」
俺より先に朔が口を開けた。
『おめでとう』
朔に続いて俺も言う。
「ありがとうございます」
『相談があったら、いつでも来てね』
俺のノートを見て、朔は疑問に思った。
「二人はさ、お互いの連絡先持ってんの?」
「いえ、まだです」
「じゃあさ、今交換しようぜ」
という事で、俺と純那は連絡先を交換した。ちゃっかり朔も……