記憶
高校二年の夏。放送コンテスト決勝戦。ここで勝てば、俺は二連覇達成となる。そしてあいつに言ってやるんだ。やっぱり俺には勝てなかったなと。
あれ? なぜあいつはいない? 俺とあいつだけが、この場に並ぶはずなのに。
違う、いるはずがないんだ。だってあいつは、、、
高校二年の夏。俺は声を失った。いや、声が出なくなったと言うべきか。原因は明確。それは友達の死。交通事故だった。
「進、次は絶対に勝つからな!」
今でもあの言葉が鮮明に蘇る。
智樹と俺は、中学生の時に初めて知り合った。教室の席が前後だった為、仲が良くなるのに時間は掛からなかった。放送部に誘ってくれたのも智樹だ。中学生と高校生が参加資格であるコンテストで、俺らは高成績をおさめた。友達として放送部員として、二人は力を高め合っていった。
高校は別々になり、あまり会うこともなくなった。二人を繋ぐものといったら、お互いが放送部に入ったということ。そして去年俺はコンテストで優勝し、あいつが準優勝になった。
高校に入ってからも良きライバルでいられることに、俺は嬉しさを感じた。だから、あいつの悲報には言葉を失った。あいつはゾッとするほど冷たい身体で穏やかな顔をしていた。泣くわけでも叫ぶわけでもなく、ただ呆然とすることしかできなかった。今年の大会の一週間前の出来事だ。