表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/30

第五話 『校門の 美女はかぐやで ひと騒動』

□◆□◆



 靴を履き替えた俺たちが外へ出ると、校門に人だかりができていた。

 マルの言った通り、洋服を着た髪の長い女性が誰かを待っているようだ。うつむいているので顔はよくわからないが、確かに美女という言葉が当てはまる雰囲気がある。

 近寄り難いのか、人だかりはその女性を遠巻きに見ているようだ。


 顔を上げた女性がこちらを向く。そして待ち人かを確認するように目を細めた次の瞬間、パッと彼女の顔が明るくなって大きく手を振った。


「康平ではないか。やっと出てきたか、待ちわびたぞ」


 聞き覚えのあるその声に、俺の頬がヒクついた。


「か、かぐや!?」


 髪やスカートをなびかせて走ってくるかぐやの姿に、俺は驚きの声を出した。

 服の名前なんてよく知らないが、そのセンスの良い洋服は母親が用意したのだろう。着物姿が強く残っていた俺には、声を聞くまで誰なのかわからなかったのだ。


「あれ? 康平くんの知り合いなの?」


「ほう、並ならぬ美女ではないか。只野もなかなかやるな」


 みのりがキョトンとした顔をし、京太郎は腕を組んで感心する。


「え? 誰? あのきれいな人って……誰なの?」


 雫はなにやら混乱し、マルは――


「康平! 誰なんだよあの美女は! 俺に紹介しろっ!」


 鼻息荒く、俺の胸を掴み上げる。


「く、苦しい~……。マル、とにかく落ち着け……」


 息苦しい俺の元に到着したかぐやが、マルの肩に手を置いた。


「おい丸太。私の従者になにをしておる――」


「え? いや、俺はマルタじゃなくて丸也って言うんだけど……」


 振り向いたマルから手を離すと、かぐやは指をクイッと上に向ける。すると――


「うわっ、うわ! うわわわっ!」


 突然、マルの身体が宙に浮いた。

 予想外の出来事に、マルは宙で手足をバタつかせる。


「よせかぐや! こいつは俺の友人だ、頼むから下ろしてやってくれ!」


 驚きよりも先に、昨日の夜に絡んできた二人組みを思い出した俺はかぐやを止めた。このままではマルも吹っ飛ばされてしまうと思ったのだ。


「友人? そうか、それは私の早とちりであった」


 厳しい目つきがやわらかくなり、かぐやはマルをそっと下ろす。


「ぶは~。ビックリした~」


 手足を地面につけるマルが大きな息を吐いた次の瞬間、周りから大きな歓声が上がった。


「ん? なんじゃ?」


 周りを見回すかぐや。

 俺にも何の歓声かわからないが、それを見ていた多くの生徒たちが彼女に大きな拍手を送っている。


「すげぇぞ! いいもの見せてもらった!」

「こんな間近でイリュージョン見たのは初めてだ!」


 ……なるほどね。かぐやをマジシャンかなにかだと思っているわけだ。


「どうもありがとうございました! これでショーはお開きデース!」


 俺は観客たちにそう伝えると、素早くかぐやの手を取ってそそくさとこの場を立ち去る。


「なんじゃ? これ康平、いったいどうしたというのだ?」


「いいから黙ってついて来い」


 投げかけてくるかぐやの疑問には答えず、俺は彼女の手を引いて校門を抜けていった――。



□◆□◆

 読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ