第7話 影
10分くらい経っただろうか、探偵たちは歩みを止めずに進んでいる。
真美子はハクの後ろを歩いているが、よく気づかれないなと半ば感嘆していた。
正直、彼の足元から音が全く聞こえなかった。
追跡が得意なのだろうか。
────でも、なんでわざわざ跡なんか‥‥
いっそ合流すればいいのに、何故そうしないのか彼女は首を傾げた。
────私はここにいるんだから‥‥犯人の狙いは私だよね?
そこでまてよ、と彼女は前方の優子を見つめた。
────もしかして狙われてるのは私じゃなくて‥‥
冷や汗が浮かぶ。
「あの、聞きたいことがあるんですが‥‥」
彼女はすぐ前を歩くハクの手を掴んだ。チラッと彼は振り返った。
ハクは真美子の顔をみて少し目を大きく開いた。
「あれを見てみろ」
少しの沈黙の後、彼は顎で優子の方を示した。
真美子は優子を見るが、よくわからないと首を振る。
「影だ」
そう言われ今度は優子の影を見た。優子の足元の影は光に当てられユラユラと揺れ、長い影を作っている。
────光?
そこで真美子は気づいた。
光はユラユラと揺れる炎ではなく、ただのペンライトなのだ。影が揺れるはずがない。
探偵の影を見ると全く揺れておらず、ただ長い影があるだけだった。
────な、なにこれ‥‥?
「さあな。だが優子という人物はただの人ではないんだろう」
声に出ていたのか、ハクが疑問に応えるように口を開いた。
「そ、そんな優子は私の幼馴染で────」
言いかけて突然頭に痛みが走った。その場にしゃがみ込む。
「どうした?」
ハクが側まで来た。
真美子は頭を抑える呻くように大丈夫だと言うものの、ズキズキと痛む頭に汗が流れた。
と、彼が何か確認するように辺りを見渡すと、しゃがんで背中を見せた。
「このままじゃ見失う、おぶされ」
よく回らない頭で彼女は頷き、彼に身を任せた。
彼女は昔の事を思い出そうとしてもその度に頭が痛くなり何も考えられなくなった。
なぜこうもいろんなことを思い出せないのか彼女にもわからず、とにかく痛みが引くようにただ全方を見つめていた。
────この人は何を知ってるんだろう‥‥
ぼんやりと考えているうちに身体の揺れが止まった。
「そろそろ歩けるか?」
真美子の頭はだいぶ痛みが引き、じっとしていれば何も感じないみたいだった。
そんな彼女の様子を見てハクは降りやすいようにしゃがんだ。
真美子はハクから降りると優子たちを探した。
全方には二手に分かれた洞窟があり、その中央に交互にライトを照らす探偵と俯いた優子がいた。
ふと囁き声が聞こえ、ハクを見ると、彼が耳に手を当て何か呟いている。
何をしているのか聞こうとしたとき優子たちが動き、分かれ道を右に進み出した。
ついて行こうと足を前に出すが、後ろ手を掴まれ、バランスを崩して倒れそうになる。
危うく転びそうになり、文句を言おうと振り返ったが、優子たちとは反対方向へ彼が歩き出した。
「え、なんでそっちに?」
慌てて聞くが、どんどん進んでいき、やがて闇へ消えていってしまう。
────暗い!
一人残された真美子はハクが進んでいった方へ駆け足で追いかけた。
────外に出たい
手探りで進んでは行くものの、足元がやたら危なっかしい。
────まだ外は雨が降っているのかな?
恐怖を紛らわそうと外の事を考える。
────早く終わらないかな‥‥優子は‥‥一体
考え始めたところで頭を振る。考えてはダメなのだ、そう言い聞かせるように。
「そろそろお前にバラしておくべきかな」
不意に目の前から声がした。真美子は顔を上げるが何も見えない。
「バラすって‥‥何を?」
────嫌な予感がする




