第67話 庭にて
庭から直接繋がるドアから中へ戻ると、ミナがニヤつきながら窓の外を眺めていた。いつからそこにいたのか、最初からいたのか。
二つの走る音が背後から聞こえ、断続的にネコの悲鳴が聞こえる。
「見てたのか」
ハクは三角巾を再び頭に巻いた。
「ふむ、一興であったぞ」
「止めてくれてもよかったんだがな」
ハクが冷たく目を細めるとミナは高笑いした。
「ふふ、まさか。面白くない」
「お前な……」
彼女がそういう性格だとわかってはいたが、改めて確認するとため息が出る。
『他人の不幸は蜜の味』とはよく言ったものだ。
「それにしてもやつは案外弱いな」
窓から様子を伺いながらミナが言う。常人からみたらあの体格に筋力、とても弱いとは言えないが、ガードマンの視点からはありふれたものだ。特別性も見られなかった。
「いや、あの体格で体術とか覚えてほしくはない」
それでもハクはそう言った。
「ふむ……、今回はやつは使えそうにない。私たちだけでやるか」
彼はその発言で彼女の方を向いた。手を顎につけて何か考えているようだ。
「目処はついたのか?」
そう話しかけても彼女は反応せず、ハクはネコとアレキサンダーのやり取りに顔を向けた。
ネコは変身能力で猫の小さいサイズになり、大男の手からすり抜けた。大男は驚いてはいたが、ネコのバカにしたような煽りにまた追いかけ出す。ヨシキは地面で笑い転げていた。
「今、目処がついた」
不意にミナが顔を上げて先程の質問に答えた。
「これ以上は待てん、準備は整っているか?」
この発言がそろそろくるかと思っていたハクは頷いた。彼女のこういう言葉はいつも突発だ。だからいつでも準備はしておかなければならない。
「いつでも」
「今夜、行動開始する」
ミナはニヤリと笑った。それが、ようやく作戦が決行されるものからなのか、ネコがまたアレキサンダーに捕まった面白さからなのかはわからなかった。
ネコがまた悲鳴を上げる。




