第66話 庭にて大男
アレキサンダーは起き上がり、荒い息を整えた。
「どうだ、組手でも?」
「……は?」
────組手?こいつ……
アレキサンダーは筋骨隆々で体格がいい。武術でも獲得していればとても歯が立たないだろう。加えてハクは体重も軽く、体格差があり過ぎた。
「いやいや、遠慮しとく」
手を振るが、目の前の大男は上半身の服を脱いだ。汗の垂れる肉体が露わになる。
大男は目の前で拳を構えた。ステップを踏む、ボクシングの構えだ。
────いやいや、勘弁っ!?
口に出そうとした時に拳が飛んで来た。
間一髪で頭を斜め下にして避ける。次が来る前にそのまま地面を蹴って離脱。
「さすがだな、やはり思い違いじゃないみたいだな」
そう言って前傾姿勢で突進して来る。
ハクは舌打ちし、前に出た。
接触する時に大男が前足、中段蹴りを繰り出す。
────ボクシングじゃないのか!
慌てて身をひねって避け、回転して踵で地面についている方の相手の足首を払った。
アレキサンダーは地面に背中から倒れるが、すぐに起き上がった。
構えなおすが激しく咳き込む。
どうやら受け身が出来なかったらしい。
────?
ハクは違和感を感じ、確認のために自分から動いた。
大男は左拳で細かい乱打を打つも、容易く掻い潜られて間合いに入られ、攻撃を防ぐために右手を眼前に持ってくる。
だがハクは相手の身体を引き寄せて地面に引き倒そうと左腕を掴んだ。
そうとわかりその場で踏ん張るアレキサンダー。
が、気がつけば彼はまた背中から倒れていた。
激しく咳き込む。
「ふぅ……おわりな」
ハクは飛んでしまった三角巾を拾ってポケットにしまった。
────アレキサンダーは特に武術とかを会得しているわけじゃない
大男は見よう見真似でやっているのだろう。
彼はハクが背負い投げと見せかけて、相手の足首の裏を内側を払うという簡単な引っ掛けにかかってしまっていた。
「うわ、スゴイいでござったな!」
「ケッ!」
いつからいたのか、ヨシキとネコが座って観戦していたようだ。
「さすがボディーガードだな。手も足も出ない、またお願いする」
「ん、いやもう勘弁な」
ハクは頭をかいて答える。
「管理人サンはボディーガードでござったのか?」
「は?どうせ中級程度だろ?」
管理人がボディーガードと聞いて外野の二人が声を上げた。
「悪かったな中級程度で」
「あ、まじぃ?それはすまなかったー、ははははは!」
ここぞとばかりにネコが大笑いしだした。
「ほお、それは俺に対する挑戦と受け取っていいのか?」
すかさずアレキサンダーが睨んだ。ビクリと身体を揺らすネコ。
「い、いやぁま、まあすげ~んじゃねぇの?うん」
「最高にカッコ悪いでござるなネコ殿」
このやりとりで終わるかとハクは思ったが、アレキサンダーは両手を広げて突進した。
乾いた悲鳴を上げてネコが逃げるが、反応が遅れて今にも捕まりそうだ。
ハクは彼が大男に捕まるのを見届けてからその場を後にした。
「疲れた……」




