第65話 庭にて
あれから3日────
ミナからは特に指示はなし。ボディーガードの依頼もなく、ハクはいつもどうり玄関から掃除していた。
「よう、管理人」
「どうもでござル」
しゃがんでゴミを取っていると頭上から声がした。見上げると日本被りと猫被りが見下ろしていた。
「…ああ」
それだけ言うと作業に戻る。
「おいおいそれだけかよ。ちっ、愛想悪!」
「まあまあネコどの、管理人さんも忙しいでゴざるよ。ほらつくねちゃんのとこでも行くでござル」
「やだね」
そう言ってタバコを取り出して火を付ける。
「だってあいつ、なんか力強いもん」
ネコは顎を突き出して煙を吹いた。
────あのガキが猫好きだからか
ハクはゴミを集め終えるとアパートのゴミ捨て場へと向かった。
「あれ管理人サンどこに行くんですか?」
嫌な予感がして足早に歩くが、二人は付いてきた。
────ゴミを捨てに行くだけなんだが
「お前らは何か仕事はないのか?」
付きまとわれるのが嫌で足を止めた。
「拙者は今日は休みで暇でござル。特にみたいアニメとかもないし」
日本被れのヨシキは答えるが、ネコはたじろいだ。
「い、いやぁ~。今日はあれだなぁ、天気いいわ」
空を仰いで誤魔化そうとする。ハクはため息をついた。ネコのほうは無職のようだ。彼が住み着いてからどこか外へ出かける姿すら見たことがなかった。
「要するに暇人なんだな」
「るせ!俺だってなぁ仕事ほしいんだよ」
「そ、そうでござったか。して、どうやって暮してテイルでごさるか?」
「あん?前の金がまだ残ってるからな……もう二ヶ月は持つか?」
「なるほどフリーターでござったカ」
ハクは二人が話している間にスタスタと歩いていった。
アパートには扇形の庭があり、ゴミ捨て場はその庭の端にある。焼却炉も一応ついているが、目立つためまだ使ったことはない。
集めたゴミを焼却炉の側のゴミ溜め用のスペースに放り込んだ。
ゴミはある程度集めて溜めておけば収集車が勝手に取って行ってくれるのだ。
アパートに戻ろうとすると庭の真ん中で腕立て伏せをする大男のアレキサンダーが目に入った。
ここに来てから毎日欠かさずにやっていることで、ハクが近づくとやりながら顔を上げた。
「125、126、127、管理人か128、仕事は終わったのか?129、待っててくれ200で130、終わる!131…」
言いながら早口で喋るためにひどく聞き取りづらい。
彼とは出会ってから一週間が過ぎる。
あれから彼にはなにも聞いていない。おそらくは『手』という組織について何か知っているだろうが、ハクには聞く気はなかった。
────面倒事になっても困るし
とは思いつつ、すでにミナがやる気満々なので何とも言えない。
「いや、もっとやっててくれて構わない。特に用はないから」
聞くにしても時期じゃないのだろう。今のところ他の住民とも問題がなさそうだった。
ハクはやることを終えると向きを変えて戻ろうとしたが
「まってくれ、管理人」
呼び止められた。




