第63話 錆⑥
「いやぁ、なかなかだったよ……」
円形のアパートがあるだろう場所から少し離れたビルに座り、上から見下ろす赤錆連也。全くアパートの痕跡がない。
────なにかの力が働いているな……
「さて、どうしようかな」
彼はため息をついた。実は大事な交渉中だったのだが"友人"のハクから呼び出しを食らい、駆けつけてみればどうだろう。例の『半吸血鬼』がいたのだ。
とある件で必要な血の鬼である『血鬼』を探しあてていた連也はミナという女性はどうでもよかったのだが、今回の事で少し興味が湧いていた。
────半吸血鬼にSS級ボディーガード、そしてハクちゃんね……
にやりと彼は口端を歪め、手を握ったりする。血が騒ぐのだ。
────楽しくなってきた
連也は自分の掌を出して数え始める。
────ハクちゃんに、桜ちゃんに、半吸血鬼、妙な被り物に子供一人。大男とあいつに……あとは
ハクたちのアパートの住人のメンバーを予想する。住人のメンバーはあいさつしかしてないが、廊下で3人に出会っていた。
残りの一人はもし万が一のことを考えると傷の手当てが出来る者の可能性が高い。それにハクの胸元からチラリと包帯が見えたのだ。
────あとは医者かな?
「まあ今は様子見かな」
少し涼んでようやっと立ち上がると後ろに気配を感じた。
「5番かい?よくここがわかったね」
「ようやく見つけましたよ」
『5番』と呼ばれた人物は背が連也と同じくらいで、金色の短髪をしており、腰に細い剣を隠すように帯びていた。茶色のローブを羽織っているが汗だくだ。
必死に辺りを探したのだろう。
「いきなりいなくなるんですから」
「あはは、ごめんごめん、急用だったんだ」
5番という青年はため息をつき、携帯を取り出すと何処かに掛け始めた。一言二言会話すると携帯を下げる。
すると連也の方の携帯に電話が掛かって来た。
「あーもしもし?」
「……どうなっているのかね?」
電話の奥から野太い声が響く。途中で抜け出してきた交渉相手だ。
────面倒臭いなぁ
まだ交渉は出来ると彼は言い交渉を開始した。




