第59話 錆②
ミナは私室には居らず、大広間でテレビを見ていた。側には桜もいる。
「む、なんだ早いお目覚めだな」
ハクが入るのに気づいてミナが言った。
お互い様だと答え、長テーブルの上にある地図が目に入った。
「ん?それは……」
地図には8箇所の×印がしてあり、線で結ばれて、文字が浮かんでいる。『手』という文字だ。
「ふむ、今回の事件のものだ」
彼の視線に気づいたミナ。続いてテレビを見るように指を差した。
『────えー、依然殺人鬼は捕まって居ません。しかしSSPらは姿のみは確認しできた模様。こちらが新たな人相図になります』
と、ニュースが流れており男性キャスターは画面端から薄い版を取り出して置いた。
ハクはてっきりアレキサンダーが出てくるかと思っていた、しかし実際出てきたのは全く違った。
人相図は真ん中に真っ黒な人影、片目だけが赤く光り、手には西洋風の剣を握っている。
全体の輪郭はふわふわとしていて、何かを羽織っているようにも見えた。
「あなたにそっくりですね」
後ろから桜の声が聞こえ、その瞬間背筋に悪寒が走った。
「ま、まさかぁ」
ハクが動揺するとミナが声を上げて笑った。
「確かにな!確かに似てる」
────似てるって、こんな目がギラギラしてたか?
不安になって顔を触るハク。
────だが、妙だな
映像はもう流れてしまったが、人相図にあった剣に彼は違和感を感じた。
人物自体はふわふわと適当な感じだったのに対し、剣はやたら明確に描かれていた。
「おい、ミナ、さっきの絵だが……」
ハクが疑問を口にしようと彼女のほうを向いたが、召使いと悪口を言っている。
「暗いところが特にそっくりですね」
「そうだな、周りの背景ともあってたな。あれは確実にハクだ」
「そもそも見つかるとは、とんだバカです」
「まったくだ……とまあ、冗談はさて置き」
ハクの冷ややかな視線を感じたのか、ミナが手を叩いた。
「おそらくあれが、今回の主犯だろうな」
目の前の地図に目を落として言った。
「やたら剣が目立ってたな」
ここで先ほどの疑問を口にする。
彼女は頷いて続けた。
「さっきのニュースで流れてたが、今回犠牲者は出ていない。まあ言い換えれば本来8人目の出るべき死者が出ていないということだ」
「SSPが退けたんでしょうか?」
召使いが横から言う。
「わからぬ。奴らが退けたのか、はたまた、私たちも少し騒動を起こしたからな。逃げたのかもしれん」
「じゃあ、もうあの場所には来ないのでしょうか?」
桜が首を傾げて聞くが、ハクはわかっていた。
────こういう事をする奴が、途中で諦めるとは考えられない
「愉快犯はまた来るだろ。最後の8人目を殺しに」
ハクは声に出して言った。桜が眉間にシワを寄せる。
「しかしここにはSSPも厳重に警備されているのでは?」
「ふむ、私もまた来るとは思う」
なおも聞こうとする召使いを手で制し、首を振った。
「今はまだ何もわからぬ。材料が足らんのだ」
ミナは地図を指でコツコツ叩き、顎を撫でた。
しばらく沈黙が辺りを支配する。
ハクは頭をかいた。ミナたちはまだ事件を追うつもりだろうか。
「ミナ、これからどうする?」
呼ばれて顔を上げ、首を傾げた。
「そうだな、とりあえず情報を集めないとな」
そして少し間を開けて言った。
「妖武器の気配がするのだ」
────妖武器か
ミナとハクは妖武器を集める事を今まで目的にして来た。
ようはお宝探しみたいなものだ。
ミナは謎が大好きなようで、とりわけ謎の多い妖武器を欲しがった。
そのうちの一つをハクが持っているが彼自身もよくわかっていない。
今回もそれがあるということは彼女は最後までやめないだろう。
「まあ、任せる」
面倒臭い事はミナに任せようと広間から出ようとするが、呼び止められた。
「そういえば、ここら辺で聞いた話なんだがな」
「ん?」
「何やら情報屋がいるらしいのだ」
────情報屋……
聞いて眉を寄せる。情報屋と聞いて思い浮かぶ人物が2人浮かぶ。そして常時連絡の着きそうな相手といえば……。
彼は桜の方を見た。彼の知る情報屋のことを知ってるのは桜ぐらいのものだ。視線に気づいた彼女は首を傾げた。
────いや、口止めなんかしてはないが……
「ふむ、知ってるようだな」
様子を見て察したのかニヤリと笑うミナ。
ハクはため息をついた。




