第55 挟撃
ハクが走り始めて約1分。後ろを見るとまだ少女が追ってきていた。
相当足が早い。
ハク自身、自分の足の速さには自信があり、あまり追いつかれたことはない。
足の速さ、超能力か何かかとハクは考え、故意に複雑な路地に入ってジグザグに進んだ。
直線が長いところに出たときにやや速度を緩め、後ろを振り返る。
────いない
彼は少女が来てないことを確認すると再び走り始めた。
が、脇の路地道から突然少女が飛び出して来た。
捕まえんと両手を広げて突っ込んで来る。
「捕まえたぁああ!」
ハクは驚いたものの身を屈めて彼女の脇を掻い潜り、回避した。
捕え損ねた少女は地面に滑るように倒れる。
ハクは呻く少女を一瞥し、逃げるように足を動かした。
────なんかあるなあいつ
走りながら疑問に思うが、今は明らかにする時ではない。振り払うように頭を軽く振ると前を向いた。
少し進むと路地の突き当たりの曲がり角に人影が微かに見えた。
大きさ的に先程の少女ではない。そして動かないところを見るとこちらの気配に気づいている可能性がある。
彼は走りながら腰にさしていた木刀を右手に握らせた。
曲がり角のところで振りかぶった時、相手も飛び出して来た。最初に目についたのは大型の銃。続いて頭一つ分高く、筋肉隆々な巨体。
ハクは相手のこめかみに寸前のところで武器を止め、同時に銃口が向けられる。
「貴様、このご時世に木刀とは何事だ!」
────……それをお前が言うか?
頭の中で言いながら相手を観察する。無造作な金髪に鋭い目、間違いなく例の殺人鬼の人相だ。
「こっちだ、こっちに逃げて行ったぞ!」
野太い男の声が大男の遠く離れた後ろから聞こえた。それにチラリと殺人鬼が目を向ける。
どうやら相手の追手らしい。そしてハクの追手もそこまで来ているはずだ。
────挟み撃ちか
彼らはそれぞれ武器を下ろした。互いに危機なのがわかったからだ。
ハクは辺りを見渡し抜けられそうなところはないかと探したが、路地の塀が高く登れそうもなく、破壊できそうな威力のある武器もない。
だんだん追手の声と足音が近くなってくる。
────万事休すだな……
ハクは戦う覚悟を決めてもう片方の手にも木刀を構えた。




