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暗い夜に踊る  作者: ビシン
鉄編
54/70

第54話 切り裂き魔とSSP

時刻はおよそ深夜の1時の路地裏────


辺りはすっかり暗く、まして細い路地なんかには人気は皆無だ。


ハクは黒いロングコートを着ており、腰のベルトに挟めてあった仮面を取り出して付けた。顔を見られないようにだ。


武器は靴に隠しナイフが3本ずつの6本、両腰に木刀もとい妖刀。


「なんだその仮面?それをかっこいいとか思ってるお前は地下に永久保存だな」


後ろにいるネコが覗き込むように顔を覗かせる。


「別に、これは仕方なくつけるだけで────クソネコと違って。ちゃんと意味があるものだ────クソネコを除いてな」


「あんだとてめぇ!」


ハクが言い返すと煙を吹き出しそうなほど顔を真っ赤にした。


カランっ


しかし突然の物音にネコはビクリと飛び上がり、ハクの後ろに隠れた。


「……」


「な、なんだ。ゴミか」


近くのゴミ捨て場の空き缶が風に吹かれて動いただけで、特に何も無い。


「それにしても、なんでこんなことに……」


後ろから悲痛な声が聞こえてくる。


「ネコ、静かにしろ」


ネコは何故か同行させられていた。ミナ曰く、彼も顔を隠しているかららしい。


要するに悪行をしたとしてバレる心配が無い、ということだろう。


「てめぇ、よく落ち着いてられるな。殺人鬼だぞ!?」


────確かに仲間に入れるというのは気が乗らないが……


「無視かよ、意味わかんねぇよ、なんで姉さん俺を、俺をー……!?」


ハクは見張っていた路地に人影を発見し、ネコの口を手で塞いだ。もっとも塞いだのは着ぐるみの口だが。


「SSPのやつらか」


────数は2人


彼は僅かに顔を覗かせ、視線を動かして人数を確認し、手の内にナイフを仕込む。


少しして相手が近づいてきた、まだハクたちには気づいていないが、時間の問題だろう。


数mまで来たときに、一人が携帯を取り出した。その時に明かりが漏れ、姿がわかる。


一人は白いスーツを着ていて、金髪のオールバック、目付きは鋭く、腕には黒い腕章を付けている


────SSPのリーダー、二ノ宮ジンクメルだ。


もう一人はシャツにネクタイ、スカートを着ていて女性だとわかる。髪はそこまで長くなく、眼鏡をかけている。


と、ネコが静かになったのに気づき手を離した。


「う、うお、まじでSSPかよ」


彼らを見て目を丸くするネコ。


「なんでこんなところに」


「大方殺人鬼だろうな。やつらも嗅ぎつけたんだ。奴らに見つからずに先に見つけないとな」


ハクたちも殺人鬼の足取りを掴んでいた。ミナによると殺人鬼の犯行経路は地図上である文字をなぞっているらしく、それは<手>という漢字らしい。


単純だが、SSPもいるということはいよいよ潜んでいる可能性が濃くなって来た。


「そういや殺人鬼って例の<切り裂き魔>とは違うのか?」


不意にネコが質問する。


<切り裂き魔>というのは最近巷を騒がせている愉快犯だ。


人は殺さずに切り傷を負わせて立ち去る、よくわからない事件。目撃談はあるが、被害者も確保できていないために謎に包まれている。


ハクもどうやら容姿や行動が似ているのか、そのせいでSSPに追われている身でもある。


「違うだろう。切り裂き魔は人を殺してない」


「あ、そうか。でもここら辺も出るって噂だぜ?全身黒ずくめのナイフを持った────」


そこでネコの言葉が途切れた。ハクが気になってチラリと振り返るとこちらを凝視していた。


「お前、お、切り裂き魔……?」


「!」


どうやらネコも勘違いしたらしく、後ずさった。


「ちょっ、待て、勘違い────」


「う、おあああ!!」


「誰だ!」


────しまった!


ネコの叫ぶ声でSSPに気づかれたようだ。


「うあああああ!」


彼らが来たことでまたネコが叫び声を上げる。


ハクは喚くネコの頭を掴み、壁に叩き付けた。鈍い音の後に地面に倒れぐったりとなる。


「……また会ったな、切り裂き魔」


ジンクメル、通称『ジン』が銃を構えながら言った。


何も言わず動かす、じっと見つめるハク。


「こちら一班、切り裂き魔です。至急応援願います」


もう一人の少女が無線機を取り出して、仲間に伝えたのが微かに聞こえた。このままじっと睨んでいても時間の問題だろう。


────くそ、まただよ……クソネコのせいで


と、足下の着ぐるみにちらっと目をやると、薄目を開けて気絶したふりをしているのが目視できた。


壁に叩き付けた時、グニャリとする感触のマスクのおかげで気絶には至らなかったらしい。


ハクはそこで頭に閃き、敵にまた目を向けた。


────こいつら、ネコを一般人だと勘違いしててくれたらいいが


ハクはナイフを手の内で確かめるように転がし、注意深く見つめた。


ジンの気が逸れるのを待っているのだ。


彼には超能力があり、何でも凍らせる力、いわゆるフリーズ能力がある。実際手合わせをしているハクはその力をその目で見ていた。


ガガッ────


敵の無線が入り、後ろの娘が対応し、何かジンに伝えたようだ。彼の口が僅かに開く。


その瞬間だ。


ハクは素早くナイフを投げつけ、敵の腕から銃を弾き飛ばした。


「ッつ!?」


ジンは驚きつつも、冷静に銃の存在を頭から消し、即座に自分の能力を発生させようと左手に冷気を集める。


「ジン!」


少女が警告の声を上げ、彼は我に返った。


ハクは地面に転がったネコを首元に腕を回して支え、ナイフを突き付けていた。


「一般人が……」


「クソっ」


予想通り、SSPらはこちらへの攻撃をやめた。


────さて、ここからどうするか


ジンは攻撃はしては来ないが、いつでも対応できるように手に冷気を溜めている。


少しの間睨み合いが続いた。


ネコからは着ぐるみのせいか、汗が大量に出ており、支えているハクにとっては気持ちが悪い。


ガガッ────


また無線が入る。


『ジン、こちら第2班、殺人鬼らしき人物を発見!そこから北に400mのところです!ただ今追跡中』


「ッ!!」


殺人鬼が現れた。一刻も早く見つけ出さなければならない、SSPよりも早く。


気持ちは焦るが、ジンは依然動かずにいる。


────北って、どこだ?


と、ジンがチラリと方向を確認するように目を動かした。


その方向が北であるとハクは直感し、ネコを肩に背負うように担ぎ、そのままSSP共の方へ放り投げた。


ジンと少女は突然の事に対応できず、ジンにネコが被さるように衝突した。


「ジン!」


「かまうな、追え!」


少女に命令するSSPリーダー。しかし彼女がハクに目を戻した時にはすでに豆粒だった。

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