第53話 殺人鬼?
東京都内のどこかにある円形のアパート。
管理人のハクは朝早くからいつもの作業服を着、三角巾を頭に巻いて玄関周りを掃除していた。
────ポストも異常なし、玄関も異常ないか
円形のアパートは何故か人が寄ってこない。原理は説明されていないが大家であるミナはそう言っていた。だからといって全く誰も来ないとは限らない。
住人への危険物の有無を確かめるのも日課であった。
玄関が終わり廊下を掃除していた時、ふと目の前にタバコが落ちてきた。しゃがんでいたハクが見上げるとネコが見下ろしていた。
「あ、ごめーん☆落としちゃった────きちんと拾えよ?」
「……」
────こいつ
ハクは眉間に皺を寄せてタバコを拾うと着ぐるみの胸ぐらを掴んだ。
「ちょちょちょっ!ジョーダン!ジョーダンって」
「あ、二人ともお嬢様が探してましたよ」
「あ!メイドさん!」
ネコがマスクの目の隙間からタバコを刺されそうになっていた時、桜が通りかかった。掴む手が緩んだ隙にするりと抜け出すネコ。
「それで、話って?」
彼はキリリと顔を整えて壁に手をついて言った。
「ホールで待ってるそうです。私は雑事がありますので済ませてから行きます」
首を傾げながらも桜は去っていった。
「はぁ……」
ハクはため息をつき、こっそりと逃げ出そうとするネコの襟首を引っ掴んで引きずって行った。
「あ、姉さんこんにちは」
ネコはミナのことを姉さん(あねさん)と呼んでいる。
ホールに入った彼らに気づき、テレビを見ていたミナは振り返った。
「ちょうど良かった。今面白いニュースをやっててな」
部屋は大きな広間で、真ん中には白いテーブルクロスの敷いてある長方形の長テーブル、天井にはシャンデリア、と、豪華な造りをしている。
「毎度ちょっと配置変わるな何だこの部屋。貴族かよ」
ふと彼はテレビが置いてあるのに気づいた。風変わりな広間には似合わない物だ。
コード同士がからまっており、即席に設置したような感じを受ける。
ミナは立ち止まっている二人を近くまで来るよう手招きした。
テレビの内容が分かるところで二人は立ち止まった。いや内容を聞いて思わず止めたの方が正しい。
『えー、現在逃走中の連続殺人犯の人相が割り出されたそうです』
とあるニュースの内容が聞こえてくる。
数日前から頻繁にニュースで上がっている事件の一つで、殺人はこれまで6人、1人は重症。
今まで手がかりは無かったが、ニュースを見る限り重症者が目を覚ましてだいたいの人相が判明したらしい。
『こちらがその人相になります。見かけた、あるいは心当たりのある方は速やかに警察の方へ連絡を急いでください。これ以上被害が出ないよう協力願います。なお────』
「例の殺人鬼か。何だかいかにもな感じだな」
人相図を見てハクが呟いた。
人相は無造作な金髪の髪に赤いハチマキか額当てだかが巻いてあり、目は鋭く、表情は険しい。
「面白いニュースってこれか?そういや最後の犯行場所が近いな。まあどうせやつらがなんとかするだろうが」
「やつら?」
「SSPだ」
SSP────────
超能力を持った人間で構成される特殊な警察の組織
ネコが聞くと大家が答えた。変身能力を持つネコ自身も彼らの事は知っている。というか知らない人はいない。
「はあ、あのクソ連中か。役に立つのかねぇ」
彼はため息をつきながら言った。
実際SSPが活躍した、などというニュースはあまり無い。
「では、殺人鬼を捕まえに行こうか」
────……は?
大家の言葉に管理人とネコはしばらく固まった。
「では、殺人鬼を捕まえに行こうか?」
大家が首を傾げながらもう一度いう。
────いや聞こえてるって!
ネコが心の中で叫んだ。
「殺人鬼だぜ、姐さん!捕まえるって冗談……」
彼がそう言うと彼女はニヤリと笑った。
「な、なんだ冗談かよ…………?」




