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暗い夜に踊る  作者: ビシン
ボディーガード協会
50/70

第50話 ダニエル・ファーランド

トレーニングルーム


下級から上級までのガードマンが使用する屋内訓練場。ボディーガード協会ビルの地下に位置しており、ずらりとトレーニング用具が並べてある。腹筋マシーンやベルトコンベア、自転車のようなものまで多種多様だ。


そこかしこにガードマンが現在もトレーニング中であった。


そして中央には模擬戦闘が出来るよう広い空間があり、強化ガラス張りで観戦出来るようになっている。ガードマンたちはこの空間で技術を磨くのだ。


緊急集会が終わったばかりで現在は誰も使用しておらず。


「貸し切りね」


アオバは空の空間を見て言った。


「じゃあ、ダニエルと、えー、誰だっけ?」


「この人は────」


「あーやっぱいい、いい。どうせそこらへんの雑魚でしょ名前なんていいわ」


心配でついて来ていた事務員が、改めて、と紹介しようとするとそれを遮り、富豪の娘は鼻で笑った。


ダニエルもやれやれと首を振る。


「で、勝負はどうするのだ?」


ミナがハクの後ろから出て、オロオロとする事務員の肩を叩きながら聞いた。


「あたしが提案するのは模擬戦闘。5点ライト。ハンデがいるならどうぞ」


アオバはそう言ってトレーニングマシンに腰掛けた。腕組みをし、何をしても無駄と言わんばかりにニヤついている。


「私が希望するのは模擬戦闘5点サイレントモード。そしてハンデとしてこいつと私のみの通話の許可だ」


それを聞いて富豪の娘は眉間にしわを寄せた。


「そんなことできんの?」


事務員に向き直り聞く。


「……そうですね。出来ます。前例があまりありませんが設定自体は細かく出来るので」


少し首を傾げた後事務員はそう答えた。


「ふーん……まあ、べつにいいわ。じゃよろしく。で、ハンデはそんなものでいいの?5秒間動かないとか、動きに制限かけようか?重りでもつけてもいいけど」


「いらぬ。ではよろしく頼む」


返答を聞いたアオバが片眉を上げ、眉間に皺を寄せたが、ふんっと鼻を鳴らすと事務員に指示した。


事務員は半ば動揺しながらコントロール室へと向かいいそいそと準備にかかった。







模擬戦闘5点ライト。ガードマン同士が行う1対1の模擬戦闘。薄いシールのような物を前額部、左胸部(心臓の位置)、右肺、以下臓器2部の位置に服の上から添付しそこを狙い合う。当たるとライトが付きすぐにわかるというもの。5点全点灯させたものが勝者となる。


「いやーsorry、すまないねぇ」


中へ入るとダニエルは向き直ってハクに言った。


「何のことだ?」


ハクは足で地面をこすりながら聞き返す。足元は柔らかな土や砂を敷き詰めており、フィールドも特に特徴のない平地という感じである。


そこかしこに勝手に生えたであろう雑草以外は平坦で特徴がない。


「あの人がyouたちに暴言を言っていただろう。それにさ」


「別に気にしてはいない。それにお前はこうしたかったんだろ?」


「……」


傍目には主人を止めようとする従者という感じを受けたが、彼にやや煽るような言動があったのは確かだった。


主人をよく知っているからこそできる誘導だ。


「hu……確かにyouのようなgardmanらしくないのを矯正したいとは思うが、決して痛めつけてやろうなんて考えはないよ」


否定はしないのかとハクはため息をついた。


「それより着いたらすぐ始めると言っていたぞ」


「そう急かさない。自己紹介はしておこうお互いに」


ニヤリとダニエルは笑った。それにハクは片眉を上げた。


「……おれは────」


「私はS級42位のダニエル・ファーランド。仕えるは草薙一族の末裔、草薙青葉」


ハクの言葉を遮り、うやうやしくいかにも礼儀正しい風に腰を折って言い切る。


「……俺はA級125位のハク。クライアント、というのはいない」


「んん?さっきの女性がそうじゃないのかい?」


ダニエルは首を傾げた。


『そろそろ戦闘を開始します。5点ライト形式ならぬ5点サイレントモード10秒前……』


事務員のアナウンスが聞こえ、カウントダウンが始まる。


「正式になってるわけじゃない。勝手に言ってるだけだ。……まあよく知ってはいるがな」


「なるほど、じゃあ人助け、か。gardmanとして少しは意識があるようだね────けど」


『2、1、0────』


カウントダウンが終了と同時にだ。ダニエルはいつの間にかハクの正面に来ており、筋骨隆々な体から素早く、強烈な拳の一撃を胸部に叩き込んだ。

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