第40話 遡り
「未来視?」
「なるほど……どうりでな」
彼らは再び先程の部屋に戻ってきた。先程とは違いテーブルには紅茶や菓子が並んでいる。各々が空いた椅子に座り青年の話に耳を傾けていた。
「最初に潜伏させている者たちがバレたのもそうか合点がいった」
ミナは頷く。
「ネコさんの能力に驚かなかったのも、私の動きについてきたのもその未来視があったから、ですか……とても信じられません」
桜が驚いた声音で言った。未来視なんて想像した事はあっても実際にあるとは聞いたこともなかったのだ。
ミナ自身もそうで顔には出していないが驚いていた。そして疑問が一つ残る。
「だがユズルよ。お前は妖武器、妖刀を持っているはずだ。未来視と土を操るのがその能力なのか?」
妖武器とは今のところ能力は1つと限られている。例えば炎なら火球、火炎放射。雷なら電撃、磁力を操る。といった具合にその延長線上にある能力なら複数あることもある。しかし今回のように操作系と未来視の全く違う能力を持つというのはあり得なかった。
「いえ、僕の妖刀の能力は全てではないですが、突き刺した物を操る能力です。未来視はおば……妹…………いやもういいか」
青年は意を決したように続けた。
「おばあちゃんの能力なんです」
「……ばあさんなんてどこにいるんだ?」
10分前に目が覚めたネコが少しの沈黙が流れた後、辺りを見渡して言う。それはそうだ老婆の姿などどこにも見当たらない。
「先程いた女の子が僕のおばあちゃんです」
「は?」
言葉の意味に一同が首を傾げる。ミナは理由があると考えはするが思いつかなかった。
「いや、そうなるでしょうけど事実なんです」
「女の子って、先程あなたがアイって呼んでいた子ですよね?」
「はい」
桜が聞くと青年は頷いた。謝罪土下座以来すっかり言葉遣いが良くなっている。
「どう見たって十代前半ぐらいにか見えませんが」
「そうですね……だからもう、時間が無いんです」
不意に瞳が潤むユズル。必死に堪えているようだが、雫が落ちた。
ミナは咳払いし、青年に顔を上げさせた。
「聞こう」
ユズルの叔母が未来視という超能力に目覚めてて2カ月ほど経った後、彼ら、いやユズルはある変化に気づいた。
叔母は約6〜7日に1回のペースで未来を見ていたようだった。その度にユズルに嬉しそうに伝え、結果を楽しみにしていた。
未来視の内容はユズルの学校の事であったり、天気であったりまちまちであったが、それほど大きな出来事は無かった。
しかし日に日に元気になっていく叔母の姿に嬉しさもあったが不思議にも思う。しかしユズル自身も嬉しく、そこまで深くは考えてないようにはしていた。
そんな時に一枚の写真が目に入る。携帯電話の中に保存されている、とある叔母の写真だ。
ユズル自身がいよいよかもと思い内緒で撮ったものだが、違和感がある。
これまたコッソリと実物と見比べると明らかにシワも少なくなり若返っていた。
「危機感を覚えたのは僕の年齢を下回った辺りからです」
「危機感を覚えるのが遅すぎるな」
ミナが突っ込む。彼女は眉間にシワを寄せ、考える風に顎を指で挟んだ。
「い、いやほら若返っていくのみるとなかなか綺麗だなとかあれ、いや忘れてください」
ユズルが手を挙げ慌てて遮るよう振り、顔を赤くして俯いた。
「は、お前老婆になに期待してんだ?」
ネコが笑い飛ばしながら肩に手を回した。顔を背けるユズルに合わせて何かを呟きながら顔を動かし始める。
ミナは後で着ぐるみを半殺しにしようか悩みながら思考を巡らせた。
「つまりお前の叔母は未来視を使う度に3〜5歳ペースで若返り、このままいくと消滅するのではないかということか?」
頭の中で整理して要約する。
「……はい」
「……ふむ。しかし先程助けてくれと言われたが正直どうしようもない。まず私たちは超能力の専門ではない。SSPか専門科を訪ねることを勧めるが」
超能力を持つ住人は抱えてはいるが、それだって詳しく分かるわけではない。ミナはお手上げだと肩をすくめた。
「……そうしたいのは山々なんですが、もう時間が無いみたいです」
「?話の流れではあと2〜3週間は持つはずだ」
ユズルは表情を暗くした。
「未来視が発動するペースが最近になって早くなってます。先週は3回、今週は2日目に入ってもう2回です。おそらくもう手遅れ────」
「それじゃああと、2、3日ってことですか⁈」
桜がテーブルに手をついて立ち上がった。あまりの威力にテーブルは真っ二つに折れた。
「す、すみません!ってどうするんです⁉︎」
「もう、助からないと思います」
「え、いやそんな」
「ならユズルよ、私たちにどうして欲しいのだ?」
ミナは桜を座らせて聞いた。叔母を助ける、というのとは違う内容のようだ。
「それは────」




