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暗い夜に踊る  作者: ビシン
星に願いを
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第37話 未来視


超能力というのは先天性というのが多いが、時に後天的に発現しまうことがある。


彼女、1人の老婆は心臓病を患わっていた。高齢ということもあり特に処置をしてもらったりはなかった。彼女自身もそれを望んだ。その時はその時よ、と。


そして時が流れ床に伏せることとなる。


「私は昔からヒロインになりたかったのよ」


天井を見つめながら老婆は言った。すでに息子、娘には先立たれ、側には孫が居た。孫だけが。


「ヒロイン?なんで?」


「女の子ってのはやっぱりかっこいい人が好きなものよ。いつか私は悪者に付け狙われてしまうの。でも颯爽と現れたヒーローに助けられて恋に落ちてしまう」


「えー」


「もちろん妄想。こんな老婆が気持ち悪いって思った?」


乾いた声でケラケラと笑う老婆。孫の青年はそんなことないと言おうとしたが、急に激しく咳き込む女性の背中をさすった。


「無理はしないでよ」


「わかったわかった。あー、一度でいいから体験してみたかったなぁ。流れ星にお願いもしたんだけどねー」


徐々にか細くなる声。甲高かった声は掠れ、覇気もない。そのうちに視界も狭まって来た。


死────。迫ってくる暗闇。恐怖。動かない身体。重たい瞼。


老婆は最後に孫の顔を見ようとしたがそれも叶わないようだった。


いよいよ最後かと思われた時、それは起こった。


視界の中心が光り出した。最初は母親でも迎えに来たかと思ったが、大きくなる光は視界全体まで広がり、孫を写した。


学校のようだ。机に座り必至に何かを書いている。次に吸い込まれるように孫の視線となり、手元を写した。どうやら学力テストをしているようだ。内容は────と読んだところで光が消え、再びもとの暗い天井が視界に入ってきた。


孫が手を握り、顔を覗かせていた。目に涙を浮かべて。


「ばあちゃん?」


「あら、残念。まだ生きてた」


彼女は死に切れなく、カラカラと笑った。


「も、もうー焦ったぁー!」


孫は深くため息をついた。


老婆は何かおかしい、と感じた。やけに身体が軽いのだ。


彼女は不意にむくりと起き上がる。


その様子に驚く青年。


「え、え?大丈夫?」


それはそうだ、何せもう起き上がる事さえ出来なかったのだから。


「無理はしないで!」


起き上がろうとしていた老婆は孫の言葉に従い再び横になった。


「大丈夫?怠くない?」


再度確認する青年。不安の表情を浮かべていた。


「ええ、でも今日は休むわ」


確かに倦怠感はあったが、それ以上に何か大きなエネルギーが身体に満ちていた。


「そういえばテストはいつ?」


不意に老婆が聞く。夢の出来事が忘れられないのだ。


そんな質問に孫は首を傾げた。


「確か来週だったかな?なんで?」


彼女は夢に見た事を話した。その姿は病気を忘れたかのように嬉々としており、話し終えて一息ついた時にはすでに寝息を立ててしまっていた。






「す、すごいよばあちゃん!テストの内容全部当たってた!」


数日たったある日、つまり1週間後。起き上がって本を読んでいた老婆の元に孫が慌てて入ってきた。


「ばあちゃん!全部当たってたよ!」


「あらら、本当?予知夢ってやつかしらねー」


孫が老婆に見せたテストは確かに光の中に見た回答だった。98点と高得点だ。大学生としてはなかなか取れない点ではないのだろうか。


「でも覚えてたなんてねー。ちゃんと勉強したの?」


「したよ!踏まえた上で!すごい!」


「「これは将来有望なんじゃないかな?」」


「えっ?」


老婆は青年と同じ言葉を発した。その様子に目を丸くする。


実は昨晩、老婆は再び光に映像を見ていた。嬉々として報告に来る孫の姿を、その言葉を。


「また夢を見ちゃって」


「す、すごい。これって超能力なんじゃ────」


「あ、そうだ見てよ」


老婆は不意に立ち上がり、しっかりとした足取りで歩き出した。夢を見た直後は気怠かったが、朝方に目を覚ませば身体が軽くなって簡単に歩くことが出来たのだ。


「嘘……ばあちゃん。病気治った……の?」


「うーんどうなんだろうね?でも身体は全然」


そこまで言うと孫は抱きついてきた。目に涙を浮かべて。


それはそうだろう。両親に先立たれ、残る肉親は目の前の老婆だけだったのだから。







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