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暗い夜に踊る  作者: ビシン
クラーマル事件
36/70

第36話 陰り

クラーマル事件直後



外────


ハクは円形のアパート近くまで来ると路地の壁にもたれかかった。


「ふぅー」


仮面を外して一息つく。


────あの包帯男は何だったんだ?あとあの黒スーツのやつら……


「ジンの仲間だったら勘弁だな」


『切り裂き魔』としてSSP(特殊異能警察)に知られているハクはまた敵が増えてしまうのではないか懸念していた。


ただ、惨劇を起こしたの包帯男で、切り裂き魔の仕業ではない。それは生き残ったガードマンが証言するのではないか、とも思う。


第一、悪魔でその名は噂に尾ひれがついて独り歩きしたもので、彼自身は本当に何もしてはいない。そんな彼をジンというSSPのリーダーは見つける度に執拗に追いかけているのだ。


ハクはうなだれて、いつの間にか腰へ戻ってきている木刀に触れた。妖刀の力は解いているためただの木材だ。


────包帯男は俺を知らなかった


様子を客観的に見てなんの関係もない人物だろう。『切り裂き魔』としても『ハク』としても。ただ目的はわからないし、彼は知ろうとも思わなかった。今は興味がない。


────あいつらはどうなったか


ふと怯えた2人のガードマンが頭をよぎる。


いや、とハクは首を振った。


黒スーツたちをぶつけたのだ。おそらく捕まってるに違いない。


────しかし今回もダメだな


結局依頼はめちゃくちゃになってパーになってしまった。以前の依頼も収入が無かった。


この調子はまずいのではないのかとさらにため息をつく。


せっかくミナが当てがってくれたのになんと報告したらいいか。彼女を相手に嘘をつくのは難しい。


さてと、と休めた身体に力を入れて立ち上がった時、不意に曲がり角に気配を感じた。時間は深夜だ。ただでさえ人通りの少ない路地裏に人がいるのは危ぶむものがある。


────誰だ……?


ハクは危険を感じ、仮面を再度装着し、ナイフを手の内に仕込んで壁に背中をつけた。


ジリジリと近づいていき、僅かだが人のシルエットが見えた。


その瞬間に影が動き、ほぼ同時に彼は動いた。


目の端に銀の刃が閃く。


それを屈んで避け、手の内のナイフを突き出す。


相手は素早く手を戻し、剣の柄でナイフを弾いた。衝撃でナイフが手から離れて空中を舞う。


その間に仮面の男は腰の木刀へ手を掛け、腕を振り上げた敵の背後へ回るよう、身体を低くしながら反転させて下から上に腕を振った。


相手も適応し金属音が鳴る。


一瞬、鍔迫り合うが仮面の男は武器を捨て、落ちてきたナイフを素早く掴み相手の首に斬りかかった。


その瞬間だ。淡い橙の電灯の明かりが相手の顔を照らし、慌てて手を止めた。勢いを殺そうと前につんのめる。


「な、何やってるんだ?……ミナ」


相手の正体は大家兼お嬢様のミナだった。そしてナイフは寸手の所で止まっていた。


「ふふ」


ハクも同時に首の下に尖った柄先を突きつけられていた。ミナはニヤリと笑い剣を下げる。その剣は今の彼女のお気に入りで何かと仕掛けがある。


剣術も実家でひとしきり終えているとの事。動きを見れば嘘ではないとわかるが。


ハクも息を吐いて武器を納めた。危うく殺り合う所だった。


「危うく殺り合う所だったぞ」


文句も込めて口にも出す。


「お前なら止めれると思ってな」


ミナは金色の長い髪を後ろに払い撫でた。格好はいつもと変わらず黒いドレスのようだ。


「何でこんな所にいるんだ?」


彼は仮面を外してため息をつき、もう一度聞いた。どこかのお嬢様が夜更けにこんな所にはずがない。見たところ護衛の桜も居ないようだ。


「私がどこにいようが勝手だろう?」


「桜が黙ってないんじゃないか?」


「……ふむ、まあ誰かの帰りが思ったより遅いからどうかと思ってな」


やれやれとミナは首を振った。


「で、ハクの姿がチラッと見えたのでな。つい、な」


彼女は意地悪そうに口の端を上げた。


「ふむ……それで依頼は?」


ジロリと睨む彼の視線に話題を変える。


────もう言い訳とか考えるの面倒くさいな……


ハクは頭をかいて依頼の内容と出来事を掻い摘んで話した。






「ほう、ということは報酬は"無し"か」


『無し』を強調しやれやれと肩をすくめるミナ。せっかく見繕ってやったのにと付け加える。


彼らは路地を歩きアパートの近くまで来ていた。


「……」


「とまあ冗談はさておき……その殺人犯はただの愉快犯に思うが」


ハクが何も言わないのを見て考察を言うミナ。


「何故そう思う?」


「クラーマル、社長だったか?敵はガードマンを壊滅させるほどの手練れだった。ならわざわざそんなことせずに社長を狙いに行けただろう?」


正直ハクもそう感じていた。あの場に社長は居らず、なのに戦い続けるのは妙だ。逃げるのもさっさと目的達成させるのも容易かったはず。


「それと黒スーツの連中か……そう言えば近頃警察に死人が帰ってきたと情報があったな」


ミナは顎を指で挟んで考える風に言った。


「死人?」


人体蘇生か?と首をひねるハク。黒スーツたちは動きが普通とは違った。しかし警察地味た発言もあった事は確かだった。


「まあ真意は謎だ。死人が生き返ったのかとも取れるが────」


彼女は口をつぐみ、続きは言わなかった。


「さて、なにはともあれお疲れ」


少し前を歩いていたミナは急に振り返った。いつのまにかアパートに着いたらしい。


「明日は、いや今日か……管理人の仕事は休んでいいか?」


期待を込めてハクが聞く。


「ふっ、ダメに決まってるだろう」








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