第33話 焔
ギリギリと鍔競り合うが不意に弾かれ、目の前から突然炎の玉が飛んできた。
咄嗟に手で弾くように振り払って火傷を負う包帯男。
「熱っついっな、ん?ああ、お前知ってるぞ。確かホムラ……だったか?」
包帯男は焦げた手に息を吹きかけながら態勢を整えた。
赤い髪にグローブが特徴の焔がふぅっと息を吐いた。
「お前の目的は社長の拉致……だよな?何をしている」
「は?……んん?拉致?ああそうか豚はそう言っててめーらを集めたのか」
「何を……言っている」
「拉致じゃねーよ、ここは今から殺人現場になるぜ!ははっ!!」
大声で叫び、包帯男は両腕を広げ恍惚の表情を浮かべた。
その薄気味悪い笑みは異常の極みだった。
その不気味さ、依頼内容の真実に気づいたものは一目散に逃げ出した。
すでに1人が死に、2人の重体者、数人重傷者……。すでに逃げ出したものも差し引き、戦えそうな者は10人もいない。外で待機していた者も何故か来ない。
包帯男は尚逃げ出そうと後ずさりするガードマンに腕を振り上げた。
それを防ぐ焔。
「ガードマンがガードマンに守られる?なんか笑えるな」
敵が鼻で笑う。
「お前はここで倒す!」
焔はそう言い自らの拳に刃を当てた。
その瞬間に火花が散り、巨大な火の玉が吹き出す。
しかし突如二つに割れる火球。それは中央に立つ男の両脇をかすめ、消えた。
「な────」
包帯男はいつのまにか両手の4爪の刃が長い刀になり、リーチが2m近く伸びていた。
「新武器か……」
新武器────
ナノテクノロジーにより進化した武器。声紋認証により形状を有利に変化させたり、火炎を出したり、強力な衝撃波を出したり様々な物がある。
相手を見る限り、爪を一つにし、リーチ、破壊力が上がったというところだろうか。
焔は自身のグローブを見た。彼のそれは新武器ではなく、ただ火炎を飛ばすギミックのあるモノだ。根本的に類が異なる。
彼は武力のレベル差を振り払うように頭を振った。
そして狙いを定め、小さい炎を飛ばした。案の定真っ二つに断ち切られるが、立て続けに同じ攻撃を仕掛けた。
「おいおいどうした、こんなちゃちなもん寄越して、ガードマン?」
包帯男は難なく躱しながらニタリと笑った。焔がそれに応えるように素早い大きな火球を飛ばした。
敵は驚いたものの、鼻を鳴らすと先程と同じように水平に一刀両断した。しかしそこで目を見開く。相手の姿がない。
「おおおぉお!!」
不意に眼下より雄叫びが聞こえたかと思うと強烈な衝撃と共に爆風が襲った。
他のガードマンが見守る中、土煙が舞った。束の間の静寂に誰もが仕留めたと思った。
しかしそれを打ち払うように土煙が晴れ、包帯男が姿を現した。その両手の刀が焔の腹部を貫いていた。ぐったりとして動かない。
その光景に他のガードマンは息を呑み、凍り付いた。
「いいね、殺しがいがあったよ」
包帯男は両手に力を入れた。ギシギシと音を立てて戦った相手の身体が引き裂かれ始める。
「う、うおおぉお!!!」
凍り付いていたガードマンの1人が雄叫びをあげ、背後から敵の腰にしがみついた。
「み、みんなあ!逃げろー!はやく!」
それを皮切りに残りのガードマンが駆け出していく。
包帯男は舌打ちすると焔を投げ捨て、しがみつく男の髪を掴んで蹴り飛ばした。
「丸太!」
床に激突する丸太に駆け寄る桂子。
「おいおい……」
包帯男は首を鳴らしながら彼らに近づいた。丸太を桂子が助け起こし、必死に逃げようと引きずっている。
「せっかくの獲物が逃げたな。覚悟はできてるか?」
2人の首元にヒヤリと冷たい刃を押し当てる。この行為に恐怖が押し寄せ、ガタガタと2人は震えて動けなかった。
相手が両手を振り被った。
────ああ、ここで終わりか……
2人のガードマンは目を閉じた。
包帯男が手を振る瞬間、何者かが2人の襟元を引っ掴み、背後に勢い良く引いた。
2人は勢いで後ろに転がり、激しく体を打ち付けたが、敵の攻撃は僅かに掠った程度で死には至らなかった。
「あ?何だ?」
包帯男が何故攻撃が当たらなかったのか首を傾げていると、不意に転がるガードマンの中央の暗がりから白い仮面が浮かび上がった。
それに驚き慌てて飛び退く。
「誰だてめー!」
一瞬気配も感じず、この世のものではない雰囲気にヒヤリとしたものがあったが、よく見れば周囲に溶け込むように黒いコートを着ている。
そしてその両方の手にいつのまにかやや短めの刀が握られていた。僅かに発光しているように見えるが。
────新武器か?
「新手のガードマンかっ?!」
包帯男は両手を前に突き出し突進した。




