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暗い夜に踊る  作者: ビシン
住人たち
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第27話 ヨシキとつくね

ネコは管理人に2階へ連れて行かれ、202号室の前に来た。


────2階かぁ、ていうか階段分かりづら!


まだ建物を把握していないネコは1階をぐるぐると歩き回っていたのだ。


1階の他の部屋を当たってみたが、使われてなかったり鍵がかかっていたり、よもや階段は円形の内側に埋まるようにして存在していたので見逃していた。


ちなみに彼の部屋は妙な空間の隣の部屋で、本人は少し気味が悪いと思っている。


「で、どんなやつだよ、この部屋のやつは」


ネコは前もって知っておこうと聞いた。


────変なやつだったら逃げる


「ん?あぁ、そうだなー、ここ自体最近だからな……あまり絡んだことないが、なんかこう、間違った人間?的な……ござる口調だった」


「い、意味わかんね、もういいわ」


管理人が眉間にシワを寄せて難しい表情をしているのをみて、これは逃げだな、と判断するネコ。


そそくさと後にしようとした時、管理人がインターフォンを押した。


「はーい」


中から声が聞こえ、ドタバタと足音がした。声は男性だろうが、少し高く、妙なアクセントがある?ネコは好奇心に駆られ、その場に留まってしまう。


────外人か?


そう思ったが、中から出てきたのは、頭は金髪の天パ、顔は東洋系で背はネコと同じくらい、服装は袴だった。


「おぅ、管理人サんでござったか。いつもご苦労様でござる。やや、こちらの方ハ?」


「ああ、こいつは新しく────」


「隣人さんでごさるな!私はここの部屋のヨシキと申します。以後お見知り置きヲ!」


ヨシキという人物はやたらテンションが高く、ネコの手を取ると上下に激しく振った。


「えー、新居者のネコだ。1階に住んでもらうことになった」


管理人が説明し、ネコに自己紹介するよう顎で示した。


────めんどくせえ


「コホン、新居者のネコです。以後よしなに」


さもめんどくさそうに適当に振り返す。


「おー!よしなに!日本は大好きでござるよ!」


「……あ、そう」


なぜか気に入られたようで、ネコは一層手を握られた。


「ネコって、珍しい名前でござるな。フルネームはネコ・ティッシュボールド、みたいな感じでござろうか」


「なんだそのスコティッシュホールドみたいなのは?んなもんねーよ」


「そうそうそれでござる!あ、よろしかったらお茶でも出すでごさるよ、管理人さんもどうでござるか?」


「い、いや遠慮しとく」


「あー俺もちょっと用事あるから」


彼らはヨシキの部屋には入らず、そそくさと退散することを決めた。






「なんだあの日本かぶれな外人のようなやつは……」


ネコが口を尖らせて不平を呟く。


「……」


管理人はそれには答えず、奥に進み始めた。


「ったく、何が『ござる』だよ。まがい物もいいとこだよな、日本人の」


「それをお前が言うか?着ぐるみ」


「は?着ぐるみじゃねーってんだろ?殺すぞ?」


ネコは俺のは天然物だと付け加えた。管理人はため息をつき、また進み始めた。


「ていうか次は誰だよ?」


「……子供だ」


「は?お前結婚してんの?」


「ちがう、預かってるんだ」


また酷く難しい顔をしながら管理人が答える。ネコは首を傾げ、今度はどんな変な奴かと呟いた。


管理人が足を止めた。


彼らは205号室の前にきており、管理人がインターフォンを押そうとするが、頭をかいて、ネコの方を向いた。


「今度はお前が行け、お前のあいさつだから」


ネコは管理人と場所を交代し、インターフォンを押した。


ピンポーン


と、中から慌ただしく足音がしたかと思えば勢いよく扉が開いた。


扉の前にいた管理人はネコの視界から消え、彼は驚きに目を見開いた。


「お、おわぁぁあぁ!か、管理人!?」


「ん、なんや管理人の声が聞こえた気がしたんやけど……?あれ、自分見ん顔やな、新人か?」


目の前から甲高い声が聞こえたが、ネコが前を向いても誰もいない。しかし視線を下げると小さな女の子が仁王立ちでこちらを見上げていた。


────小学生か?


見た目は小学生低学年、服はピンクのワンピースを着ている。顔は丸く、目は大きい。髪は茶髪がかっていて頭のてっぺんで髪を結んでいた。


────ていうか大阪弁って、関西人じゃねーの?


「ていうか猫やん、ごっさかわいー!うち好きやねん」


「え、あ、どーもここに住むことになったネコです」


笑顔になる子供をみて慌て自己紹介する。


「ネコってそのままやないか!うちは前原つくね言うねん、よろしゅう!」


「よ、よろしゅう……」


ネコが真似をすると女の子は声をあげて笑った。


「ほな、うち今忙しくて、また暇な時お話してや」


つくねはそれだけ言うと扉を閉めた。


管理人がドアの後ろから紙切れのように静かに倒れる。


ネコはタバコを取り出すと咥えて火をつけた。


「やっぱよ、タカるってのは良くないよな」


彼は呟いて煙を吐き出した。

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