第24話 猫の人物2
どうやら円形のアパートのどこからしい廊下が、緑がかって映っている。しかし視線がかなり低い。
────そういやさっきも妙だった
ハクが猫の人物を床に叩きつけた時も本物の猫サイズと思った。しかし次の瞬間には人のサイズへと変化していた。
首を傾げ、モニターを見つめるが、じっとしていて動かないので少し早送りする。
すると目の前のドアが開き、寝間着姿の桜が出てきた。そのままカメラは彼女の後を追跡する。
────……なるほどな
「あ、てめ!何人のを勝手に!」
猫の人物がソファに隠れるハクを見つけ出し、叫んだ。
「何が勝手にだよ。お前こそ不法侵入の上に盗撮とはな」
モニターを閉じ、やれやれとハクは立ち上がった。
「メイドがどうとか言っていたが、ようするにただのストーカーだろう」
「あ?!ストーカーじゃねぇ!俺はれっきとした真人間だ!」
「真人間はこういうことしないと思うが」
「ちょっと録画中にメイドさんが映っただけだろうが!」
────何言っても聞かないな
犯罪者とは精神病者のようなものだ。精神を病んでしまった者との対話は難しい。
取り抑えて警察に突き出すかとハクはため息をついた。
「ぬ?話が弾んでいるようだな」
ハクが動こうとした時にミナが戻ってきた。背後に桜もいる。
しばらく帰って来ないだろうと思っていたハクは少し安堵の息をついた。話の通じない相手に飛び掛かるところだった。
いや────と答えそうになった時、ふと猫の人物を見ると、先程とは違い、礼儀正しい姿勢に顔を輝かせている。
「はい!話させてもらってます!」
突然の変容にハクもミナも片眉を上げる。
「お客様ですか?お茶でもお出ししましょう」
気づいていない召使いがそそくさとお茶の準備をし始めた。分かってはいたが素ぶりからしてやはり知り合いでは無いようだ。
ハクは止めようとしたが、ミナが指で小さく手招きしたのを見て、邪魔されないよう、猫の人物の頭部を再び回転させ、そばに寄った。
「どうだ?」
小声で問う家主に同じく小声で事の顛末を伝える。
「────ふむ……そうだったか」
「どうする?警察か……SSPにでも突き出すのが良いとは思うが」
SSP────特殊異能警察の略。数々の怪事件を扱う。
ミナは顎に手を当てて考えている。何かやるつもりなのか。
桜の方は茶葉が見当たらないようでテーブルに付いている引き出しをひっくり返している。
「め、メイドさん!?お、お茶なんていいですよ!そんなことよりお話でも……そうだ!好きな食べ物とかありますか?」
頭を元に戻した猫の人物が桜に気づき話をしようとしている。
「え、え?プリンが好きですが……やっぱり茶葉が無いですね。補充しましょう」
「いやいいですよそんなことよりお話を────」
猫の人物が立ち上がりその場にとどめようとするが、構わず桜はハクの方へ歩いてきた。
自分の後ろに紅茶セットがあるのを思い出し、横に避けるハク。
と、彼女が足を前に出す時にホワイトボードの足が引っかかりこけそうになるが、目の前にいたハクの服を掴んだ。
「うお!ちょ、掴むな重い!」
彼女の重みに耐えられず彼は壁に手をついた。
「し、失礼ですね!殴りますよ??」
このときミナは猫の人物のマスクに青筋が立つのを見てニヤリと口の片端を上げた。
「そうだ桜よ。私の部屋にあるのを持ってきてくれ、好きだろう?」
「え!?いいんですか?」
ハクは何のことか首を傾げていたが、ミナが頷くとそそくさと桜は退出した。
「わりと希少な茶葉でな桜の好物でもあるのだよ。なかなか手に入らないからあまり使わないんだが」
彼の様子を察してかミナが説明した。
「さてそんなことより」
ミナは猫の人物に振り返った。じぃっと見つめる。
「お前、名前は?」
「え?あ──」
彼は答えかけて、口をつぐんだ。何やら考えている風に首を傾げ、約1分。
「猫です」




