第21話 黄色い顔
深夜0時。桜はその日の仕事を管理人の分も含めて終え、寝間着に着替えて自室の寝台に腰かけた。日頃以上の仕事をこなした為お腹より甲高い音が聞こえ、冷蔵庫を漁る。
日中の内に食品を補充しており、簡易的なイージーミールという一口サイズのクッキーを3つ食べる。エネルギーにして約300、一つ辺り100という所だ。
水を補給し、再びベッドに座り込んだ。
────幽霊なんていない。ネズミか何か……か
依頼した管理人よりそう返答があった。捜査の結果何も気配は無いし、気のせいだろうと。気になるならもう一度確認に行ってみろとも言われた。
確かに何かいたような気がしたが、気のせいだったのだろうか。
「うーん……」
彼女は枕を抱き、顔を埋めた。
────本当に気のせい?
『いない』と言われてもあの時の恐怖は拭い去ることはできない。
自分で確認するまでは。
食事はどうしたのかというと日中も業務用キッチンには入らず、住居者『つくね』にキッチンを借りて料理を用意していた。
桜は立ち上がり、寝間着姿のまま部屋の外に出た。電気は消されており真っ暗だ。しかも今回は月が雲に隠れていてほとんど先が見えない。
故に今回はライトを持っていく。
壁伝いに歩き、意識はなるべく背後に置くのを忘れない。今のところ特に足音や気配は感じ取れず、そのまま進んだ。前回同様に主人の部屋の前は避ける。
周りの暗さに頼りになるのは明かり一つだけ。新しい建物ならそう怖く無いが、古いアパートて所々ヒビが入っていたりし、より一層雰囲気を駆り立てた。
幽霊が怖い────
SS級ガードマンともあろう者が怖いものがあると言うことを知られるわけにもいかず、特に舎弟の管理人には「怖い」と言えるはずもなかった。しかし認めたくはないが、どうやら得体の知れないものはどうやったって怖い。
彼女は身震いしそうになりながらキッチンの前まで来た。
震える手で扉に手をかけた。ひんやりとした感触が手に伝わってくるようだ。
────いや。確かめなくては
やめようかと一瞬考えたがすぐに振り払い、思い切ってドアを開けた。一歩入り、素早くライトをキッチン中に照らす。
カウンター、ワゴン、冷蔵庫、見える範囲には何もない。最後に使用したままなにもかわっていない。
ほっと胸をなで下ろす桜。
────やっぱり昨日は寝ぼけていたという事……?
ため息をつき、部屋に戻ろうと桜はドアを閉めようとした。
その時だ。
不意に足に何かが当たった。ふわりとした綿のような感触。
驚いて咄嗟に明かりを足元の何かに当てる。
顔────
最初に飛び込んできたのは異常に黄色に変色した男の顔だった。いや、そうではないと、彼女の思考が目まぐるしく回る。
おかしいのだ。何故足元に顔があるのか。赤子でもなければ、それはもっと高い位置にあるはずである。
「あ、あ……」
黄色い顔はじっと桜を見つめ口端を上げた。




