表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗い夜に踊る  作者: ビシン
ボディーガード
15/70

第15話 空白

ボディーガードと化け物の人知を超えた戦闘をただただ見守っていた真美子。


雇った男が攻撃される度に冷や冷やし、化け物、優子が攻撃される度に目をつむった。


対照的に探偵は落ち着き、常に安全を確保するために真美子を誘導していた。


そして戦いが終わった時、真美子は両方が生きていることに安堵の息をついた。


真美子は目の前で倒れている化け物をまじまじと見た。


優子の面影は無い。毛むくじゃらで腕の大きな化け物。


「優子?」


『……ぐっ』


呼ぶとわずかに首が動いた。真美子がわかるのだろうか。


真美子はまた口を開こうとしたが、言葉が出てこなかった。


────なんて声をかけたらいい?


彼女は他の二人に目を向けた。雇った男は胸のところを抑え、苦しそうに顔を歪めているが、何やら探偵と小声で話し、優子の肩の装飾品を調べている。


真美子は足元に転がる破片に気づき、辺りを見回した。


雨はいつの間にか止み、月が雲の隙間から出ていたのでよく見えた。


天井には風穴がいくつも空き、地面はえぐれている。数m先は壁と天井が崩れ瓦礫と化していた。


次に怪物に目をやる。ところどころ細い傷があるが、右肩が肩の付け根から二つに分かれ、今もなお血が流れていた。


思わず目を逸らす真美子。


「仕方のないことだった」


探偵の声が正面から聞こえた。


「わかってます」


自分でも驚くくらいはっきりと言葉に出てくる。


「優子は私を、他にも命を奪ってました」


真美子は顔を上げた。


────なんだろうすごく冷静……


「そうか……」


探偵はそれだけ言うと化け物の側に言った。なにか話しかけているようだが、優子の口からは唸り声しか出ない。


「優子は……始末するんですか?」


殺すという言葉を避け、おそるおそる聞いた。


「ふむ、このまま放置したら死ぬが……手当てすれば死にはしない」


真美子はそれを聞いて安心した。


「左腕は無くなるがな」


探偵が付け加える。


「え、なんで…」


「こいつの暴走はこの右肩のこれが原因だ」


探偵は優子の右肩の装飾品を指でつついた。


「これさえ外せば優子はおそらく元に戻る。だが斬り落とさなければ外せん」


「くっつくんですよね?」


探偵はそれにはかぶりを振った。


「それは斬った腕がまだ新鮮なうちだ。私たちは新鮮を保つ道具などもってない。もちろん、こいつをこのまま病院へ運ぶ力も無いし、例え運べても命はもたない」


そもそも運べば大問題になる、と探偵は言った。


真美子は黙りこくった。


「私たちでは決められん。こちらとしては無関心を装いたいが……」


そこで探偵は真美子に、何かを待つように見つめた。


彼女は意味がわからず、首を傾げていたが、ふとボディーガードを見る。


彼は目が合うと何故か目を逸らし、化け物の方に顔を向けた。


そこで真美子は理解した。


この2人は<答えを>待っているのだ。


優子が生きるか死ぬかの。


「すまんな、私たちはあくまで雇われた身だ。すでに目的は達しているのだ、これ以上はお前次──」


と、急に化け物が暴れ出した。しかしハクがもう一つの剣を突き刺し抑える。


『真美、子ごろざないで!わだしだちともだちでじょヴ!』


優子の意思が戻ったかのように言葉が聞こえた。


真美子は彼女に近づいた。


ボディーガードが警告の声を上げるが、自分で確かめなければ気が済まなかった。


真美子は手を伸ばし化け物に触れようとした。案の定化け物の口がガパリと開いて噛みつこうとする。


しかし口の中に手を入れても閉じようとしなかった。小刻みに震え、何かを我慢しているようだ。


『ごめん、真美子、ごめん……ごめん……』


ふいに親友のすすり泣く声がした。


化け物の顔を見ると涙を流している。


反射的に撫でようと手が触れた瞬間、頭が、目の前が鮮明に映った。


────あ、これ、わたし


今までの時の痛みはなく、記憶が戻ってくる。


暖かい記憶が────


優子の笑顔が見える


優子が歯を見せて笑ってる


子供の頃公園でブランコしたり、グルグル回すやつで怪我したりしたっけ?すごく痛かったけど優子は笑ってた。


小学校卒業は離れると聞いて泣いたけど、転入した先で中学で一緒になって泣いて笑ったなぁ


高校も──大学も──いつもいつも目の前に優子の笑顔があった


わたしはいつも元気がでたんだ、優子の笑顔でなんでも出来る気がした


優子の笑顔で……


優子、優子、優子……いつもいつもありがとう────


わたしなんかと一緒にいてくれて








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ