第14話 戦闘
ハクは優子の化け物の腕の骨を肘から折り、戦力を半減させるつもりだった。
しかし化け物は想像以上の速さと力で的確にハクをその巨大な腕で捉えたのだ。
彼は妖刀で防御し直撃は防いだが、天井ごと空に放り出された。
運良く建物の屋根に落ちたものの息ができない。
雨が仕切りにハクを打ち付ける。
四つん這いになりようやく息が出来るようになった時、咆哮が辺りに響いた。
ハクは視界の端に何かを捉え、咄嗟に横に転がった。
化け物がハクのいた場所に突っ込み、土埃が舞う。
ハクは体制を整えて2本の剣を握り直した。
屋根の下から化け物の腕が伸びて這い上がり、屋根の瓦を踏み崩しながら近づいてくる。
改めて姿を見ると、腕は地面に届きそうなほどに太く長くなり、長い牙が生えている。
────手加減は無理そうだな
先ほどの力をまともにし、考えが甘かったことに毒付いた。
化け物は間合いの外で動きを止めて様子を見るように左右に移動している。
ハクは化け物の体に何か妙な装飾品などはないかと目を走らした。この妙な変異は妖しい装飾品などが原因だ。
ハクの持つ妖刀と同じく妙な力を持った装飾品などは<妖武器>と呼ばれ、人を狂わせる。
電撃や肉体の強化、物によって様々な違いがある。
今回は持ち主が制御しきれずに暴走してしまったのだろう。
こうなっては収めるのが難しく、妖武器の装備を外させるか、切断などして身体から離すしかない。
しかし、目の前の化け物からは何も見つけられない。
体毛で隠れてしまっているのだろうか。
そうこうしているうちに化け物が巨大な拳を振りかざし殴りかかって来た。
ハクは拳をかがんで避けて相手の足にぶつからないように股をくぐり抜けた。
────あった!
彼は化け物の背中側の左肩付け根にキラリと光る腕輪のようなものを見つけた。
しかしこれでは外させるのは困難だ。
化け物はくるりと振り返り、先ほど天井を破壊したようなアッパーカットを繰り出した。
ハクはそれを身を反って避け、続け様に攻撃しようと下がった敵の顎に、そのまま地面に手を付けて足先をぶつけた。
脳震盪でも起これば楽なのだが、相手はさすっただけで大したダメージにはなってないようだ。
今度はハクから動き、左右に素早くステップを踏み敵の狙いを眩ませる。
予想通り、彼の動きにつられて化け物の腕は大きく逸れ、隙ができた。
ハクは左肩の付け根、装飾品がある部分に思い切り斬りつけた。
甲高い金属音が2度した。
彼は屋根の淵に着地し、痺れる手をさすった。
────わかってはいたが……
「壊せないか……」
肩にある妖武器は硬く、傷一つ付かなかった。
妖武器が傷つけるなどで壊れたりをまだ見たことがない。ハクは持久戦になりそうだとため息をついた。
化け物にもはや優子の意識はなく、妖武器に操られている。
化け物は目の前の敵を仕留められず苛立っているようだった。
相手は大振りな拳をデタラメに振るってくるが俊敏に動く男にはカスリもしない。当たれば終わりと思っているのか、数だけを打ってくるそんな感じである。
やがてハクがどうやって敵の動きを止められかを考えているうちに化け物が空中に跳躍した。
一瞬空中に停止した後、加速しながら拳を振りかざす。
このまま避けてばかりでは勝負はつかないと判断し、二刀を両脇に構えて、迎え討とうとする男。
次の瞬間両者が正面からぶつかった。
交差した2本の刀が拳を両脇から切り裂き、化け物の重さと上乗せされた威力で刀に埋まって行く。
ハクは腕を引き切ったものの、化け物の腕に引き込まれ屋根に激突した。そのまま突き破り木の床へ落ちる。
激しく地面に叩きつけられその上化け物がのしかかって来るため息ができない。
ハクは必死に大きい敵の下から這い出し、咳き込んだ。肋骨が数本折れているようで咳き込む度に激痛が走った。
『ぐ、ぐぞ』
振り返ると化け物が起き上がろうとしていた。が、身体がでかいので、今まで半ば両腕で支えるように立っていたのが、片腕では立てないらしい。
ハクが切り裂いた敵の腕は真っ二つになり、血を地面に流しながらだらんと垂れている。
「力を解け」
優子の意識が戻りかかっているのがわかり警告する。
『う、うるざい…まだ私は、』
なおも腕を振り回そうとする優子。彼はバランスを崩して倒れたところを狙い、大きな掌に刀を突き刺し地面に固定した。
「勝負はついたな」
さて、どうすべきかを考えていると奥の暗がりからミナの声がした。




