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みぞおちの虫  作者: 松田
9/21

手のひら

大学の入学式を終えて、僕は家に帰ろうとしていると知らない人達に声をかけられた。

「君、一年生?」

「はい」

四人組で声をかけてきたそいつらは一言で言うとチャラく、僕とは相容れない人達のように感じる。そんな人達の用事は新入生の親睦会に参加しないかということだった。

こいつらのせいでその親睦会にあまりいいイメージが持てなかったから断ろうと思っていたが、こいつらは僕の話を聞かないもんだから、半ば拉致されるかのようにこいつらに引っ張られて連れて来させられた所には何人かの一年生らしき人達が集まっていた。

こいつらを合わせて男子六人女子四人。僕を入れたとしても十一人しかいなかった。

しかも何も予定は決めていなかったらしく、これからどこ行く?などと話していた。せめて行き先は決めておけよと思ったが女子の中の一人が既にこの辺のいいお店を調べて予約まで済ませていた。

「そこはなんの店なんですか?」

「ただの飲み屋だよ」

そう言われて連れてこられたのは本当にどこにでもあるただのチェーン店の飲み屋だった。

各自とりあえず飲み物を注文することになり、みんな未成年だということでアルコールは頼まなかった。というよりも店を調べた彼女が威圧感のようなものを放って酒を飲みたがっていた四人にすら我慢させた。

飲み物が届いたので乾杯をし、自己紹介をすることになった。

「心理学部の小林 春香です。よろしくお願いします」という例の女子を筆頭に自己紹介はちゃくちゃくと行われて割と早く僕の番は来てしまい完全にあせった。こころの準備ができていなかった。

僕はなんとか心理学部の坂井 直哉ですと言ったがその声はどうにも上ずって、しかも続きのよろしくお願いしますが出てこなかった。

みんながどうやって紹介を締めていたのか思い出せなくて更に緊張し、結局頭が真っ白になって以上ですと素早く言って素早く座った。

座ったあともまだ緊張しっぱなしで、結局親睦会に参加しておいて誰とも親睦をはかることもできないままに親睦会はおわった。

店を出るとチャラい四人組が二次会をやろうと言い出したけれど、僕の心は完全にノックダウンしていたので断った。

結局断ったのは僕と小林さんだけだ。

僕は早く帰りたくて仕方がなかったので駅に向かって歩くと、小林さんも僕にひっついてきた。

「坂井さん・・・・・でしたよね?」

「はい。そうです」

「駅まで一緒に帰りませんか?」

御一緒しますというとなぜか小林さんに笑われてしまう。

「坂井さんって人見知りですか?」

「そうですね」

「さっきの自己紹介おもしろかったですよ」小林さんはわらって、さっきの僕の真似をする。

見せられるこっちとしてはたまらなく恥ずかしかったので手のひらを小林さんの前でブンブンと振ってやめさせようとしたけれど、結局最後までやられてしまった。

「小林さんてもっと怖い人かと思ってました」

「あたしも坂井君と一緒でちょっとビビってたから舐められないようにしてただけだよ。おかげで親睦会、すごい疲れちゃった」

駅に着くと連絡を取り合えるようにしておこうと言われメールアドレスと電話番号を交換してそれぞれの家路についた。

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