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みぞおちの虫  作者: 松田
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風化していく

結局次の日の深夜に一通、美咲からの返信はあったがすぐに返してもその日は帰ってこなかった。

今までにそういうことは何度もあったが今回は嫌な事ばかりが浮かんでは消え、虫も僕をより苦しめた。

どうせ今頃飯塚といちゃいちゃラインしているんだろう。

どうせ夜は僕とやっていたみたいに飯塚と電話しているのだろう。

だから僕にはなかなか返さないで距離を置いているんだろう。

どう考えてもポジティブにはなれない。

虫も好んで淀んだ灰汁の部分ばかり食べた。

けれど、そんな日が二三日も続くと不思議とその痛みに慣れてきて、彼女の返信が遅いこと、少ないことに変な理由をつけてもそれで苦しむことはなくなっていた。

そうするとなんだか何もなかったかのように不思議と心がおだやかになっていった。

虫は何もかもめちゃくちゃに弄り回していたようで、実は僕を鍛えていたんじゃないかとさえ思った。

彼女が僕に結婚したいと言ったことが僕の中で妙に引っかかり、そのせいで彼女に裏切られたように感じて気持ち悪くなっていたのか。要するに弄ばれていたんだ。

悲しくはなかった。

むしろ結論に辿りつけたことでさっぱりした気分になった。

ちょうどその夜から彼女からの返信もポツポツと増えてきてはいたが、どうにも気分が前ほど盛り上がることはなかった。

どんなに返信が遅くても、もう美咲にやきもきすることもなくなったのは、きたら返せばいいと考えて待つことを心からしなくなったからなんだと思った。

美咲の存在は自分でわかるくらいの速さで砂のように崩れていったが、僕はもうその砂を焦って掻き集めようとはしなくなっていた。

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