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みぞおちの虫  作者: 松田
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細い糸

「そういえば今日飯塚君からラインきたよ」

美咲にそう言われてからはもうそのことしか考えられなくなった。

なにより彼女が飯塚とのことを僕に打ち明けてほんの二三日のこのタイミングで送られてきたことが、僕にはなにか意味があるように思えてならなかった。

遊ぶ約束はしたのかとか、ラインでいちゃついているのかと思うとまたみぞおちのあたりが疼き出す。

「なんて言ってきたの?」

「この間はごめんねって」

「この間って、何ヶ月も前じゃん」

奴の話をしているとだんだんと気分が悪くなってきた。

「それでなんて返したの?」

「別にいいよって」

そこで許してしまうところがまた気持ち悪かった。どうしてそんな気色の悪いことをされて平気でヘラヘラしていられるのか僕には全くわからない。そして、彼女に対してもだんだんと怒りが湧いてくるのを感じた。

彼女が面倒くさいことを言い出す人間じゃなければ死ねと言ってやりたいほどだった。本気で死んで欲しかった。

さらに悪い事にどんな話をしてるのかと聞いてみると詮索してくるなと言われてしまったのである。けれど、気になるものは気になるししょうがなかった。むしろ彼女があからさまに僕を突っぱねたことに対してさらに憤ったけれど、どこに発散していいのかもわからずに溜め込んでしまった。

その日の寝覚めは最悪で、また虫は容赦なく僕を襲ってきた。

特に何もすることがないのをいいことに虫はいつまでも暴れ続けるので、その日はずっとベッドの上で寝た。

睡眠不足ということもあり、最初のうちはすんなり眠れたけれど、三度目の睡眠からはそうは行かなかった。

無理に寝ようとしてもいつまでも眠れず、だんだんと背中が痛くなってきて、ただ眠っているだけなのに疲れてしまった。

そうは言っても別に体力を使うようなことをしたわけではないので、今夜もまた眠れずにベッドの上を転がっていた。

ラインの通知も寝れるかもと思ったところでいつも僕の目を覚まさせた。

暗いところで明るい画面を見るのも嫌だし通知にいちいち起こされるのも嫌だったので電話をしようといって返事を待たずにかけた。

「もう寝なよ」

彼女は繋がった途端にそう言ってきた。

「まあ、眠れないんだよ」

「どうして?」

「最近不眠症なんだよ」

彼女はふーんと納得しているのかしていないのか良く分からない返事をするとはぁとため息をついた。

「どうしたの?」

「なんでもない」

「そっか」

「ねえ」

「ん?」

「毎日ライン送ってこないでよ」

「なんで?」

「別に話すことないんでしょ?」

「まあないけど」

「じゃあいいじゃん」

「話したくなるんだよ」

完全にというわけではないが、嘘だった。理由はもっと別のところにあって、今話すのをやめたら彼女と離れ離れになるような予感がして、それが怖かっただけだった。

けれど彼女はここのところ毎日電話してんじゃんと畳み掛けてくる。

「話したくなるときもあるだろ」

美咲は別にないと言うともう寝ようよと言って黙り始めた。

僕も眠ることにして黙った。

目が覚めた時にはもう昼の一時回っていた。

僕はそのことをネタに美咲に話しかけたのだが、美咲の返信がその日に来ることはなかった。

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