午後五時のカルピス
夏休みが終わると大学で最初の講義があったがそれはサボった。
この日は後期の科目決めのために一年生には全員招集がかかっていたのだが、だからこそ行かなかった。というより行けなかったのだ。
小林さんに会うかもしれないと思うとどうにも足が動かなかった。
僕らが付き合い始めた日から何日もたったわけではないが何時間も飽きずにラインで話続けていた。
だからもう大丈夫かと朝起きて顔を洗い、部屋着から私服に着替えては見たが家を出て駅までの道を少し歩くと腹が痛くなり結局家まで戻ってしまった。
自分の部屋のベッドに飛び込むとさっきまでたいして眠くもなかった筈なのに気が付けば午後になっていた。
もう講義も完全に終わったろうと思うとなんだかとたんにやるせない気持ちも湧いてくる。
大学に行くこと自体にはあまり興味がない。大学に行けば小林さんに会える。だからこそ行きたかった。けれど、だからこそ行けなかった。
要するに、成功したいがために舞台に上がった役者がその想いが強すぎて舞台であがってしまうようなもので、変に緊張してしまっていたのだ。
もう遅いと思うと諦めもついて妙に落ち着けて来るのだが、今は落ち着いたところで何をすればいいのかわからない。
おばあちゃんが送ってきたカルピスをコップについで部屋に持って行ってちびちび飲んでいるとあっという間に午後の五時を回っていた。
時間を無駄に使ったような気になると小さなため息が自然と出た。
他にやる事が思いつかず、仕方なく風呂に入ろうと重い腰を持ち上げ服を脱いで湯船に浸かった。
湯船の内側から風呂の蓋を閉じて、サウナごっこをしてみたけれど馬鹿らしくなってすぐやめ、体を洗ってさっさと上がった。
何に対してもなんとも思わない自分を心の中でそっと非難してみたけどやっぱりそれもまったく響いて来ない。
部屋に戻るとケータイが点滅していることに気がついた。
それは小林さんからのラインだったけれどやっぱり返す気になれなくて、既読をつけないように通知画面で読んでから寝た。




