きっかけの後編
受付だけで僕は疲れてしまい、中に入ってしばらく水槽をながめてから近くの休憩所のイスに重い腰を放り込んだ。
しばらく休んでるから魚見てきていいよと小林さんに言ってうなだれ、受付でのことを思い出して心の中で泣いていると頬に冷たいものが急に触れる。びっくりして見上げると一度やってみたかったんだと言って小林さんはいたずらに笑って一人じゃつまらないから一緒に行こうと言うが、僕といる方が恥ずかしい思いをすると言うと彼女に腕を引っ張られ無理矢理に連れていかれた。
休憩所から一番近い水槽を眺めた。
「サメと小さい魚一緒に入れて大丈夫なのかな?」
「サメは普段温厚だからなんか食べさせておけば大丈夫なんだよ」
小林さんはなるほどと言って魚の大群を目で追う。
「あれカツオだっけ?綺麗だね」
「群れで泳ぐのはイワシだよ」
「あれ?そうだっけ?」
そう言って頭をかいて笑ってみせる彼女の姿はどこかに落ち着くものがあり、一旦落ち着くと手を繋いだままだということに気がついてまた緊張してきた。
「次行こ」僕の手を引きながら満面の笑みを浮かべる。
彼女の暖かい掌の中でいつの間にか励まされていた自分に気付き、勝てないと思うとなんだかそれも気持ちが良かった。




