久々の陽気
朝になって目が覚めると、僕は知らない場所に寝かされていた。
ビックリして体を起き上がらせるも全く見に覚えのない場所でどうしたらいいかわからない上に起き上がった反動で頭に有刺鉄線に縛られたかのような痛みが走って頭が考えるのをやめてしまった。
再起動するために少しだけぼーっとして、さあどうしようと思いとりあえず枕の近くに座っていた熊のぬいぐるみを手にとってみた。
そもそもここはどこで、なんで僕はこんなところにいるんだっけ。
この熊にも、うちのやつのように妙なヘコミのないふかふかなベッドにも、この散らかりのない広い部屋にも全く見覚えがない。
熊の両手を引っ張りながら昨日何があったかを思い出そうとしても大学の食堂までの記憶しかない。
そうだ。僕は熱があったけど無理やり大学に出ていくつか講義を受けていたはずだ。昼になったら食堂で一休みした。そういえばその時小林さんと一緒に帰ろうと話して、たしかそうしようと言ったはず。
僕は早速自分のカバンを見つけてケータイを取り出し、小林さんに一緒に帰れなくてごめんと打った。
しばらく待って返信が来ないのでケータイを放り出して再びベッドに寝転がった。
さっきは気がつかなかったベッドのいい匂いに、僕の頭はまたぼーっとしてきたが、なぜかアソコはぐんぐん冴えてきた。
なんだこれ、と思ったけれどまだ下がりきってない風邪のせいか指一本動かそうとは思わず、まあいいかと思って放っておいた。
突然肩をゆすられて飛び起きるとそこにはいつの間にか小林さんがいる。
「あれ?なんでここにいるの?」
「なんでって、あたしのうちだからだよ」
「え?でもさっきまで誰もいなかったけど」
「ついさっき帰ってきたし、誰かいたらあたしが怖いよ。空き巣じゃん」
何がなんだか分からなくなり時計を見てみると既に午後五時を回っていた。いつの間にか寝入っていた事に気がついてすぐにベッドから飛び退いた。
「やっぱりね、変なライン送ってくるから昨日のこと覚えてないんじゃないかと思ったよ」
やれやれといった感じで小林さんは首を横に振った。
「昨日のことどこまで覚えてるの?」
「ええっと、食堂に行って小林さんと話してそこから先のことは全然・・・・・」
「そっか」そう言って吐き出した彼女のため息はやけに色っぽくみえて、うっかり生唾を飲んでしまった。
「僕、なんか言ったの?」
「いや、なんにも言ってないよ。一緒に帰ったことも忘れちゃったんだと思って」
「え?結局どうなったの?」
「あたしと坂井君はちゃんと約束通り一緒に帰ったけど、その途中で坂井君が倒れたからうちに運んできたの。」
「僕、倒れたんだ」
「風邪引いてるのに無理してつり革に捕まってたからね。座ればよかったのに」
「すみませんでした」
「あー、坂井君重かった。おんぶしたら肩こっちゃったよ」
「お揉みします」
そう言って小林さんの前に座り肩に手を伸ばし、肩を揉むと彼女は突然ぷっと吹き出した。「なんで肩揉むのに正面なの。キスされるのかと思った。ていうかお揉みしますって」
僕は間違えに気づき、後ろに回り込もうとするがいいよいいよと言って止められてしまう。
その後は散々彼女に笑われて恥ずかしかったけれど、久々に僕も楽しくて。思えば高校を卒業してから大笑いしたのなんて久々だったんじゃないかとすら感じた。




