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商人巡回中



 きっと戸惑いはあっただろうが、心優しいマリーはロウトの謝罪を受け入れてくれたのだろう。

 そこからは毎日のように連絡を取り合い、離縁をする時期を見計らってたのだと言う。

 ロウトとしては早い内に絶縁をしようとも考えていたらしいが、どうにも踏ん切りがつかなかったらしい。

 それのせいでマリーが面倒を抱え込む羽目になってしまった。

 だから気分転換は必要だ。



 「ふふふ。用事と言うのはね。……貴方、村に奴隷商人が来ているのは知っているかしら?」



 ちょっと間を置いてから吐き出された言葉にマリーは目を瞬かせた。

 奴隷商会が貴族であるマリー達一家に挨拶に来る事は稀にあるが、滅多に奴隷を購入しない貴族には近付かないはずだ。


 奴隷とは言っても短期の仕事だと考えればいいだろう。

 鎖で繋がれてはいるが一定期間の間無報酬で働けば、元のような生活に戻る事ができる。

 奴隷になるのは貧しい農村から売りに出された者や罪を犯した者、仕事が見つからなくて仕方なくなる者がいる。

 最後の場合のみ、期間が決まっていて、一年間売られた先で働けば奴隷と言う身分から解放される。

 前者の場合には売られた先によるが、運がよければ一生に渡って働ける職場にいけるかもしれない。


 少し理解し難い身分である奴隷。

 一般人とは異なる彼等を扱うのが奴隷商人だ。

 人身売買は倫理観に反する事だとは言っても、本当ならば死刑にされていた人間にも生きるチャンスが与えられるのだ。

 一概に悪い事だとは言えないだろう。


 奴隷になったからと言って虐げられるわけではない。

 普通よりも扱いは悪くなってしまうだろうが、暴力は振るわれず、もしかしたら住んでいた村よりも良い物が食べられるかもしれない。

 奴隷を扱う商人達には国から支援金が渡される。

 そこから奴隷達の衣服や食事等の金を出しているそうだ。



 「確か去年も来ていたのではありませんか? 私は良く知りませんが、奴隷商人とはそう頻繁に来るもの何でしょうか?」


 「此処を越えた貴族――コーランド子爵とか言ったかしら――に売りに行くのでしょう。彼等は頻繁に奴隷を買い換えますからね」


 「奴隷の人達も可哀想ですね。私の記憶が正しければ、一定期間が過ぎる前に再び売りに出された人は任期が延びるんでしょうか?」


 「その通りよ。だから奴隷を買うと決めたなら、きちんと一定期間は置いてやらなければいけません。そうそう。話が逸れてしまいましたね。その奴隷の中に貴方好みの男性が居るそうです」



 母の言葉を幾度か繰り返して考えているのだろう。

 ようやく固まっていた思考が元に戻り、マリーが目を輝かせる。

 マリーは趣味である紳士観察ができて、相手は衣食住のしっかりした働き場を見つけることが出来る。

 特に労働と言う事はないが、如いて言うならばマリーの目の保養役だろうか。



 「あ、でも。お父様は嫌がるかしら…」



 マリーの父親は貴族でありながら、奴隷制度というものを少々苦手としている。

 人間を売買すると言うのが気性にあわないのだろう。

 根っからの善人である父からすれば、奴隷のように人間の尊厳を損なうような好意は受け入れがたいのだろう。

 ただ、奴隷制度が少なくない数の人間の命を救っている事は認めている。


 友であり夫であった男を捨ててから、マリーは以前よりも塞ぎがちになってしまった。

 可愛い可愛い愛娘に次の結婚しあわせを強いる気は無いが、せめて前向きにはなって欲しいと言うのが父の本音だった。



 ※ご静読有難う御座いました。


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