春の日差し
※これは大人しい令嬢とおじいちゃんとの恋愛話です。
※趣味に合わないという方、年の差苦手という方はお逃げ下さい。
※個人的な趣味で書いている小説です。誤字脱字等のお知らせお待ちしています。
※深い世界観設定等はありません。軽いお話としてお読み下さい。
※支離滅裂にご注意下さい。
のんびりとした春の日差しが温かい午後の事。
人間と淫魔との間に生まれたマリーと言う女性は長椅子に身を預け、束の間の休息をとっていた。
この世界に生を受けてから17年。
花の少女時代を花嫁修業で無駄にし、社交界に関する知識を詰め込むだけの勉強。
それらを捧げるに値する結婚相手であればマリーも文句を言うつもりは無かった。
家同士の関係で結婚するのは仕方ないと諦めていたし、何よりも女である自分に決定権があるとは思ってもいないからだ。
悲しいことに、彼女の結婚相手は見ず知らずの相手ではなく、よりにもよって幼馴染の男だったのだ。
無神経、傲慢、口が悪く女癖も悪い。そんな男だ。
彼には確かちゃんとした婚約者がいたはずだが…女癖の悪い彼に呆れて離れたのかもしれない。
家柄的には幼馴染の彼の家の方が少しだけ高い。
結婚を断ることも出来ず、結局は流されるままに結婚をしてしまった。
けれど。
彼女はこの国に生まれて本当に良かったと思った。
周りの国々の決まり事も変わっているが、この国も負けず劣らずだ。
『子を生す為の行為は妻または女の同意無くしては行ってはならぬ』
結婚自体は家の決定に逆らえないが、性行為に関しては女の方に決定権がある。
残念ながら奴隷などの身分の者には適応されないが、それでもあるだけマシと言うものだろう。
マリーもその決まり事を使って、女遊びの激しい夫との夜を避けている。
幸いなことに。夫であるローレントは公爵家の三男。
無理をして子を為さなくてもいい立場の結婚だ。
「…奥様。旦那様が…その…」
結婚するまでの道のりを夢見心地で思い出していたマリーは、控えめな侍女の声に身体を起こした。
優れない顔色で溜息をつかんばかりの彼女は毎日のように口にする言葉を吐き出した。
「また、女の方をお連れになっています。おそらく中庭に見られるかと思いますので」
「そう。また、なのね…はぁ…。ありがとう。部屋に戻ります」
困ったような表情で謝る侍女の頭を軽く撫でてから、マリーはサイドテーブルに置いていた本を手にとって歩き出す。
声をかけてきた侍女も慣れた動作で長椅子と日傘を片付けて後から付いて来る。
最近入ったばかりの侍女はマリーの事を心底尊敬していた。
見た目と家柄だけは素晴らしい夫と結婚したというのに悲観することはせず、毎日を楽しそうに過ごしているところに若干の憧れも感じている。
とても自分では真似が出来ない。
嫉妬深い己がいけないのだろうが、それでも毎日毎日飽きもせず、違う女を家に連れてくる夫に対して何かしらの感情を抱かずにはいられないと分かっているからだ。
何度かその事をマリーニ伝えてみた事はあったが「私は興味が無いから…かしらね?」と意味深な笑みと共にかわされている。
是非ともその秘訣を教えて貰いたい侍女ではあるが、最近になってようやくその意味が分かりつつある毎日だ。
「奥様。何か御要りような物は御座いますか?」
「いいえ、何も。用事が無いのなら貴方も此処で時間を潰していってくれないかしら? どうにも一人だと暗い思考に陥りそうで」
「そう言う事でしたら。御一緒させて頂きます」
ふわりと微笑むと「ありがとう」とマリーは感謝の気持ちを伝えた。
何度も読み返している本を開き、再び幻想的な世界に酔いしれる。
現実では決して起こりえない非日常。
それらが見事に表現された小説をマリーは心から愛していた。
※ご静読有難う御座いました。