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魔王の村長さん  作者: 神楽 弓楽
二章 村長たちの村おこし
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30 「村長の魔力特訓」

スキルに頼らない魔力操作、その取っ掛かりを見つけた気がした俺は、あれからレナを裁縫を教えてもらう約束をしているということでアラクネの元にまで送り、俺自身は村の畑から十分離れた見晴らしのいい開けた草原で、あの感覚を掴むべく魔法の特訓を始めた。


しかし、その特訓の結果は芳しくなかった。



「【光よ(ライト)】」


呪文(スペル)を唱えると拳大の白く光る光球が空中に現れる。

その光球を一瞥して、続けて呪文(スペル)を唱える。


「【光よ(ライト)】【光よ(ライト)】【光よ(ライト)】」


連続で唱えた呪文(スペル)は、問題なく成功し新たに光球が三つ現れる。


「うーん……やっぱ違う」


四つの光球が周りをふわふわと周回する中、俺は首を傾げる。


あの時感じた魔力の流れが、何度やってもはっきりと知覚することが出来なかった。

漠然とした感覚だと、集中すれば何とかこれかな? というものを知覚することが出来た。

しかし、あの時感じたこれだ! と確信めいたはっきりとした感覚は一度も訪れなかった。


あの時と何が違うんだろうか?


あの時と同じ呪文を使っても、二重三重と重ね掛けしても、攻撃呪文、支援呪文、回復呪文、様々な系統の魔法を試してみたけどやはり違った。


取っ掛かりを得たことですぐにでもゴブ筋達のように出来るようになるだろうという考えは、甘かったようだ。


掴んだと思った矢先に、指の隙間から零れ落ちていくようだった。


「あ゛ーもうっ、何が違うってんだ。クソッ」


それが苛立たしくて、頭を乱暴に搔き毟って悪態つく。


ことこの魔力操作に関しては、ゴブ筋たちは全く当てにならない。

魔力操作を自然に扱えるゴブ筋たちが当てにならないのは、自然と扱え過ぎてその技術を説明するということが出来なかったからだ。


『ぐっとやって、ぶわーっ! 』


なんて言い方をされても俺には分からない。尋ねた全員が似通った回答をするのだから、俺は早々に教えてもらうのを諦めた。


だから、到達点はゴブ筋たちによって示されてるけど、そこに至るまでの道筋は自力で拓くしかないのだ。


スキルの補正があるとは言え、魔力(MP)を扱うことは出来てるんだからあと一歩なんだよな。


だけど、一歩が踏み出せず悶々としてしまってる。


「落ち着け、一度冷静になってもう一回集中しよう」


大きく息を吸って、吐いて高ぶる気持ちを努めて抑えて平静を心がける。深呼吸を繰り返していると、自然と瞼が下りて目が閉じた。


「すー……はー……すー……はー……」


そのまま一分近くそうしていると気持ちも随分と落ち着いてきた。

こうしていると視覚以外の感覚がより研ぎ澄まされるようで、また程よくリラックスが出来る。


「あ」


そう考えてた矢先、俺はあることに気付かされた。

目を閉じることで得られる研ぎ澄まされる感覚と、程よく脱力したリラックスした状態


そうして感じることの出来る周囲の風景と自分自身の体の様子。


「これだ」


半ば確信を持って俺は、思いを声に出した。


「【光よ(ライト)】」


目を閉じたまま俺は再度呪文(スペル)を唱えた。



そして、俺はその際の魔力の流れをはっきりと知覚することが出来た。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



体内魔力の流れの感覚を掴むコツを発見した。

魔法を使う時に目を閉じてリラックスした状態、もしくはそれを十分にした後にすることではっきり知覚することが出来るようだ。


色々と試した結果、目を瞑って深呼吸することが必須で、立ったままより座るか寝ころんだ方が入りやすいことがわかった。


胡坐を組んだ辺りで気付いたけど、これって俗にいう瞑想に当たるんじゃないか?

なんかそう考えるとしっくりきた。


そして、何度も瞑想状態で魔法を試す内に、自分なりに体内魔力の流れと言うのが分かってきたかもしれない。


体内魔力というのは普段は一部を血のように体の中を循環しながら、大半は下腹部の辺りに溜っている。呪文(スペル)を唱えると、その下腹部に溜ってる魔力が普段巡回している魔力の経路を辿る形で移動して、手先から外へと放出される。そして放出された魔力を燃料に魔法が発動する。

そんな感じだ。

ただ、これは呪文の種類よって多少異なるみたいで、超初級属性呪文である【光よ(ライト)】、【水よ(アクア)】、【火よ(ファイア)】などは、下腹部の魔力ではなく普段巡っている魔力の一部を放出する形だった。そして連発して見てわかったことだが、循環している魔力は減少すると、その都度下腹部から魔力を減少した分だけ供給して一定に保つようにしているらしい。


また、属性回復呪文だと一度手先から魔力を放出した後、全身から万遍なく浸透するように再吸収されて、一時的に体を巡る魔力の総量が増えた。

身体能力やHP自然回復量を一時的に上げる強化呪文を使っても似たようなことが起きた。


まだはっきりとしたわけではないけど、高い身体能力と体を循環する魔力というのは何か関係がありそうだ。



今まで全くと言っていい程分からなかったことを考えると、体内魔力をはっきりと感じることが出来るようになったことは大きな一歩となったと思う。


だけど、まだスキルなしで体内魔力を操ることはまだ出来そうになかった。



ふと空を見上げると、日は西に傾き始めていた。正午はもう過ぎてる13時辺りか、 太陽の位置からそう判断する。



「もうそんな時間か……」


レナと別れた頃から考えるとかれこれ4時間近く経っていた。


今回はこれくらいで満足するか。体内魔力が知覚できるようになっただけで十分な成果だ。

次の課題としては、瞑想しなくても魔力をはっきりと知覚できるようになることだろうか。数段飛ばしは難しいことは理解したから、出来そうなところから一歩一歩確実に前進していきたいな。



胡坐をかいて座り込んでいた俺は、ズボンについた土汚れを払って立ち上がった。


長時間同じ姿勢でいたけど、肩が凝ったとか腰が痛いとかならないんだな。

体を捻ったり伸ばしたり軽いストレッチをしたけど問題なかったようだ。つくづくこの体はすごいと思う。


「そろそろ村に戻るか」


帰ったら頑冶のとこに顔を出そうかな。そんなことを考えながら俺は遥か遠くに見える村へと踵を返した。


村に帰る道中、頭上を村の方からきた複数の鴉天狗が通過していった。【気配察知】の反応から見ると、俺の仲間みたいだった。しかし、今現在種族が鴉天狗である仲間には心当たりがないので小鴉辺りの眷属かな?

何となく目で追っていると鴉天狗たちは村とは正反対の方向、俺のいる草原を超えた先にある険しい山の方へと飛び去っていった。


何だろうか? 鉱石の採取に向かったのかな?

あとで小鴉にあったら聞いてみよう。




光よ(ライト)

【光魔法】の呪文(スペル)

MPを消費して、光球を生み出す。MP消費量に応じて光量を大きくすることが出来る。この呪文で一度に生み出せる光球は一つだけ。


効果時間は約5分、MPを消費することで効果時間を延ばすことができるものの、20分を超えて光球を維持するのはコスト的には悪い。


冷却時間(クールタイム)は、あってないようなものなので連続発動させることができる。


主に一時的な光源として使われる。





ゴブ筋たちは魔力操作を呼吸をするかのように、2足歩行の生き物が2本足で歩く様に当たり前の技術として扱っているので、呼吸の仕方や2本足での歩き方を人に教えるようにカケルに、魔力操作の技術を教えるのは難しかったです。


以前の後書きから更新は厳しい厳しいと言って、更新をしていますが

夏休みは、すごくすごくリアルが忙しいので、恐らくきっと現実逃避をしていなければ10月辺りまでの更新はないと思います。ご了承ください。


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