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魔王の村長さん  作者: 神楽 弓楽
二章 村長たちの村おこし
29/114

27 「村長と天狐たちの混浴風呂」

色気なんてないです

解体場を後にした後は、夕食の準備をする天狐たちの手伝いをした。忙しくなる前に早めの夕食をとってみんなが広場で夕食を取り始める時は夕食の配膳も手伝った。


夕食になると昼には遠出していた仲間たちも村に戻ってくるので、それこそ広場のテーブルが満席になるほどモンスターで溢れかえる。そして仲間が一度に集まれば、ましてやそれが食事であれば、肉を盗った盗られたの掴み合いの大喧嘩といった騒動があちらこちらで起きてしまう。元々個性我の強いモンスターの集まり、穏やかな気性の仲間も多くいるけど良くも悪くも元気な血気盛んな仲間もまた多かった。


俺はその対応に追われ、みんなの食事が終わり周囲に散った頃にはもうクッタクタだった。



もう無理。今日は寝る。

アーツとか魔法の検証もしたかったけど、疲れた。もうやだ。明日する。



というわけで俺は、重い足取りで広場を後にして先日出来上がったばかりの大浴場に足を運んだ。




「くぅ~~~~ッ、気持ちいぃー………」


二日ぶりの風呂の心地よさについ声が漏れた。一度に何十人も入れる大きな湯船に俺はプカーと浮かんでいた。


あーやっぱり疲れた時は風呂だよ、風呂。最っ高だねー



この一週間の中で出来た施設の中で、一番嬉しかったのがこの大浴場だった。

のびのびと浸かれる広い湯船に、満点の星空が見れる露天風呂。


「あー癒されるわー」


温泉でないことが惜しいと言えば惜しいが、それは些細なことだ。


俺はこの幸せな一時を誰にも邪魔されることなく、ただただじんわりと全身に伝わる温かさに身を委ねてお風呂を満喫していた。



「あーそんちょー! 」


「………んぁ? 」


どれくらい浸かっていたかわからないが微睡んでいた俺は浴場に響いた舌足らずな子供の声で目を覚ました。


聞き覚えのある声だった。そして同時に何故ここで聞こえてくる筈のない声でもあった。

視線を浴場の入口に向ければ、まだ性徴期の訪れていない緑髪の少女が両手を万歳して立っていた。

しかも、その両隣と背後には見事なプロポーションの女性がおや?という表情で立っていた。


「オリー? それに天狐、アルフ、アラクネ………え、なんで? 」


おかしい、俺は夢を見てるのか?


「あらカケル、先に入ってたのね」


「失礼します」


天狐たちは、俺に気付いても驚いた様子もなく普通に声をかけてきながら中に入ってきた。

当然と言えば当然だが、入ってきた四人は全員服を脱いで素っ裸だった。


「そんちょー! そんちょー! 」


突然の事態に天狐たちに視線を向けたまま固まっているとオリーが嬉しそうにぺたぺたと駆け寄ってきた。

俺目掛けてお風呂に飛び込んできたオリーを反射的に受け止める。


その際に飛散したお湯を顔に浴びて俺はやっと我に返った。


「ちょ、ちょ、ちょっと待て!! 何故オリー達がここにいるんだ!? ここ男湯だよな!? 」


「おとこゆ? 」


俺がそう叫ぶと、腕にかかえたオリーはきょとんと首を傾げて、他の三人も何のこと?とばかりにお互いを見合わせた。



「カケル、ここは混浴よ? 」



「は? 」


突然天狐から聞かされた浴場の新事実に俺は言葉を失った。



大浴場は混浴だった。


俺は今日初めてそれを知った。


大浴場を使用したのは今日で二回目だし、最初は浴場完成時に村長()ということで一番風呂を1人で入らせてもらったのでその事実に気付くのが遅れた。



そうか、ここ混浴だったのか……



そんなわけで俺は天狐たちと風呂を一緒にすることになった。



まぁ、混浴なら仕方ない、のか?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆


それから俺は、風呂を出て洗い場でオリーの頭を洗っていた。

懐かしいな。こうしてオリーを洗ってると昔の従妹を思い出す。


「じゃあオリー頭流すから目を瞑って」


「んっ! 」


「はい、ザバー」


桶で汲んだお湯をオリーの頭にかけて泡を洗い落とす。

オリーの髪は、多く長いので洗い残しがないように念入りに何度もお湯をかけた。


「よし、十分かな。オリー終わったよ」


「んっ、ありがとそんちょー! 」


顔を上げてこちらを見たオリーはにぱっと笑った。



可愛い奴だなぁもうっとほっこりしていると、肩をちょいちょいと柔らかい何かで叩かれた。


「ん? 」


後ろを振り返ると、天狐の尻尾が目に入った。

尻尾の先から根本へと辿っていくとこちらに背中を向けて風呂椅子に座ってる天狐がいた。


「カケル、私の体も洗って」


天狐は顔だけこちらに向けてそんなことを言ってきた。


「………えっと本気か? 」


頭を撫でるとは、訳が違う天狐の要求に聞き返す。

流石に天狐と言えど、女性らしい女性の体に触れるのは躊躇われた。


「………そう」


躊躇っていると、目先の天狐の尻尾が動いてシュルリと胴体に巻きついてきた。あっ、と思った時には天狐のすぐ傍まで強引に引き寄せられた。



「………オリーには良くて、私にはダメなの? 」


どこか拗ねた様子の普段よりもトーンの落ちた天狐の声が聞こえた。


「い、いやーほらオリーはまだ子供だし、天狐は1人で洗えるだろ? 」


オリーは子供で、天狐は大人。少なくとも見た目はそうだった。


そう説得を試みると天狐は眉根を寄せて一層機嫌悪くした。


「…………そう。なら、これならいいでしょ? 」


そう言うが否や、突然天狐の全身が金色に輝いた。


まるで人の成長を高速で逆再生するように風呂椅子に座る天狐がみるみる内に縮み始めた。

女性らしい体だった天狐の体はどんどんと萎んでいき、体を拘束する尻尾も細く短くなっていった。


瞬く間のうちに天狐は、11歳のリンダと同い年に見える程の少女になった。


「どうカケル? この姿ならいいでしょ? 」



あー……そうか。ロリ化っていう手があったな。


自信満々の天狐の言うとおり、その姿なら抵抗もないのも確かだった。


「はぁ……わかったよ。洗ってあげるから離してくれ」


もう後がないと悟った俺は、両手を上げて降参した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『モントモ!! 』の数あるオプション機能の中にモンスターの容姿を変更するヒューマンフォルム、デフォルトフォルム、ミニマムフォルムの三つの機能がある。


ヒューマンフォルムは、従属の契約を交わして仲間にすることで、主であるプレイヤーと同じ種族の姿をとることができるようになるという設定で、仲間にしたモンスターを人型にすることができる。高位のモンスター程人に近い姿を取ることができ、低位の場合完全な人型になることはできない。またその加減は可能な範囲で変更も出来た。


分かり易い犬で例えると、初めはコボルドのような二足歩行する犬の姿で、一段階存在進化すると犬の着ぐるみを着た人のような姿になるというように段々と人に近い姿になっていき、最終的には人と全く変わらない姿をとれるようになる。


プレイヤーの間では人化なんて言ってたりする。



デフォルトフォルムは、モンスターの元々の姿だ。中には複数の形態を持つモンスターもいるけど、大抵は一つの姿しか持たない。まぁ、サタンのようなユニークモンスターは複数の形態を持っていることも多いけど。



ミニマムフォルムは、ヒューマンフォルムやデフォルトフォルムと同時に併用することが前提の機能で、モンスターを可愛くデフォルメする。ゲームに登場する全てのモンスターを常時ミニマムフォルム状態にするなんてことができた。これを使えば、ゾンビなどのグロくて不気味なアンデットも随分とマシな姿になる。


ミニマムフォルムにも何段階かあるが、最大まで上げると大抵そのモンスターは、幼児のような可愛らしい姿になる。ヒューマンフォルムとの併用は通常より背丈が小さくなり可愛らしい子供の姿になる。

そのため一部ではミニマムフォルムをロリ化なんて呼ばれていたりする。



このプレイヤーの好みによってモンスターの容姿をある程度弄ることのできる機能は、『モントモ!! 』が大ヒットした大きな要因の一つだ。



ゲームの時、その機能は、メニュー欄に表示される『オプション』の項目から使用することができた。

しかし、異世界に来たことで、俺のメニュー欄からは『オプション』という項目は消失した。それと同時にオプションから使用できた数多くの機能も使用することができなくなった。それは、モンスターの容姿を変更できる機能も例外ではなかった。


だから当然、その機能は機能しないと考えるのだが、不思議なことに俺から天狐の容姿を弄ることが出来なくなった代わりに、天狐たちは自らの意思でその姿を変えることが出来るようになっていた。


そのことに明確に気付いたのは、剣の稽古を初めて黒士が少女になったことがきっかけだった。

それまでは、ゲームの頃の感覚が抜けずに天狐たちが人の姿を取れることを当然のように受け止めていたせいで気付くのが遅れた。



混浴を知った時も思ったけど、思い込みって怖い。

下手にゲームの時の能力が通用するせいで、思い込んでいることが多い気がする。



気をつけないとなぁ……



機嫌よく九つ尻尾を振る天狐の小さな背中をごしごしと洗いながら俺は思った。





『ヒューマンフォルム』※ゲーム当時

別名、人化。

モンスターが人に近い姿になる。ゴブリン、エルフ、ドワーフといった亜人種にも有効だけど差異はそれほどない。

低位だと、辛うじてでしか人の姿を取れず装備できない武器や防具の種類も多いが、存在進化することで、その制限は緩和されていく。


最大の利点として、魔獣といった人とかけ離れた姿のモンスターも剣や鎧などの武器、防具を装備してそれに対応したスキルを育てることができること。

欠点としては、完全な人型になると弱体化したり使用できないスキルがある。


『デフォルトフォルム』

モンスターの元々の姿。

大抵は一種類しか持たない。ユニークモンスターや高位のモンスターには複数の形態を持つ者が多い。


複数の形態を持つ場合は

第一、第二形態

通常モード、マジ切れモード

カボチャ、殺人鬼、雪だるま

などモンスターごとに呼ばれている。



『ミニマムフォルム』

別名ロリ化、ショタ化

モンスターを可愛くデフォルメした姿になる。(デフォルトフォルム併用時

何段階かあるミニマムフォルムの最大にすると大抵そのモンスターの幼児のような姿で可愛らしい姿になる。

ヒューマンフォルムと併用すると通常より背丈が小さくなり可愛らしい子供の姿になる。

その関係で、一部ではロリ化、ショタ化と言われている。


低年齢を対象とした機能だが、専ら使ってるプレイヤーの年齢層は低年齢以降の方が圧倒的に多い。紳士大歓喜。




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