表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の村長さん  作者: 神楽 弓楽
一章 村長と村民は異世界に
16/114

14 「村娘と村人の別れ」

俺とレナは子供たちが寝ている部屋をすべて回った。

結局、レナがいくら呼びかけても5人の子供たちは目を覚まさなかった。


レナは子供たちが生きていることを喜んでいたが、全く目を覚ます気配のない子供たちに不安を隠しきれていなかった。


全くを反応を示さない子供たちに俺ですら本当に目を覚ますのか不安になってしまうのだから、レナが不安になるのも当然だろう。レナは俺の前では努めて不安を顔に出さないようにしていた。まぁ、それでも隠しきれていなかったけど。

すぐに心を開いてくれるとは思ってないのでそのこと自体に何も思わないけど、今のレナに気を遣わせてしまっていることに我慢できなかったので、俺は途中から部屋を出て外で待つようになった。



部屋の壁が薄いせいでドア越しでもレナの声は外の俺にまで丸聞こえだった。ドア越しから聞こえてくる彼女の声からは子供達の無事を喜ぶことや心配する以外に先のことに対する不安も漏れ聞こえていた。


俺はその声を聞きながら黙って部屋の外でレナが部屋から出てくるのを待った。レナが部屋から出てくると、俺はレナをまた次の部屋に案内した。


30分だろうか、それとも1時間だろうか。時計がないせいで正確な時間はわからなかったが、最後の部屋の外でレナが出てくるのを待っていると、レナが部屋から出てきた。


部屋から出てきたレナの表情は、どこか今までと違っていた。踏ん切りがついたような覚悟が決まったような表情で、レナは部屋から出るなり俺に言った。



「お願いします。私を皆が眠ってる場所に連れて行ってください」


「……わかった。それ履いて俺についてきて」


その頼みを俺が断れる理由なんてあるわけなかった。俺はレナに革靴を渡して、レナを安置所に連れて行った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



安置所に辿り着いた。


俺たちが安置所に訪れた時、目に見える範囲では操紫(ソウシ)の姿はなかった。いや、操紫だけではない。ここにくるまでの道中、仲間の皆とは誰一人として出会わなかった。


恐らく、事前に影朗辺りが皆に伝えて皆は俺の忠告を律儀に守ってレナを怖がらせないよう姿を消してくれてるんだろう。


「カケルさん……お願いします」


「わかった」


レナは近くの棺桶の前に手を置いて、込み上げくるものを堪えてるような険しい表情で俺に蓋を外すように頼んできた。レナじゃ動かせない重たい蓋も今の俺なら簡単に動かせた。俺は中の人の顔が見えるように棺桶の蓋をずらした。


その棺桶の中に入っていたのは、緑髪の青年だった。まだ幼さの抜けてない顔と身長から考えるとまだ中学生くらいの子供だった。


「ルビン……っ」


棺桶の中で眠る子供を目にしたレナの両目から涙が流れ落ちた。

レナは震える右手を青年の頬に当てるとゆっくりと頬を撫でた。

そして、左手も青年のもう片方の頬に当てて両手で青年の顔を挟みこむようにすると、レナは棺桶の中を覗きこむように顔を乗り出し、青年のおでこに自分のおでこをコツンと突き合わせた。


本当に死んでいるのか確認しているように俺には見えた。


しばらくしてレナのすすり泣く声が聞こえた。レナの表情は隠れて俺には見えなかった。



ズキンと胸が痛んだ。


つらい時間になりそうだ。



すぐにでもこの場から立ち去りたい衝動に駆られながら俺は痛む胸を押さえた。




それから俺とレナは安置所に並べられた氷の棺桶を順番に回った。


113人。


それが亡くなった村人の数だった。その全てをレナは時間をかけてすべて回った。

当然のことだが、レナの両親もその中にいた。棺桶の中で眠る両親を前にしてレナは、わんわんと泣いた。泣き過ぎて声が枯れるほどに大声で泣いていた。つられて俺も少し泣いてしまった。



全てを回り終えた時には日は沈み夜になっていたが、俺とレナの周りに浮かぶ光球のおかげで辺りは明るかった。



「もう帰るか? 」


「もう少しだけ……」


俺の問いかけに1人の女性が眠る棺桶の前で、レナはその女性の手を握りしめながら答えた。

レナと同じ赤い髪の女性は、レナの母親だった。全てを回り終えた後、レナは再び母親の前に戻ってきていた。



操紫の施した死化粧で他の村人のようにレナの母親はただ眠っているかのようも見えるが、再び目を覚ますようなことは決してなかった。

涙で真っ赤に腫れたレナの両目からはもう涙は流れてなかったが、その表情はとても悲し気で寂し気だった。母親の手を絡めるように握りしめるレナの姿を見ていると、彼女がどれだけ母親が大好きだったのかが分かった。レナは、しばらく何も言わずに母親の手を握りしめ続けていた。


その間、レナは声には出していなかったが心の中では母親に色々語りかけてたんだと俺は思う。



一時間近く経って、レナは母親の手を離して立ちあがった。その時、レナは母親に向けて言った。


「お母さん、私もう行くね。お母さんとの約束、守るよ。絶対に。だからね、お母さんは心配しないでね」



その時出来る精一杯の笑顔を作って言ったレナを見て、俺は、強いなぁ……と心の底から思った。





正直、上手く書けた自信がありません。もしかしたら後日大幅に改稿するかもしれません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ