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過去編 1

 その噂を流した張本人の何者かは素知らぬ顔で彼をおとしいれようとしてくる。

「君が有名な言葉力というものを持っている子だね? 私にもその恩恵を授けてくれるか」

 幻悟少年は疑うことをしたくないので素直にその人物に返事をした。その人物も心の奥底にあるどす黒い陰謀いんぼう微塵みじんも見せないようにして、大人の見本礼儀を披露ひろうするフリで彼を信用させる。

「まぁ、いいですけど……。あなたは僕に何をしてほしいのですか?

「そうだな、このかわらとかを言葉の力とやらで割れるところをみせてもらえるか!?」


 彼はただその人物の前で言葉による特殊能力をみせただけなのだ。だからこそ彼に非があるってことは考えられないはずであった。幻悟少年は何者かに「町一番の権力者の家の瓦を割った」と噂を悪どく広められたので悪者に仕立て上げられたにすぎない(彼は被害者)


 何者かは町一番の権力者の家から瓦や物を盗んできた上に、犯人を幻悟少年の一家のしわざとうそをつき、外させるたくらみを成功させたようである。同じ町内の家庭は彼ら一家と疎遠になるしかなかった。それでも彼の性格を知っている町内の家庭の人物たちは彼がこんな真似をする子ではないとわかるので陰ながら支援してくれていたりしていたのであるが。


 騒ぎが沈静化するのを見計らったかのように幻悟少年にとって最悪な彼が関与する事件が重なる。


「明日は雨が降りそうな嫌な天気だなぁ」

 彼がつぶやいていた通り、この日は三日月が雨雲に半分以上隠された薄暗い夜であった。彼は家族との時間を過ごしている合間にちょっと外の景色を眺めに来ていたのである。なぜそんなことをしていたのかというと、なにかのきっかけでさっきまで幸せな家庭だったはずの雰囲気が台無しになる自分の両親のケンカが急に始まったからだ。


 そのケンカは壮絶で外にまで大声が響きわたっているほどであった。原因はこうだ。

「あなた、幻悟なんかどこかへ捨ててしまいましょう」

「何を馬鹿な……! 苦しい思いをしてまで生まれさせた子どもだろ。君と私にとって最愛の息子じゃなかったのかい?」

「確かに生まれてきた時はそう思っていたわ。でも、何? この子がこんな異形な子供だという事実は。 これじゃとても愛せないわ」

 

幻悟少年の母親は、父親の意見に耳を貸すことすらせず、必死の形相で烈火のごとく彼の父親を一方的に責め続けていた。

「あなたは近所の人達から我が家を化け物一家だなんて噂されてどう思っているの? 私は積極的に近所付き合いをしようとしていただけ。なのにあの子のせいで私までさけられているのはどういうことなの?」

「我が最愛の妻よ、落ち着いて考えてごらん。それに今は本人だっているんだよ! その話は二人きりの時に腰をえて話さないか?」








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