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language power(ラングウェッジパワー)  作者: 霜三矢 夜新
成人君兄妹、道也君との再会・ライバル登場!?
17/30

幻悟君と中学校 3

 幻悟のその言葉がそのまま≪言葉力≫の発動につながった。幻悟に言われた通りにその生徒は身近な人間から嫌がらせを受け続ける。早い話が他の生徒達が操り人形のように自分の意思と関係なく、体がロボットのような感じになって勝手に動くのだ。

「おい、お前ら。止めてくれよ! 俺たちは仲間だろ!?」

 この生徒と仲のいいらしい三~四人の生徒達はそいつに口をそろえて現状を訴える。

「俺達だってこんなことをしたくないんだ」

「体が勝手に動くんだよ」

「むしろ俺達の方が助けてほしいよ」

 

 それぞれの生徒が今の気持ちを攻撃したくないのにしながらその袋叩き状態にされている人物に伝える。他の一般生徒も急に操られている状態になっているのでやられているその生徒はたまったものではない。 幻悟は顔を背けた。成人や道也がそんな行動をしている所なんて見たくなかったからだ。しかし、成人には全く効果がなかった。道也も自分の中から湧き出てきた悪の気持ちを抑えることが出来ていたので、そのおかげで収まるまで理性で抑えられた。


 その効果がなかったりする理由は、成人が能力開発研究所の社員・真田雪さんからもらった『お守り』が大きな役割を果たしたからである。これには半径1mメートルぐらいまでの心から信頼しあえる親友同士にしか発動しないという制約もあった。そんな難しい制約にも当てはまるであろう道也が悪い気持ちを覚えたのは成人と5mくらい離れていたからである。


(しかし、幻悟君の言葉力はいつ見ても恐ろしい)

 成人はある種の恐怖を感じもするが、道也と一緒になって幻悟に近づいていく。彼らはそうした方が良いと思ったのである。幻悟はそれに気づく感じさえない。成人は奇妙な胸騒ぎがして仕方がない状態となってきていた。そして、それが現実となるのには時間がかからなかった。

「こんな騒ぎを起こしてしまったんだ、それなら一層の事………………」

 


 幻悟が自らの≪言葉力≫で死を選択しようとしていると感じて何かを判断した成人は無心で幻悟に飛びついた。後ろから道也も成人の援護をする。幻悟は完全に虚を突かれた感じのまま、二人に抑えつけられる。

「小海君に広長君?! 一体どうして君達が僕を止められたんだい?!?」

 幻悟は今の状況に疑問を覚える。それもそのはずだ、幻悟の言葉力によって彼らがこんなことをしてくれることなんてありえないはずだったのだから。

(研究所の三田さん・真田さんすいません、あなた方に断りもせずに幻悟君にすべてを話します。僕はもう我慢の限界に達しました) 

 


 幻悟が固まっている状態の所へ追い打ちをかけるような話を成人はしようとしている。そう決意したからだ。そして成人はついに我慢できなくなって幻悟にすべてを話す。これには道也も目を丸くした。

「おい、訳がわからないぞ成人!! どういうことなんだよ」

 成人は道也が狼狽した声を出してしまっているので落ち着かせようとこう言った。

「後で細部までちゃんと説明するよ。今はそれよりも幻悟君と話をさせといてくれるかい?」

「お、おお……わかった。じゃあ後で頼むわ」

 成人を信用して道也はとりあえず承知する。



                  2


「幻悟君、僕達兄妹が君を忘れていなかった理由から話すよ」

「え!? それじゃあ小海君の妹も?」

「うん、そうだよ。それより幻悟君、僕を小学校のときみたいにせいじんくんってよんでくれたっていいんだよ」

 成人は幻悟に向かって話を整理しながらしゃべり始める。≪言葉力≫発生時から幻悟の事を忘れそうになったこと・それを防ぐために能力開発研究所社員の真田さんからお守りをもらったこと・自分の妹である奈美が幻悟に最上級の感謝を込めた話をよくしていたこと・成人自身が幻悟の学校復帰後から幻悟の事を知らないフリするのが大変だったことなどとそのように話をまとめて成人は幻悟に向かって説明した。


「そうなんだ。そんな事実があるなんて知らなかった」

「それはそうだよ幻悟君、この話は本当言うと口止めされていたんだから。誰にだって? もちろん三田主任さん達にだよ」

 幻悟は成人が自分を覚えてくれていた事に感無量な気持ちになり、涙が出た。

「俺は嬉しいよ。せいじん君。これからはミッチ―も一緒にまた親友になってくれるかな?」

「水くさいこと言わないでよ。少なくとも僕はずっとそう思っていたよ」

 幻悟は成人の優しい物言いを聞いて、照れながらお礼を言う。


「ありがとう、成人君」

 幻悟と成人のやりとりの中で、話についてこれなくなってきている道也は成人に説明を求める。

「悪い、成人。いい加減教えてくれよ」

 幻悟は成人から話の打ち切りをお願いされて一旦話を止める。そして成人が道也の頼みに黙って首を縦に動かす。

「うん、そうだね。幻悟君、試してもらいたいことがあるんだけど」

 幻悟は成人から道也の昔の記憶を言葉力によって引き出せないか訊ねられる。幻悟はそんな行為をしたことなんかなかったが、実践してみようと考えて実行に移す。

「俺は訊ねる、道也の記憶から封印されし俺の記憶は思い出させられるか? 願わくば俺のこの≪言葉力≫で昔の思い出を目覚めさせてくれ!」

 幻悟の行動を道也は黙って見ていた。それもそのはずだ、現実離れしていることを短期間で多く体験しているのだから。

 

 急に道也の脳内からふいに子ども時代=小学校時代の思い出がフラッシュバックしてくる。これも幻悟の言葉力の影響であろう。道也が最初に思い出した小学校時代の状況は道也と成人と顔を思い出せない誰かが遊んでいる光景だった。すると突然、顔を思い出せなかった友人の顔がはっきりと思い出される。その顔の人物こそが幼き頃の幻悟であった。

「今、突然に俺の記憶の中にあり続けていたわだかまりがなくなった感じがする。幻悟君、俺達は昔から親友だったんだな。今なら俺だってお前達の話を完全に信じられるよ」

 幻悟と成人は道也の記憶が戻ったのがわかると、二人で心から喜びあう。



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