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language power(ラングウェッジパワー)  作者: 霜三矢 夜新
言葉の能力の正しい使い方と未熟さゆえの失敗
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成人君達と研究員のやりとり 2

「成人、聞いたぞ!」

 小海兄妹の父親は興奮気味ながらも笑みを浮かべていた。成人は父親が二の句を言う前に先手を打って今一番聞きたいことを問う。

「ちょっと待って! 二人とも。父さん、母さん。僕の親友に幻悟君って名前の子がいるんだけど覚えてない?」

 小海兄妹の両親は、彼の質問に対してお互いの顔を見合わせ 真剣な表情で悩みだす。


「成人、その子が新しく親友になったという報告? 違うの? 成人はいつも交友関係を教えてくれるからそうだとばっかり……」

「私もこの件は初耳だな。悪いがその話は後にしよう。それよりも成人、お前が体を張って奈美を守ったとお医者さんから聞いたぞ」

 どうやらあの事故の真実が、幻悟の<<言葉力>>によって彼が最後に希望した形へと変化されてしまっているようだ。幻悟が(成人の手柄にしてあげたい)と願った結果である。だが、成人は納得なんて到底できない。


 釈然としない気持ちが抑えきれなくなったので無駄と知りつつも本当の事実を両親に話してみる。

「違うんだ、奈美を事故から守ったのは幻悟君の<<言葉力>>のおかげなんだよ」

 小海兄妹の両親は彼の訴えを聞いても困ったように肩をすくめるだけであった。

「さっきから意味わからないことを言ってきたりしてどうしたんだ? 疲労からくる幻覚(!?)を感じているかもしれないし……まずは休め」

「そうね、成人はかなり疲れが溜まっていそう。体を休めてちょうだい」

 

 成人は両親からの的外れな答えに改めて幻悟の<<言葉力>>を思い起こす。

(完全に幻悟君の保護者代理の真田さんが言っていた通りだ。諦めきれなかったけど淡い気持ちを見事に裏切られたな。それなら後で奈美と一緒に幻悟君のことを忘れないと約束し合おう)

 成人は親友の少年を忘れまいと心に誓った。それは幻悟をいつまでも思い続けるという彼の意気込みの表れだ。今、彼は心配してくれている両親を安心させようと思う。

「お母さん、その服なかなか似合っているよ」

 

 成人と彼の妹の奈美は同じようなことを考えていたようだ。奈美は両親に話し方や話題をうまく選択して目が見えていることを匂わせた。小海兄妹の両親がその奈美のサインに気づく。

「えっ? この制服の事……って奈美! あなた、まさか目が見えているの?」

「うんっ、 お母さん。 何か当ててみようか? 今日のお父さんの服装は白色のスーツ! 正解? その色の特徴なんか今まで教えてもらったイメージ通りなんだけどな」



 小海兄妹の両親は娘の元気のいい声を聞いて、彼女の目が治った理由よりも嬉しさが勝って娘を抱きしめながらすすり泣いた。これには彼女も困ったが嫌な気分にはならなかった。この事故から二~三日の間、小海兄妹の両親は仕事を休んで彼らをつきっきりで看病した。成人も両親の好意に甘えて一日の大半を睡眠にあてて体力を回復させる。そして彼は二日目から両親と一緒に病院の個室で妹の話し相手をしたりしていたのである。


「小海さん、ご安心ください。お子さん方は順調に回復しています。娘さんなんてどうしたことか目の病気も完治していますしな」

 小海一家は個室に検査結果を教えに来た初老に近いお医者さんに太鼓判をおされて安心した。そのまま二人共に退院許可が出る。それから成人達は父親を中心に家族全員で自分たちの家へと向かっていった。その日は全員が家についてまもなく、疲労他の複合要因があって例外なく熟睡する。その後、小海一家は三~四日程あわただしい日が続いていたが、一週間もすると普段の生活に落ち着いた。成人はその状況になったと見越して妹を家の庭に呼び寄せる。

「奈美―――っ、話があるんだけど来れるかい?」

 

 その成人の声に気付いた母親が親切にも彼の妹に伝えてくれた。

「奈美、お兄ちゃんがお庭で呼んでいるわよ」

「えっ、本当? それなら行かないとね」

 成人は妹が庭にやってきたのと同時に、両親に聞かれないような小声で病院で伝えられなかったことを話し始める。

「どうしたの? 内緒の話だったりとか?」

「うん。奈美が幻悟君のことを忘れずにいてくれているかなと思ってな」

「当然だけど絶対忘れてないよ」

「奈美、でもこの事実だけは覚えておいて。ボク達以外は彼の存在自体を忘れていることを」

 

 彼がそんな悲劇をきり出すと、彼の妹はうなだれてしまった。

「わたしにとってもかけがえのない人なのに残念」

「そうだね、ボクもとても残念だよ。でもこれは二人だけの秘密にしておこうな」

 彼らは、幻悟の<<言葉力>>発動後にも『お守り』←真田社員にもらったもの。おかげでいくら日数が経っても心の片隅では一日たりとも幻悟のことを忘れずに思い続けることを続けていける。こんな夢のような体験をした小海兄妹が二人とも中学生になった時に幻悟と出会うことになるがそれも運命のなせるものなのかもしれない。







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