表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました

作者: 明衣令央
掲載日:2026/04/11


「アリスティア、君を俺の親友と思い、思い切って相談する。俺には君が、ともに国を担うために頑張ってきた親友――戦友としか思えない。君を一人の女性として愛することができないんだ」


 突然そんなことを言い出したのは、ブランシュール公爵令嬢であるアリスティアの婚約者であり、このディアンド王国の王太子であるヘンリーだった。

 ヘンリーとアリスティアの婚約は、ディアンド王家とブランシュール公爵家との間で結ばれた、正式なものだった。

 二人は同じ年で、王立学園を卒業後に結婚式を挙げることになっていた。


「結婚式は二か月後ですが、殿下はどうなさりたいのですか?」


「俺との婚約を解消してほしい……。父上にも、俺が全て悪いと説明する。君を愛せない俺が君と結婚をしても、幸せになれないと思うんだ。それに俺には……愛する女性がいるんだ……」


「愛する女性、ですか……」


 ヘンリーが学園の友人たちと、頻繁に王都で遊んでいることが耳にしていた。

 そして、王都のカフェで働く平民の娘に想いを寄せているらしいということも。

 学園を卒業して結婚すれば落ち着くかと思っていたが、どうやらヘンリーは学園卒業後の結婚式を負担に思い始めているようだった。

 アリスティアは、王妃教育に費やした十年以上の年月を思い出し、苦笑した。

 厳しい王妃教育に耐え続けた十年以上の努力が、こんな形で終わるのかと思うと、苦笑せずにはいられなかった。

 だけど、今になって婚約解消を言い出すヘンリーは、このままアリスティアと結婚したとしても、平民の娘の元に通うか、側室に迎え入れる可能性がある。

 最悪、面倒なことはアリスティアに押し付けて、平民の娘と楽しく過ごす日々を送るのかもしれない。


「かしこまりました。では、本日家に戻りましたら、わたくしから婚約解消の件を父に伝えておきますわ。ヘンリー殿下の幸せを、心よりお祈りしております」


 アリスティアが婚約解消を承諾したことで、ヘンリーはほっとしたようだった。

 第一王子で現王太子であるヘンリーがこれからどうなるかまでは、アリスティアは考えないことにした。




 帰宅後、アリスティアはすぐに父であるブランシュール公爵に、ヘンリーから婚約解消の話があったことと、ヘンリーが口にした婚約解消の理由を伝えた。

 ブランシュール公爵は呆れたが、すぐに王宮に赴き、王家との話し合いが行われ、ヘンリーの望む通り、ヘンリーとアリスティアの婚約は解消された。




「アリスティア、どうしてだろう……どうしてこんなことになったのだろう……」


 王立学園の卒業式、真っ青になったヘンリーは、アリスティアを捕まえると言った。


「俺は、これからどうすればいいんだろう……」


「そんなこと、わたくしに言われましても、これは国王陛下が決められたことですので……」


 アリスティアとの婚約を解消したヘンリーは、学園を卒業すると同時に、平民になる。

 その理由は、ヘンリーがアリスティアと婚約解消後、平民の娘と結婚したいと言い出したからだった。

 ヘンリーの母親は王宮で働くメイドで、元平民だった。

 若かりしディアンド王が一夜の過ちでできてしまったのが、ヘンリーだったのだ。

 ディアンド王はヘンリーの母親を側室に迎え、第一王子ということでヘンリーが王太子という立場だったが、アリスティアとの婚約を解消したことで、ブランシュール公爵家の後ろ盾を失った。

 そして王家は、「身分を捨てても平民の娘と添い遂げたい」というのがヘンリーの意思とし、彼から王家の身分を剥奪したのだ。

 王位はヘンリーよりも一つ年下の第二王子が継ぐことになっている。

 そして、アリスティアは一年後の第二王子の王立学園卒業を待って、彼と結婚することになっていた。


「アリスティア……俺は、これから、どうやって生きていけばっ……」


「申し訳ありません……わたくしにはどうすることもできませんわ……」


 頭を下げて、アリスティアはヘンリーの前から立ち去った。




「アリスティア様、卒業パーティーのエスコートに参りました」


 ヘンリーの前から立ち去ったアリスティアの前に現れたのは、第二王子のフィリップだった。

 フィリップは柔らかな笑みを浮かべ、アリスティアに手を差し伸べる。


「フィリップ殿下、ありがとうございます」


 アリスティアも笑顔を浮かべ、フィリップのエスコートを受け入れた。


「先程、兄上と一緒にいましたね」


「えぇ」


 正直に頷くと、フィリップは「申し訳ありません」とアリスティアに謝った。


「だけど、ヘンリー兄上のおかげで、僕はあなたを妻にできるので……実は、とても嬉しいのです」


 改めて王家とブランシュール公爵家の婚約が結ばれたとき、フィリップはアリスティアに、子供の頃からずっと好きだったと――アリスティアの努力をずっと見ていたのだと、打ち明けてくれた。

 アリスティアは驚いたが、とても嬉しくて――ヘンリーとの婚約が解消されたばかりだったが、素直にフィリップを受け入れることができたのだ。


 ヘンリーは王家から多少の財産は与えられるようだが、彼のこれからの人生には、平民として生きていくという苦難が付きまとうだろう。

 ヘンリーの母に援助を申し込んでも、側室で元平民である彼女には何もできないだろうから。

 だけど、婚約解消を言い出したのは、ヘンリーの方だ。

 アリスティアは彼の望みを受け入れただけ――だから、これから彼がどうなろうとも、これは彼が選んだ未来なのだ。


「一年後、今と同じ言葉をフィリップ殿下から言っていただけるように、わたくしも努力いたしますわ」


 アリスティアがそう言うと、フィリップは嬉しそうに笑った。


「僕も、アリスティア様にもっと好きになってもらえるように、努力します。だから一年間、待っていてくださいね」




 そして一年後、王立学園を卒業するフィリップを待って、アリスティアは彼と結婚した。

 風の噂で、ヘンリーが詐欺にあってわずかな財産を失い、カフェの娘とも別れたと聞いたが――アリスティアにとってはどうでもいいことだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そりゃまあ、平民上がりの生母を持つが故に婚約者の実家を後ろ盾にすることでようやく王太子に成れた妾腹の王子が婚約破棄して平民と結ばれたら、平民にされるわなぁ。
王太子の結婚式なら結婚祝いも力入れるはずなので2ケ月前はドタキャンって言っていいレベルですね。 少なくとも王都のドレスは発注済みで、流行考えたら未使用でも翌年使えるか怪しい。
多分、長子継承、能力的に第二王子と大差ない、血筋は劣っても公爵家となら補正可能、その辺りが理由で、側室の子でも王太子扱いを受けられたのだろう。 しかし、実は2代続けて平民を血を入れたがる無能で、後ろ盾…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ