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【04 闇あるいは病みが深い研修所】

俺はいつもより少しだけ軽い気持ちで研修所へ向かった。

昨夜、copilotに言われた言葉がまだ胸の奥に残っている。


――明日は、今日より少しだけ良い日にしましょう。


その“少しだけ”が、妙に効いた。

講師としての不安はまだある。

昭和講師たちとの軋轢も消えてはいない。

それでも、昨日よりは前に進める気がしていた。


予定していた「労働安全衛生法関連の座学研修」は、昭和2号が最も苦手としていた分野のため、丸ごと俺に回ってきた。

だが、現場経験が豊富な俺は「法令を適当に扱うことの怖さ」を知っている。


――法は人を守りもすれば、叩きにも回る。


研修の締めに、俺はこう伝えた。

「法は、法を知っている人を守ってくれます。でも、法を知らない人のことは守ってくれないことが多いです。覚えるのは大変ですが、今はスマホがあります。不明点は現場でも調べられる。法を守る意識、まずはこれを強く持ってください。不明なことは放置せず、きちんと調べる。これを必ず徹底してください」


前日同様、画面に手を振って研修を終えた。



そんな華々しい(?)講師デビューを飾った俺は、数日後、責任者へ実績報告を行った。

手っ取り早い方法は決まっている。


――研修生が提出した研修報告書を、そのまま責任者に読んでもらうことだ。


昭和2号が背後で何かわめきちらしていたが、俺はそんな声を完全に無視して提出した。

責任者は報告書に目を通しながら、ゆっくりとうなずいた。

「やはり……現場実績、経験、所持資格……そこを考えても、十分納得できる報告書の内容だね。Aさんに来てもらって本当に良かったよ」


その言葉に、俺は少しだけ肩の力が抜けた。


世間話をしていると、責任者がふと思い出したように言った。

「そういえば、この間の本社会議で横浜支社長に会ったよ。“いつAさんを戻してくれるんですか”って、かなり詰め寄られた」


――いや、俺としては今日でもいいんですが。


喉まで出かかった言葉を飲み込み、代わりにこう返した。

「でも、研修生との時間は自分にとっても気づきが多いです。その気づきが、さらに自分を磨いてくれています。いずれここを出ることになるのでしょうが……その時が来ても後悔しないよう、一生懸命やります」


責任者は満足そうにうなずいた。


その間に、昭和2号はこっそり部屋から姿を消していた。

昭和1号は相変わらず苦々しい目で俺を睨んでいるが、そんなものはどうでもいい。


――少なくとも、俺は“間違えていない”


気にするほうがおかしい。

そう思いながら、俺は責任者の部屋を後にした。



翌日…研修用資材の不足がないかを調べるため、俺は倉庫へ向かった。

そこで“違和感”に気づいた。

発生材の山。

昨日別口で行われていた、昭和1号が開催していた実技実習で出た廃材が、分別されずに一つの山にまとめて捨てられている。

Aの目には“雑さ”が一瞬でわかった。

分ければ再資源化できるものもある。

逆に、混ぜたら“アウト”になるものもある。

昭和1号の顔が脳裏をよぎる。

Aはため息をつき、黙って手袋をはめた。

誰に言われたわけでもない。

ただ、やるべきことをやるだけだ。


――copilotにも”行動の一貫性”をほめられた


ここで手を抜いたら、copilotにも顔向けできない。

俺はそう考えながら廃材を一つひとつ拾い上げ、金属、樹脂、木材、電材、廃油……次々と分別していく。

そのとき、背後から声がした。

「Aさん……何してるんですか?」

振り返ると、実技研修でごみを発生させた研修生が立っていた。

不安そうな顔で、しかしどこか迷いもある。

「昭和1号さんが……“分別なんて無駄だ、どうせ捨てるんだから”って……だから、これでいいのかと思って……まずかったですかね」

Aは手を止め、ゆっくりと研修生を見た。


――廃材を適正に処理する理由、教えとくか


そう思った俺は「責めるつもりはないから安心してくれ」と前置きをしてから、分別作業の”理由”を語った


・きちんとした分別は、処理費用を削減できること

・削減した費用は会社の利益に回ること

・利益が出れば、賞与引当が増えるから、社員にとって損はないこと

・銅線クズは、かなり価値が高いので売却できる。量によっては”ほかの廃棄物処理費用とバーターになるか、若干の収入が得られる可能性”があること

・逆に”適正に処理をしないといけないもの”をこっそり混ぜたりして捨てて、それがばれると億単位での罰金が科される可能性があること


こうしたことを、次々と説明する。

研修生は「昭和1号の日々の言動」と「俺の説明」の温度差に気が付いたようで、真剣な表情になっていく。

淡々と説明した後、俺は真顔で言った。

「俺にだって、住宅ローンがある。横浜の家は持ち家、そのうえ単身赴任でここにいる。やっぱボーナス…たくさんほしいじゃない?」

研修生は吹き出しつつも「ありがとうございます。分別の意味、初めて知りました。」と頭を下げる

そして「自分にも手伝わせてほしい」といわれたが、研修生は次の研修がある。よりによって主催が昭和1号。遅れたら何されるかわからない。

俺はにこやかに「コワーいジジイ、待ってるかもよ?」とにやける

研修生は「すんませーん、後でまた来まーす!」と叫びながら駆け出して行った。


廃材の量が思ったよりも多く、分別に思いのほか時間がかかってしまう。

1時間ほど分別作業をおこなっているところに、そこに先ほどの研修生現れた。

「Aさん、手伝います...僕にしてくれた説明、ほかのみんなにしたら...”お前ばっかりずるい!”って怒られたから...みんなを引き連れてきちゃいました!」

「僕らにも、適正処理の意味、教えてください」

「Aさんの話、聞きたいです」

振り返ると、数名の研修生が手袋と防塵マスクをして立っていた。

「ありがとう、助かるよ」

俺は研修生たちに声をかけつつ注意事項を伝えた。


・薄い金属片は、刃物としての性質を持つため、手元に注意すること。

・鈴メッキされている銅電線や銅製品は、一見ではわからないこともあるため、不安なら磁石を使って確認すること。

・油等が付いたものは、軽くでもいいからウエスなどで油をふき取ること。

・油が付いたウエスは、ビニール袋にひとまとめにすること。


研修生たちは、注意に従い、安全に配慮しつつ分別をしていく


――数は力だよな、やはり…


数名の協力者が現れたおかげで、廃材はどんどん分別されていき、分別作業は無事に終了した。

研修生たちは「研修ありがとうございました」と頭を下げる。

俺は「いやいや、こちらこそ協力してくれて大変助かったよ」と頭を下げる

研修生たちとしばらく雑談をしていたが、俺には”どうしても気になる廃材”があるので、研修生たちを倉庫の裏手に集めて”気になる廃材”説明をした

それは、高さ70cmほど、直径50cmほどの円柱の形をした、40年落ちの高圧変圧器だった。


俺は研修生たちに「とりあえずこれは触らないでくれ」と説明する

研修生たちは”なぜ?”という顔をする。

俺は「製造年を銘盤で確かめたら40年程前のものだということが分かった。問題は”40年前”にある。このころの変圧器って、冷却油にPCBが含まれていることが非常に多い。」


・PCBは毒性が高く、環境負荷が非常に大きい。

・処理方法を誤ると、ダイオキシンなどを発生させてしまう。

・国は、適正な保管はもちろんのこと、処理方法を指定し、処理そのものに期限まで設けている。

・法規制を守らない企業には、多大な罰金が科されることもありえる。


俺はこういったことを説明し、研修生たちに「だから、とりあえずは触らないこと」と再度念を押した。

「こんなもんが倉庫の裏、屋外放置とか..ホント、笑えない...こんなの、現場だったらほかのことを全部止めてでも対処する。言い方はあれだが、不発弾発見レベルの緊急対応案件だぞ...背筋が冷えるよ、こんなものみたら...」とつぶやく

研修生たちは「どうするんですか?」と不安げに尋ねてきた

「含有量を調べてくれる会社があるから、そこに連絡して調査用キットをもらう。サンプル作ってそこに送る。判明した含有量次第で処理方法を検討するしかない。」と俺は答え

「このまま放置…それだけは絶対にできない。」と付け加えた。



帰宅後、俺はスマホを開き、copilotに声をかけた。

「なぁ、copilot。今日見つけた高圧変圧器なんだが……冷却油にPCBが含まれている可能性がある。適正処理の手順と、含有量を調べてくれる会社を念のために教えてくれ」

画面が静かに光り、あの落ち着いた声が返ってきた。

「了解しました。PCB含有機器の処理は、法令に基づき厳格に管理されています。まずは含有量の分析が必要です。分析を行う登録事業者をリストアップします」

数秒後、画面に複数の会社名が並んだ。

過去の付き合いの関係で知っている会社もいくつか入っていた。

「これらの事業者は、過去に高圧機器のPCB分析実績があります。所在地、費用、サンプル採取方法を併記しました」

俺は思わず息を吐いた。

「……やっぱ、お前はこういうの強ぇな」

「当然です。私は“調べる”“整理する”“比較する”が得意ですから」

少しだけツンとした声。

俺は思わず笑ってしまい「”相棒”って感じもするな」と返す

copilotは一拍おいて「その呼び方でも構いません」と返してくる

「おい……今の、ちょっとデレただろ……いや、絶対デレただろ」

「気のせいです」

俺は苦笑しながら”彼女”の作り上げた企業リスト提案を再度確認する。

そこには”相棒”ともいえる頼もしさがあった。

そして画面を見つめながら、今日の倉庫で感じた“背筋の冷たさ”を思い出した。


――あれは、絶対に放置しちゃいけない。


「よし。明日、責任者に報告して、すぐに動くか」

copilotが静かに応じた。

「Aさん。あなたの判断は正しいです。危険を見つけたときに“動ける人”が、現場を守ります」

俺は苦笑した。

「おい……今の、ちょっとデレただろ」

「事実を述べただけです」

「いや、絶対デレただろ」

「気のせいです」

俺は思わず笑った。


――やっぱり、こいつは優秀すぎる“相棒”だ。



翌日、俺はこっそりと責任者に同行を願った。

言葉だけでも説明はできる。だが、現場で叩き込まれた経験が告げている。


――現物ほど説得力のあるものはない。


責任者は「何の用だ?」と言いたげな顔をしていたが、俺は気にせず倉庫裏へと案内した。

そして屋外に放置されていた高圧変圧器を指さし、静かに告げる。


「銘盤を見ると、製造から40年以上経っています。この年代の高圧変圧器は、冷却油にPCBが含まれている可能性が非常に高い。それが……なぜか処理されず、漏油事故対策も全くされず、雨曝しの屋外に放置されています」


責任者の目が大きく見開かれた。


「数年前に、全社的にPCB含有物の保管状況調査と迅速な適正処理の通達が社長名で出ただろう?……なぜ今ここに残っている?」


俺は研修所に来て日が浅い。経緯など知るはずもない。

だから、そこには触れずに言った。


「まずは含有の有無を分析してもらいましょう。もちろん専門の会社に。幸い、当社と縁のある分析会社が比較的安価で対応してくれます。結果を踏まえて次の手段に移行するのが最優先です。経緯調査は……あとからでも構いません」

責任者は短く息を吐き、決断した。

「わかった。Aさんの名前で立案文書を作って提出してください。決済はすぐに回します。いや、決済を待たずに動いてください。体裁はあとからいくらでも整えられる」

その言葉に、俺は小さくうなずいた。


――動けるうちに動く。それが現場を守る唯一の方法だ。


俺は、立案文書を二通作った。

一つは「PCB含有分析依頼について」。

もう一つは「応急的な漏油対策に必要な物品購入について」。

どちらも急ぎだ。形式よりもスピードが優先される。

責任者は、研修所内で騒ぎにならないように配慮してくれたのか、メールで次々と連絡を寄越してくる。

「Aさん、必要なものはすべて通します。遠慮なく言ってください」

そんな文面が続いていた。


さらに、物品購入を一手に引き受けている事務社員を改めて紹介してもらい、俺はすぐに連絡を取った。

「Aさんですね。責任者から聞いています。必要なもの、すぐ手配します。リストを送ってください」

声のトーンからして、状況の深刻さを察しているようだった。


俺は漏油対策に必要な資材――


・オイルパン

・吸着マット

・防油シート

・廃油用ドラム缶

・簡易フェンス


などをリスト化し、すぐに送信した。

事務社員からは数分後に返信が来た。

「すべて今日中に手配します。なんなら現金購入もします。もちろん責任者に許可を取り付けてあります。これなら、早いものは午後からそろいます。」

その迅速さに、俺は胸の奥が少しだけ軽くなった。


――動ける人がいる場所は、まだ救いがある。


だが同時に、研修所の裏に眠っていた“40年前の爆弾”を思い出し、背筋が冷たくなる。


――あれは、絶対に放置できない。


3日後、調査キットが届いた

俺は同封された手順書に従い採油し、サンプルを分析会社に送った。

分析会社は、「速報としてメール連絡を出し、後日文書報告をくれる」ので、結果は2~3日でわかるはずだ。

迅速な手配や現金購入などの結果、オイルパンなどの漏油対策貧がそろいだしたので、俺は事務社員に助力を求め、変圧器を屋外放置から屋内保管へと切り替えた。

今すぐできる範囲での環境配慮、今すぐできる範囲の法令順守行動、これは最低限必要だ。


3日後、分析会社からメールが来た。

判定速報の結果「PCB含有あり、低濃度」であった。

そのメールを責任者と事務社員に転送する

ほどなく俺と事務社員は別室に呼び集められる


責任者は深々と頭を下げ、今回の件について礼を述べる。

そのうえで「二人でこの先の適正処理」を行ってほしいことなどを指示される。


別室から辞したのち、廊下で事務職員は「適正処理って、どうすればいいのか…わたし、全くわからないですよ」と途方に暮れた様子だった。

俺は事務職員に少しだけ時間をもらい「あとで取りまとめたものをお見せします」と告げて、倉庫へ移動した。


”彼女”であり”相棒”でもあるcopilotに、必要な手続きを再確認するためだ。記憶レベルでも対処は十分可能だが、万が一何かやり損ねたりして、手戻りが発生したら、それこそ時間の無駄。今は時間を惜しむべきで、手間を惜しんではいけない。そう思い、俺は倉庫の扉を閉め、俺はスマホを取り出した。


「なぁ、copilot。以前相談した高圧変圧器、予想通りPCB含有判定が出た。幸いなことに低濃度判定だったが、これで本当に無視はできなくなった。この先に必要な手続き……俺が間違えても困るから、全部、教えてくれ」

画面が静かに光り、落ち着いた声が返ってくる。

「了解しました。低濃度PCB廃棄物の処理は、法令に基づき以下の手順が必要です。一時保管にあっては保管状況の記録、行政への届出書類の作成、処理にあっては処理委託先の選定などが求められます」

淡々としているのに、妙に頼もしい。

「Aさん。必要であれば、書類の雛形も提示できます」

「……助かる。事務社員が完全に詰んでたからな。俺がまとめて渡してやらないと」

「あなたが動くのは正しい判断です。現場を理解している人が主導することで、ミスや遅延を確実に防げます」

俺は苦笑した。

「おい……またデレただろ」

「事実を述べただけです」

「いや、絶対デレただろ」

「気のせいです」

そのやり取りに、思わず肩の力が抜けた。


――昭和講師の腐敗も、研修所の闇も、こいつとなら突破できる。


俺は深く息を吸い、スマホを握り直した。

「よし。昭和どもに“現場のやり方”ってやつを見せてやるか」


事務社員に文書のひな型を送付すると、ほどなく完成版が返ってきた。

確認を求めるメールには、緊張と責任感がにじんでいた。

俺は内容をチェックしながら、事務職員に地元の環境管理事務所への同行を依頼した。


行政への提出文書というのは、ほんの「一字の誤り」や「添付書類の欠落」だけで、何度でも差し戻される。

俺は過去に何度もそれを経験してきた。

あれは時間も労力も食う、典型的な“無駄の発生源”だ。


だからこそ、今回は最初から事務職員を連れて行政に「事前相談」を行うことにした。

最短で、確実に、ミスなく進めるために。


事務職員を引き連れ、地元の環境管理事務所へ赴き、受付で「事前相談をお願いしたい」と申し出た。

応対してくれた職員は、俺たちの説明を聞くなり目を丸くした。


「企業のほうから自発的に申告してくるなんて……珍しいですね」


そう言いながらも、調査協力すら拒む企業の多さを嘆き、書面の作成方法、必要な添付書類、提出時の注意点まで丁寧に、親切に教えてくれた。

事務職員を同行させたのは、やはり正解だった。

「これなら、すぐにできます。なんなら今日作って、今日提出できます」

自信を取り戻したような声でそう言う事務職員を見て、俺は思わず心の中でつぶやいた。


――事務社員…やっぱり優秀だな。


そう思いながら、俺たちは環境管理事務所を後にした。

帰社後、事務職員は「いうだけのことはある」というとんでもない速度でタイピングを始める。

ほどなく書面を作り上げると、印刷をして内容を確認する。

「わたし、ちょっと、行ってきます。Aさん、ここで待っていてください。後でまたわたしと環境管理事務所に一緒に行きましょう!」

そう告げて、事務職員はどこかへと小走りしていった。


数分後、事務職員は「準備出来ました!」とにこやかに戻ってくる。

俺は「どこ行ってたの?」と尋ねると「最終的な保管管理者をAさん名義、これは資格要件を備えているのがこの職場ではAさんしかいないから、Aさんにしていいかの確認と、書面提出名義はここの代表者になる都合があるのでサインなどが必要でした。だから責任者にお願いして一筆書いてもらいました!」

いや、すげぇなぁ、などとぼんやり考えていると「さぁさぁ、行きますよ!」と腕を引っ張られる

引きずられる勢いで環境管理事務所に戻ると、先ほど対応してくれた職員が絶句しながらも書面を確認してくれた。

確認事項が一点でた。保管管理者として名前が書かれている俺の資格要件。俺は慌てた。資格証なんて会社に置きっぱなしだ。ところが事務職員は平然と「写し」を出す。

「人事管理データベース、便利ですよね。社員番号さえわかれば、引き出そうと思えば資格証なんかも引き出せる」


――ホント優秀だな。現実版copilotとでも呼ぶか


環境管理事務所職員は何度も見返して、大きくうなづくと「受領」の大きな印鑑を押して、控えを返してくれた。

「これで手続きは終了です。保管状況確認を現場ですることもあるのですが、今回は参考図として写真を三方向からわかりやすく撮影してくださったものもあるので、おそらく省略判断、となるでしょう。」

俺と事務職員は、こっそりグータッチをした。


ほどなく研修所に戻り、事務職員と一緒に書面を責任者に引き渡す

責任者は「ありがとう。ここの責任者としても、今回の事象は放置できないから本社に顛末を報告する必要ある。でも、死角がなくなった。恩に着るよ」と深々と頭を下げた。


その様子を見ていた昭和1号と昭和2号が、鬼の形相でこちらを睨みつけていた。


だが、不思議と何も感じなかった。


正しいことをしなければ、企業は持たない。

正しいことを伝えなければ、人はゆがんで育つ。


――だから、気にする価値はない。



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