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14/25

14話

 流石に紅音がその場で返答をできる提案ではなかったので、水鳥と一緒に、その次に話を通す予定だったらしいマネージャーの七緒をオンライン会議に招いた。


 今日も今日とて残業をしていたらしい七緒は、オフィスにある会議室らしき場所から参加。水鳥と紅音はテーブルに置いたノートパソコンから一つのアカウントで一緒に入室する。


 そして、紅音はあまりにも突拍子もない水鳥の提案を、大量の冷や汗を浮かべながら、しどろもどろに七緒へ説明した。


 説明役に紅音が買って出たのは、その方が公平な判断を促せそうだったから。


 当初、真っ青な顔で紅音と同じくらい冷や汗を浮かべていた七緒だったが、話が続くにつれて少しずつ落ち着いていき、果てには渋い顔を浮かべつつも頭ごなしに否定はしない。


「――なるほど……禊配信……ですか」


 七緒は腕組みして唸った後、先ずは肯定から入った。


「……まず……そうですね、胡桃沢さんの為に動きたがっている貴女の気持ちは汲みます」


 すると、水鳥は性急な結論を求める。


「つまり、三人で禊配信をしてもいいってことですか?」

「それとこれとは話が別です。――いえ、頭ごなしには否定しませんが、少なくとも私の匙加減で決定できることではないので、大前提として持ち帰って検討する必要があります。そして、その為にもまずは、どういう配信を想定しているのかをヒアリングさせてください」


 ――意外だ、と紅音はひっそり驚いた。


 七緒は水鳥の話にしっかり耳を傾ける人間だろうと思っている反面、今回の水鳥の提案は相当リスキーであるとも思っている。それなのに、話を聞こうとする七緒からはある程度の興味のような色が窺えた。単に七緒がそういう人柄というだけかもしれないが、或いは、事務所の方でも今の炎上騒動には困っているのかもしれない、などと紅音は推察した。


 七緒の要求に応じ、水鳥は淡々と自分の計画を語る。


「今回の炎上の根本は、私の過激ファンと胡桃沢さんの根強いアンチだと思うんです」

「それは――――ええ、まあ。事務所の方でも概ね同じ見解です」

「立ち昇った炎に水をかけても際限が無いので、水をかけるべきは火元です。根深いアンチに何を言っても焼け石に水だとは思いますが、私のファンなら話は通じる部分があるかもしれません。つまり……私のファンに対して『私は許しているよ』という姿勢を示す為に、胡桃沢さんと私で仲良しコラボ配信をしようという企画です」


 紅音が聞く限りは、随分と甘い計画のようにも思えるが、七緒は真剣に聞きながらノートパソコンにメモを取り始める。


「なるほど、動機と目的は承知いたしました。それで、穂積様に同席いただく理由は?」

「恐らくですけど……私が胡桃沢さんのアンチなら、胡桃沢クルミと甘党あずきがコラボ配信をすると聞いたら、事務所の指示を疑います。事態を鎮静化させるために、事務所が被害者と加害者をコラボさせている、と。何故なら胡桃沢クルミは事務所で一番数字を持っているから。事実関係はともかく、そう言える根拠はある。その構図になるのは、最悪と考えました」


 七緒は驚いたように何度か頷き、感心して「素晴らしい判断です」と賛辞を贈る。紅音も、その機転に関しては舌を巻くしかなかった。


「そして、それを避けるためには部外者が好ましいと思いました。事務所とは全く関係のない第三者に、私が仲介役を依頼する。そして仲介役が胡桃沢さんに声を掛ける。この構図を表に押し出すことで、少なくとも事務所にまで火の手が伸びる可能性は低いかと」

「――それ故に、甘党、胡桃沢、みづほのコラボ配信、と」

「勿論、後で胡桃沢さんの意思も確かめます」


 七緒は顎に手を添えて唸り、真剣な眼差しでパソコンにとったメモを睨む。


 紅音は一連の作戦を聞き、個人的には水鳥の味方だという前提の上で、この提案には否定的だった。無論、やらないよりは問題が改善する可能性が高いそれは否定できない。


 しかしながら、代価もある。


 そして、その代価に関する水鳥の見込みは少し甘いようにも思う。


 さて、そんな紅音の危惧だが、わざわざ語るまでもなく七緒が言ってくれる。


「話は分かりました。その上で、まずは私の結論をお伝えします」


 唇を引き結んで真剣な表情をする水鳥。そこに、七緒はハッキリと言い切った。


「効果は否定しません。しかし、リスキーです。ハイリスク・ローリターン。申し訳ございませんが、事務所としてその提案を呑むのは難しいです」


 当然、水鳥も殊勝に引き下がるくらいならこの提案をしていない。


「でも……静観していたら炎上が広がる一方だと思います」

「いえ、炎上は現時点で微々たる勢いながら収束の方向に向かっています。トレンドの投稿数、関連チャンネルへのコメント数から定量的に判断しています」


 『思う』と『そうである』はどちらが主張として強いかと問われれば、当然、後者だ。


 七緒の理路整然とした言い分に水鳥は一瞬、安堵を見せる。――彼女自身、別に自分の意見を通すのが目的という訳ではないのだろう。だが、最近のトレンドに上がってくる誹謗中傷の数々でも思い出したか、ふと口を噤んだかと思うと、食い下がる。


「鎮火まではどれくらいかかる見込みですか?」

「『活発に議論が為される状況』を炎上と定義する場合、最低でも更に一月の見込みです」

「その間、胡桃沢さんへの誹謗中傷を容認するということですか?」

「誹謗中傷は容認しません。しかし、表で行動をするのあれば批判はあって然るべきです」

「誹謗中傷未満の批判は、傷付くだけで実利を出しません。言った側が気持ち良くなるだけ」


 今度は七緒が口を噤んで返答を模索する番だった。――或いは目から鱗の指摘だったのかもしれない。確かに、紅音もその視点が抜けていた。


 度が過ぎるものには対応をする。しかし批判であれば受け入れるスタンスを取るべき。


 だが、その主張は暴力的な批判に傷付かないことを前提としている。自業自得とはいえ、胡桃沢の心情を汲み取ると、早期解決の為にリスクを負いたい水鳥の気持ちにも一理がある。


 さて、七緒はどう判断をするのかと紅音が静観していると、


「仰る通りです。胡桃沢さんへのメンタルケアには今以上に細心の注意を払います」


 どうやら水鳥の提案を受け入れる、という結論には至らなかったらしい。


「……せめて私のファンだけでも、どうにか落ち着かせられないか、と、思ってます」


 水鳥が更に食い下がると、七緒は優しく目を細めて水鳥を見詰め返す。


「単刀直入に申し上げますが、今回の騒動は胡桃沢クルミの自業自得です。無論、事務所としては彼女を最大限に守るつもりですが、彼女が犯した過ちの責任と批判は彼女について回る。これは、事務所や周囲の人間が庇えることではないのです。――若菜さん」

「――庇えなくても、誰かが隣に居て救われる気持ちはあると思うんです」


 それは、相変わらずの無表情から繰り出される、変わらない平坦な声だった。


 しかし、そこには明確に若菜水鳥の強い感情が宿っていると、七緒と紅音は瞬時に理解できてしまった。何故なら、彼女の過去を知っているから。彼女が救われてきた人間だから。だからこそ、七緒は即座に言い返そうとした言葉を、呑み込んだ。


「対岸に居たくありません。あそこまで、言われないといけない人じゃない」

「……氾濫する川を泳いで渡るのは、二次災害の観点から推奨できません」

「それなら、事務所のボートを貸してください。……お願いします」


 ゴツン、と、水鳥の下げた頭が目測を誤ってテーブルにぶつかる。


 揺れる画面の中、七緒は悩ましそうに眉間に指を置いて、寝不足の頭に鞭を打って思考を巡らせている。水鳥の要求は全て感情を基に構築されているため、七緒なら幾らでも反論の余地があるはずだが、それでも言葉を呑み込むのは、気持ちを理解できるからなのかもしれない。


「……穂積様は、どう思われますか?」


 不意に七緒の目がこちらを向いたので、紅音は内心で驚きつつも格好つけて平静を装っておく。「そうですね……」と相槌を打ちながら、別の方向に進んでいた思考を巻き戻した。


 「紅音」と、水鳥が何かを期待するような眼差しを向けてくる。


 だが、生憎と、紅音はどちらかと言えば水鳥に反対の立場だ。彼女の気持ちを汲みたい一方で、彼女が加害者の為に火の粉を被ろうとすることを許容、肯定はできない。


「正直に申し上げますと、私も氷室さんと同じ意見です。リターンは胡桃沢クルミさんへの批判の声の緩和。リスクは水鳥と事務所への飛び火、それから胡桃沢さんの炎上の悪化。効果は否定しないけど、否定できない程度の効果の為に被る火の粉としては少し、多過ぎる」


 ――人差し指が、紅音の人差し指を掴んだ。水鳥が顔を俯かせて沈黙する。


 中指を握らない辺り、彼女は傲慢になり切れないのだろう。薬指を握らない辺り、あざとく世を渡ることもできないのだろう。ただ悲しいから、それを素直に伝えるしかない。


 不器用だなぁ、と、思う。若菜水鳥は不器用で――それから、優しい。


 最初、紅音は水鳥を一方的に庇護の対象として認識していた。感情表現が苦手な水鳥と向き合い、その気持ちを汲み取る努力をして、過去に苦しむ彼女を少しでも助けられたらと思っていた。だからこそ胡桃沢の言動には怒りを覚えるし、彼女を守りたいとは思えない。


 だが、今日。何度か水鳥と話していく内に改まっていく認識があった。


 それは、若菜水鳥は誰かに手を差し伸べようとする人間だということ。


 そして、自分に不利益を与えたか否かは、対象の条件とは無関係であること。


 そこが、紅音との大きな違いだ。紅音はルームメイトだから水鳥の支えになりたくて、そこが発端だった。けれども彼女は、燃え盛る業火の門を抜け、火を点けた張本人を助けようとする意志を持っている。その意志に惹かれた。格好いいと憧れた。だから、


「ただ、私は水鳥の味方です」


 淡々と、そう付け加えた。


 七緒は瞑目してその言葉を噛み締め、水鳥は口を半開きで紅音の横顔を眺める。


 水鳥が「紅音」と名前を呼びながら、繋ぐ指を別のものに変えようとする。その動きが幼く覚束なかったので、代わりに、紅音は薬指と小指を抱き締めた。すると、水鳥も繋ぎ返してくる。「現金な奴め」と紅音が意地悪な笑みを見せると、繋ぐ指に中指も加わった。


 そんなやり取りに水を差すように、七緒はポツリと疑問を滴らせた。


「――よろしいんですね? 穂積様」


 紅音はその先の言葉を薄っすらと察しながら、水鳥は何も気付かず、二対の視線を送る。


「現時点で穂積様は全く炎上とは無関係です。しかし、今回の件で、たとえ被害者の依頼を受けた仲介役であろうとも、介入した瞬間……貴女にも炎上のリスクが付き纏う」


 紅音と指を繋ぐ水鳥の手が、するりと垂れ落ちた。紅音の視線の先で、「あ」と水鳥が呟く。


 紅音は重々承知の上のつもりだったが、案の定、水鳥はそのリスクを認識できていなかったらしい。既に燃えている胡桃沢と、自分と、その二人と契約する事務所。この三か所については炎上の当事者であるため、降りかかる火の粉もやむを得まいと考えていたかもしれない。しかし、水鳥の提案する作戦を呑み込んで、動き出したら、その時点で紅音にも火の粉が及ぶ。


 七緒の最大の危惧はそこだったのかもしれない。


 そして、彼女の読み通りに水鳥はその問題を理解していなかった。


 紅音の返答はもう決まっているのだが、さておき水鳥はどう答えるのか。そう思いながら彼女を見詰めていると、先程までの抵抗が嘘のように、水鳥はこう頭を下げた。


「……ごめん、紅音。私、そこまで考えが及んでなかった。馬鹿だった」


 身体を向けて頭を下げる水鳥。紅音は飄々と笑って肩を竦めた。


「今更何を言ってんのさ! 私のことなんて気にしなくていいんだって」

「ううん、駄目。それは……紅音は、駄目。だって君は、二億円を稼ぐんでしょ?」


 ――私は趣味でお金を稼ぐために配信をしてるの!


 覚えていたのか、と、紅音は呆けた顔で水鳥を見詰める。


 ルームシェアが始まって間もなく水鳥へと伝えた言葉を、紅音は思い出す。あれは嘘でも冗談でもない。本心だ。紅音は本心で、二億円を稼いで残りの人生を遊んで暮らしたい。ただ、それだけの願望であり、大層な夢ではない。水鳥が決断を鈍らせるようなものだとは思っていなかったが、しかし、彼女は紅音以上に、紅音の夢を大事にしているらしい。


 水鳥は改めてパソコンの方を見ると、再び頭を下げた。


「ごめんなさい、氷室さん。折角時間を取ってもらったのに、この話は無かったことに――」


 そう言って水鳥が頭を僅かに下げたのと殆ど同時に、紅音は微笑んで手首を握る。


 驚きに身体を強張らせる水鳥。画面の向こうで不思議そうな七緒。紅音だけ、笑う。


「――さっきの言葉を忘れた? この話をする前に約束した」


 遠い目で記憶を辿った水鳥は、見付けると同時に口を噤む。


 そして、下げようとしていた頭を少しだけ起こして、絞り出すように言った。


「……『水鳥(わたし)の意思を尊重する』」


 頷く紅音。吐息をこぼす七緒。揺れる水鳥の目を見詰めて、紅音は言葉を続けた。


「水鳥は――優しい。だけど私はそこまで優しくなれないから、当事者でもないのに胡桃沢さんを許せないし、多分、君を大事に想っている氷室さんも、似たような気持ちを抱いていると思う。君が怒りを面に出さない分だけ、私達は怒ってるの」


 七緒は神妙な顔で徐に頷く。


「だから、私達は――私は。君が、胡桃沢さんの為にリスクを背負うことに共感ができない。だけど、自分には無いものを理解できないの一言で切り捨てたくもない。君のその優しさは、美徳とも言い切れない自己軽視の表れにも見えるけど、でも、」


 紅音はそこで一拍を置いて言葉を選ぶ。自分にとって都合の良い言葉が湯水のように湧き出てくるが、そうして汲み上がった都合の良い語彙には脇目も振らず、出来上がった池の中を進んで誠実な一言を探す。水鳥を意のままに操るためのものでも、これを聞いている七緒に納得させるためのものでもなく、自分の心にある感情の原石を、自らの手で磨くことにした。


「――そういう君を尊敬してる。だから、私も一緒に燃えるよ」


 親指は肯定的な感情。人差し指は悲壮。中指は憤慨。薬指は情。小指は、約束。


 自分でも感情が分からないときは、指ではなく手を繋いでと伝えた。


 だが、それとは全く無関係に、感情のやり取りではなく、気持ちの接続を確かめ合う儀式のように、紅音は繋いでいた指を離して、その手を上から握った。


 水鳥はしばらく押し黙って紅音の顔を見詰めた。一度、何かを言おうとして口を開けた後、珍しく徐に口を閉ざして言葉を選び直し、それを二回繰り返した後、頷いた。


「途方もなく炎上したら、一緒に引退しよう?」


 紅音が満面の笑みを咲かせると、水鳥はテーブルの下で繋ぐ手にもう片方の手を添える。そして、紅音もそれを七緒に隠す素振りも見せず、もう片方の手を添え合った。


「ふふっ! そうだねぇ、そしたら近くのケーキ屋さんでバイトをしよっか!」

「うん。あ、その時は、氷室さんの退職祝いのケーキも作ります」

「だそうです。それとも、今の内にご用意いたしましょうか?」

「余計なお世話ですよ、余計な。辞める気は毛頭ありません。辞めさせる気もね」


 二人の決意と軽口を聞いた七緒は、参ったと言いたげに頬杖を突きながら苦笑した。砕けた調子を見せてくれているのは、彼女がこちらに気を許してくれたからなのだろうか。


 さて、しかしながら、まだ事務所側の――七緒の最終的な意見を聞いていない。


 紅音と水鳥は意思をハッキリと固めて、後は審判を待つだけだった。そんな二人の覚悟を決めた顔を「それでも――」と七緒は否定しようとするも、そこで言葉を詰まらせてしまったが最後、二度と否定の言葉は出てこない。自分が大事にする、妹のようなタレントと、その少女が全幅の信頼を置くルームメイト。そして、本件の被害者と、被害者を支える人間。二人の口から、御社の稼ぎ頭の為に行動したいと言われ、容赦なく切り捨てるのは――難しかった。


「私も、人の子みたいですね」


 紅音と水鳥が顔を見合わせるも束の間、七緒はやれやれと苦笑しながら約束した。


「私の見解は変わりません。でも、覚悟は受け取りました。上長に相談を持ち掛けます」

「氷室さん――」「ありがとうございます!」


 両名の深いお辞儀を真っ直ぐに受け止めた七緒は、眩しそうに目を細めて「いえ」と一言。その一言で感謝への相槌を全て済ませて、それからすぐ、話を変えた。


「最初はね、心配だったんですよ。若菜さんのルームシェアが」


 顔を上げる二人。紅音は呆けた顔で話の目的を探り、水鳥は黙って耳を傾ける。


 七緒は巣立つ子供を見守るような寂寥感と、妹が無事に帰ってきたような安心感を表情に綯い交ぜにして、その気持ちを糸の如く言葉に紡ぎ上げた。


「貴女が施設で同年代の子と上手くいっていなかったことは、聞いていましたから。もしも貴女が少しでも辛そうにしていたら、どうにかして私が賃貸をもう一個契約しようとか、そんなことを考えていました。でも、杞憂でした」


 七緒の優しい目が画面越しに水鳥を捉えた。


「本当は、今回の提案を断るつもりでした。炎上のリスクが否定しきれないので。でも、今の若菜さんならきっと炎上しても大丈夫だろうな、と穂積さんを見て、そう思えました。後は、会社と胡桃沢さんがそのリスクを呑むか、それ次第という具合ですね」


 自分の回答に呆れつつも、どこか胸を張るように七緒は紅音を見て、こう言った。


「私個人は、提案を呑みます。代わりに、貴女を――穂積さんを信じさせてください。もしも貴女が仲裁役の第三者を担うなら、貴女が火消しの要となるはずですから」


 水鳥は、七緒の言葉に自分の気持ちも乗せるように、手を強く握り締める。


 実直な賛辞と、手先から伝わってくる握力。送られてくる二人の感情は、二つとも一つの言葉で束ねられる。それは、『信頼』。重いなぁ、と苦笑する反面、今朝に水鳥が身体を預けてくれた時のような、心地よい重さに気が引き締まり、活力が漲る。


 紅音は強張る身体を自覚し、一度深呼吸をする。そして身体を弛緩させ、微笑した。


(まっか)せてくださいよ。期待には応えてみせますから!」



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